堰が切れて褐色の濁流が流れていく。
激流が、目前を通過していく。
泥水が休む暇なく右往左往し続けている。
「ああ、しずめたまえ、荒れ狂う流れを!時は、刻々と過ぎて行く。」とひとりが叫ぶ。
濁流は、われわれ4人の叫びをせせら笑うように、いっそう激しく躍り狂う。

テコで懸命に決壊を阻止する。
邪悪な方へ向かうのを止めるするのが、われわれ「テコ隊」の使命だ。

先ほど、焼いた具の真ん中に粉とき汁をじゃーと入れたところ、刻んだキャベツなどで作った土手が壊れた。
周囲に汁と貝や海老などが洩れてどこまでも流出しようとするところを、四方からテコで懸命に押し戻す。




そして、またぐちゃぐちゃやる。

そのぐちゃぐちゃしたものをふーふー言いながら食べるのがもんじゃの醍醐味だろう。

鉄板にテコで押し付けて、焼いてあつあつのものをそのまま口に放り込む。



熱々のぐちゅぐちゅしたもんじゃ焼きをあてにビールを飲む。
ソースをじゅっと鉄板に落とし、絡めて食べるのもたまらない。
うまい。
うますぎる。

関西人のぼくからすれば、お好み焼きの赤ちゃんのような気もしないではないが…。

われわれ4人は、「どんなもんじゃ!」
と胸を張りながら、浅草のもんじゃ焼き屋をあとにした。