ありました、クリムトです。グスタフ・クリムト。クリムトとの出会いは、20代後半です。NHKの“教育テレビ”、まあ、今の“eテレ”、日曜日の朝の番組、『日曜美術館です。クリムトの独特の画風に感動しました。

 『希望 II』だそうです。妊婦を描いています。やがて生まれてくる子どもに希望を感じますね。ですが、なぜか、妊婦と3人の女性はうつむき、目を閉じています。夢見るようでもあり、祈りのようでもあり、恍惚の記憶に浸っているようでもあります。妊婦の前になぜか頭蓋骨のようなものが描かれています。なぜ?なぜ『希望』に頭骸骨?妊婦が羽織る布には、例によって女性を象徴する丸い図形が全面に施されています。頭蓋骨の下に流れるように垂れている布には、妊婦とは色彩も形も違う女性を象徴する図形が流れるように描かれています。作品によっては、たとえば『ダナエ』などは、この女性のどこかに男性を示す図形を描くことがありますが、この絵にはそれは見られません。背景の暗い無彩色に金箔が散りばめられているのでしょうか、重苦しく感じます。妊婦たちがこの背景から浮き出で来るように見えますが、反対に、背景の間に挟まれ、押し込められているようにも見えます。