「犬のQOL(生活の質)を高める」とはどのようなことでしょうか?

 

QOL (quality of life クオリティ・オブ・ライフ)とは、人でいえば人生の内容の質や社会的にみた生活の質のことを指します。人がどれだけ人間らしい生活を送り、人生に幸福を見出しているかという尺度の概念です。

 

では人でなく犬のQOLとは?

 

「犬がどれだけ犬として犬らしい生活を送り、生きることに幸福を見出しているか」ということになります。

 

その尺度となるのが、動物の福祉(アニマル・ウェルフェア)の理念としての「5つの自由(The Five Freedoms for Animal)」といわれるもの。

 

1、飢えと渇きからの自由

2、不快からの自由

3、苦痛、障害、病気からの自由

4、恐怖、抑圧からの自由

5、正常な行動を表現する自由

 

この5項目が、人間の飼育下におかれた全ての動物に対する福祉の基本として国際的に認められたもので、日本でも2012年から動物愛護法の基本原則に組み込まれました。

 

犬のQOLも、この「5つの自由」の5項目がどれだけ満たされているのかが、大前提となります。

 

1、飢えと渇きからの自由

ブリーダーやペットショップでは販売前の小型犬を大きくしないために、フードは最小限しか与えないということは聞きますが、一般の家庭では健康維持のための水や食べ物は十分確保されているのではないでしょうか。

 

2、不快からの自由

主に飼育の環境を指すもので、犬にとって快適に生活のできる環境です。例えば室温の管理。夏は暑くなく、冬は寒くない、そしてジメジメしていない環境。犬が快適に過ごせる室内温度は人より低めですから、特に夏場の温度管理は汗腺の少ない犬には注意が必要です。
寝場所もクッションを置いたり、人の動線上でない落ち着ける寝心地のいい場所が必要です。

 

3、苦痛、障害、病気からの自由
怪我や病気には適切な治療を受けさせましょう。日頃から健康チェックをまめにしましょう。

 

ここまでは普段注意すれば確保できる自由です。

 

問題はここから先の2項目

 

4、恐怖、抑圧からの自由

 

犬にとって過度のストレスとなる恐怖や抑圧を与えず、それから守ること。

飼い主の思う犬の恐怖と、犬にとっての恐怖は必ずしも同じではありません。

飼い主自身が、犬がどのような時に恐怖を感じるのかを知り、その恐怖を避けたり軽減させなければなりません。体罰的な躾も犬から見れば恐怖や抑制に当てはまることが多いのです。

 

例えばよくありがちなことですが、「犬は犬同士で遊ぶのが楽しいから」と、やたらに犬と遊ばせようとする飼い主がいます。全ての犬が犬に対して友好的ではなく、なかには犬が得意じゃない犬もいる訳です。無理やりそういう行為を続ければ、犬には恐怖となり、あげくは遊ばせようと抑圧する飼い主さえも恐怖の対象になりかねません。

 

人目線ではなく犬目線での恐怖とは何なのかを飼い主は知らなければならないのです。

 

 

5、正常な行動を表現する自由

 

犬にとっての正常な行動とは犬としての生態、習性に従った行動です。

 

これも犬から見ての正常な行動が、人から見れば問題行動とみられることがあります。吠えや噛みつき、飛びつきや排泄などの

人から見れば困った問題も、犬から見れば生態、習性による正常な行動となる場合が多いのです。

 

例えば、朝夕活動する習性を持つ犬を散歩に連れていかないことや、犬種の持つ行動特性を理解せず抑制してしまうのも動物福祉に背いていることになります。

 

全てに共通することは何でしょうか?

 

それは人の立場から見てではなく、犬目線から見ての

 

「安心」と「安全」です。

 

愛犬の我儘を認めることではなく、愛犬のニーズに応えてあげること。

 

愛犬がどんなことに喜びを感じているのか?

愛犬がどんなことに悲しみを感じているのか?

 

それを知り、正しく理解することが

 

「犬のQOL(生活の質)を高める」ことになり、

そこで初めて犬との信頼関係が生まれます。