論語漫歩480  『星の王子さま』 血で書かれた書物 | キテレツ諸子百家〜論語と孔子と、ときどき墨子〜

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孔子、墨子をはじめ諸子百家について徒然なるままに語らせていただきます。

前回我々は、我が国に、『星の王子さま』を紹介してくれた大恩人、石井桃子氏と内藤濯先生に触れた。

今回も、『星の王子とわたし』文春文庫1976年内藤濯P3「はしがき」の続きである。

 

   サン・テグジュペリは、20歳の頃から、航空に宿命的な情熱を傾け始めた異常人だった。したがって、肉体を底の底までゆさぶった経験といえば、何度とも数知れぬ搭乗機の不時着だった。見はてのつかぬほどまで拡がっている砂漠に向かっての激突だった。

   したがって「星の王子さま」は、ただの作家の作ではない。航空士といたいけな王子とが、一週間そこそこ、人間の大地を遍歴する記録ではあっても、つまるところは、人心の純真さを失わぬおとなの眼に映じた社会批判の書である。

 

『星の王子さま』は、文字通り、ニーチェの言う

 

   「血で書かれた書物」

 

であったのである。サン・テグジュペリは、何度も何度も、「死の淵」を潜っている。

 

   23歳  墜落事故 重傷

   27歳  飛行機故障  サハラ砂漠に不時着

   33歳  サン・ラファエル湾に墜落

   34歳  モーター故障  河口に着水

   35歳  リビヤ砂漠の砂丘に激突

   38歳  離陸失敗  重傷  数日間 人事不省

   44歳  偵察飛行  帰らぬ人となる