体力に限界があるように、心のエネルギーにも限界がある。
日々、仕事や家庭、地域活動などさまざまな顔を持ちながら競技を行っているのが、アマチュアアスリートである。
トライアスロンでは、体力の限界があるなかで、どのような配分で練習するのかが重要になる。だが実は、心のエネルギーにも限界があり、その配分には注意が必要だ。
仕事は肉体労働でなければ、基本的には体力的に疲れるわけではない。しかし、疲労感は残る。それは頭や心に残る疲労である。
まず、心のエネルギーにも限界という制約があることを認識する。そのうえで、仕事や家庭などさまざまな役割を果たしながら、どう配分して競技に打ち込むかがカギになると思う。
トライアスロンは3種目の練習が必要だが、すべての練習で強度を意識してしまうと、体力的にきついのはもちろん、精神的にも相当消耗してしまう。
おまけに、仕事で上司にいびられ、近所のトラブルまで抱える……。そんな状況になれば、なかなか気持ちは入らない。
だから私は、できるだけトレーニングの心理的ハードルを下げるようにしている。
たとえばエアロバイクをこぐときは、好きな本を読んで、余暇を楽しむような感覚でトレーニングをする。走るときも、音楽や音読の本をよく活用する。
それだけではない。単純に買い物に行かなければならないときも、自転車のトレーニングとして位置づければ、買い出しは面倒な作業からトレーニングに変わる。
仕事で夜遅く帰ってきて、着替えて夜中に走り出すのは、なかなか心のエネルギーを使う。であれば、一駅前で降りて歩いて帰るのはどうだろう。
取引先でトラブルがあり気が滅入ったときも、帰り道に近くの地下鉄に乗らずあえてJRの駅まで歩けば、トレーニングにもなるし気晴らしにもなる。交通費も浮いちゃうかも?
仕事が忙しくてどうしても時間がなければ、テレビを見ながらプランクや空気イスなどのコアトレーニングを行うこともある。
10分ほどの短時間でも高強度で行えば、HIITトレーニングとしてジョグ1時間分に近い消費カロリーを出すこともできる。
おそらく、こうしたやり方はトレーニング方法として理想的とは言えないだろう。
しかし、こうした工夫でストレスを管理してきたからこそ、18年間、毎年3〜7回(コロナ禍を除く)トライアスロンに出場し続けることができたのだと思う。
スポーツには気晴らしという意味がある。だが、競技として順位やタイムを意識して取り組めば、それ自体がストレスにもなり得る。
トライアスロンは、スイム、バイク、ランの3種目に取り組むことで、肉体のバランスがとても良くなると言われている。
しかし、アマチュアアスリートには、仕事、家庭、そして競技という「3つの種目」もある。
そして鉄人も普通の心を持った人間だ。短期で結果を出してすぐ辞めてしまうトライアスリートには、追い込みすぎて心身ともに消耗してしまう人が少なくないようだ。
3種目両立してこなしていくためには、心のバランスこそが欠かせない。
だって、人生はトライアスロンよりずっと長いロングディスタンスなのだから。