秋吉敏子さんが1961年、アメリカ留学から5年ぶりに初帰国した際、朝日ソノラマのソノシートの為に録音した「秋吉敏子リサイタル」。ジャズ評論家の岩浪洋三さん(1933-2012)のご尽力でCD化したが、この度めでたく完売、で再プレスの準備中。ライナーは、その岩浪さんが書いたものだが、改めて読むとなかなか面白い。彼女のテーマ曲と言える「ロング・イエロー・ロード」を彼が初めて聴いた時、童謡「七つの子(カラス〜なぜなくの〜)」に似ていると思い、なにかに書いたら、それを読んだ秋吉さん「自分はそんな風には思わないけど。あなたでしょう、そんな説をとなえているのは。」と笑われたらしい。負け惜しみで「日本的な旋律を感じさせることだけはたしかだ。」と結んでいる。自分の耳でもこの2曲の類似点は見出せない(ロング・イエロー=短調、七つの子=長調)が、「ロング・イエロー=七つの子」岩浪説が61年当時の日本ジャズ界に流布したとしたら可笑しい。岩浪さんは松山の出身、高校生の時、ラジオで聴いた秋吉さんの演奏に衝撃を受け上京、秋吉さんの「追っかけ」になる。秋吉さんも彼を弟のように可愛がり、進駐軍クラブまわりでは、他のミュージシャンと一緒に関係者としてトラックに乗せ、米軍専用クラブなどでも入れて演奏を聴かせたそう。渡米した秋吉さんが帰国する度に必ず会食し、彼が亡くなる直前は体調悪そうで、歩くのもやっとだったが、二人とも本当に楽しそうだった。このライナー、87年12月に書かれたものだが、秋吉愛全開、情報満載、全力応援で、文字数多いが一気に読ませる。間違いなくこのCDのセールス・ポイントの一つ。多くの人に聴いて、そして読んでいただきたいです。