熱い人が苦手だった。

意味も目的も無く熱い人が。

関わりたくなくて距離を取った。

すると心も体も冷え切ってしまった。

こんな自分にも近づいてくれる人がいたが、

その度に冷たく遇らった。

それが心地よかった。

そしていつからかこう呼ばれるようになった。

フロストバイト。




そのうち自分と似たような奴と出会った。

すごく気が楽になった。

何を言っても、何を言われても傷付かない。

失っても何とも思わない。

この凍傷が俺のプライドだ。

そんな日が長く続いた。

 

ある日、一人の少女と出会った。

彼女は近づいてきて俺の手を握ろうとした。

俺は逃げた。

俺の芯まで冷えたこの手で彼女に触れるわけにはいかない。

何より彼女の近くにいると、

その眩しさで俺の体は溶け出しそうだった。

やっと手に入れたこの体と心。

ここで失うわけにはいかない。

はずだった。



彼女はこちらをずっと見て笑っている。

俺のこの凍傷だらけの体を見てもなんとも思わないのか。

俺は彼女と話をしてみたくなった。

しかし近くに行くと俺の体は溶けてしまう。

だから今まで本当に話したい人とは何も話さないで過ごしてきた。

それが俺の生き方だった。



何も疑わないかのような純粋な眼差し。

俺が本当はそうなりたかった。

そうありたかった。

自分でこの世界との間に境界線をひいた。

自分から大切な繋がりを断ち切ってきた。

もう取り戻せないと必死に言い聞かせていても、

今日もまた一縷の希望に胸を焦がしてしまう。

この体を自分で滅ぼすかのように。

このまま歩き続けてどこに辿り付くのだろうか。

誰も知らない足跡を吹雪が消していく。




凍傷

frostbite 何一つない場所に生まれ
frostbite 自分と世界とに輪郭をひいた
frostbite 閉じた感覚はもはや無防備で
frostbite 境界線はより濃くなった

もう二度とやらないと決めたのに
大切なものをまた壊したくなる

終わりにしよう 悲哀の衝動
全ては今更どうしようもないよ
癒えない凍傷 消えない後遺症
隠して今日も毒吐く

frostbite 触れるもの全て傷つけてる
frostbite 言葉はみな冷気に乗って
frostbite 自己の解像度を上げてみても
frostbite 当たり前だよな大は小を兼ねない

怖いもの見たさに浸食された
幼稚な左脳に麻酔をくれよ



不愉快なお前らとは話が弾むよ
無責任が心地いいんだ
何もかも忘れて誰かを演じて
何をされても傷付かない、だけど

本当に話したい人とは何も話せてない
この体溶けてしまいそうで
純粋でいられるのも結局選ばれた人だけなんだ
今のお前は眩しすぎて側にはいられない

大切な繋がりはそうやって自ら断ち切ってきた
それでいい それがいい
その方がいいはずなんだけど


あなたの太陽 触れてみたいよ
手遅れじゃないと言っておくれよ
フロストバイト 愛してみたいよ
斯くして今日も独白