ニューヨークに行ったら、やっぱりミュージカルは絶対に観たいですよね。ブロードウェイ!『キャッツ』『ライオンキング』『ウエストサイド・ストーリー』『ロミオとジュリエット』などなど、かつてたくさんのブロードウェイの劇場で上演され、ロングランを続けたミュージカルのことを、テレビなどで遠い遠い世界の話として聞いてきましたが、その憧れの地“ブロードウェイ”に行くわけなので、絶対にミュージカルは観たいんです!それで、7月からWebや旅行の本でいろいろ探してみました。ただ、私は、たとえば外国の映画を吹き替え・字幕なしで観ても、残念ながらほぼ言葉は分かりません。40年以上英語を学んできたけれど、あれはなんだったのでしょう?!。ということは、英語でのセリフや歌は、ほぼ意味がわからずに観続けることになるわけです。なので、3時間30分とかの上演時間は、さすがにつらいかなと思いながら探すと、ありました!2時間30分のミュージカル!それがこの『MJ』だったのです。さらに、おー!『スリラー』『今夜はビートイット』『バッド』などマイケル・ジャクソンのヒット曲をライブで聴けて観れて、さらにミュージカルも楽しめるぞ!、最高に楽しめそうなミュージカルです!よっしゃ!これだ!

 で、7月にWebでチケットを取ろうとして、残りのシートを観ると、なんと最前列のど真ん中とその斜め後ろが空いているではないですか!どちらにしようか迷いました。ど真ん中はこれほどよく見える席はないですよね、まあ、通の人とかはある程度後ろのほうが全体がよく見えるとか、音響がいいとかあるのかもしれないけど、私は以前、ピアニストの小林愛実さんのコンサートに行った時も、最前列のど真ん中で聴いたら、指の動きや息遣いまで感じてすごく迫力があったので、絶対に最前列ど真ん中がいいと思いました。ただ、その席でどんな観劇の仕方をしたらいいのか、たとえば、役者さんがステージから降りてきて発言とか求められたらどうしようとか、最後にスタンディングになった時、乗り切れずに私1人だけ浮いてしまわないかとか、心配な要素はありましたが、「とにかく最初で最後だ!最前列ど真ん中でいこう!」と決断したのでした。

 さて、当日の開演40分ほど前にニール・サイモン・シアターに近づくと、もう長蛇の列。しばらく待って開演したら、ごぞごぞ進んでWebチケットを見せて(webチケットはこれが初めてだったので、心配しながら見せたら当然のことながらセーフでした。)、ホールに入ると、おー!映画などでよく観る、壁面や天井に美しい装飾を施した、高貴な方とかの観覧席もある大変立派なホールです。“ポール・サイモン・シアター”というだけあって、あの伝説の美声のフォークデュオ“サイモン&ガーファンクル”のポール・サイモンが建てた劇場なのでしょう、豪華を極めています。最前列のど真ん中に向かって通路を降りて行き、おもむろに座ると、ステージに手が届きそうです。さすがにこの席からスマホで録画はNGでしょうから、せめて、ホール内の全景とステージ(ネットのように薄いカーテンで中の様子が透けてわりと見えます。)でウォーミングアップの様子をと思い、撮りました。

 さて、しばらく待って始まりです。いきなりの4曲ほどのライブステージです。マイケルにそっくりの俳優さんのボーカルはもちろん、バックのダンサーたちもバンド演奏もライブで、まさに“マイケル・ジャクソン”のライブステージです!大興奮!大感激!のオープニングです。オープニングが落ち着くと、今歌っていた“マイケル”の回想の形でストーリーが展開していきます。つまり。今歌っていたマイケルと、子供時代のマイケルの、2人のマイケルがステージにいるのです。子役のマイケルが、これがまた、歌もダンスも上手い!すごく上手い!で、そのマイケルの才能を見出した父親がプロデューサーに売り込み、ジャクソン5が誕生しました。マイケルの才能が開花し、大ヒットし、ジャクソン5からソロとして世に出たマイケルは、その卓越した歌とダンス、さらに曲によって、世界的な大ヒットを次々と飛ばして、しかしそのために心は疲弊し、父親を始め周囲の人との人間関係も危うくなりますが、彼の母親だけはいつもマイケルの良き理解者であり彼の心を受け止めてくれます。彼はスーパースターであり続けるために悪魔に魂を売り渡しますが、そこでも、亡き母親の天国からの愛の光がマイケルを救います。というようなストーリーだったでしょうか。何せ、ミュージカル中の英語がほぼ聞き取れないので、セリフの細かい内容はわからないのですが、俳優の皆さんたちの表情や動きで、わりとわかるものですね。ラストのグランドフィナーレでのライブステージは観客のみなさん総立ちで(後ろを振り向くことはできなかったのでどのくらいの人が立っていたかは見てないのですが、私のいる最前列は“総立ちの大盛り上がりの大興奮でした)、もちろん私も立ち上がって体全体でリズムを取りながら手拍子を打って、最高潮の大盛りの大興奮でした。最前列のど真ん中の私に“向かって”マイケルも他の俳優さんたちも歌い踊っているという感じが常にあって、スピーカーからではない地の声、目の輝きや唇の動き、細かい表情まで、ガンガンと、そして繊細に、ダイレクトに伝わってきます。俳優さんたちが発声するたびに激しく呼吸する胸の動き、躍動するダンスでの筋肉の動きや女優さんたちの太ももの揺れまではっきり見えます。特に、マイケルが歌とダンスの中で何度か、ステージ中央から私の目の前の手が届くところまでダッシュして、正座を崩したような体制に膝を折って後ろに手をついて、のけぞるようにしてピタッと静止して全身全霊を込めて熱唱するときには、マイケルのほと走る汗の一粒一粒、歯の一本一本、髪の毛の一本一本、まつ毛の一本一本一本、瞳の白眼と黒目の境目まではっきりと見えるので、これはもう大迫力の圧巻です!マイケル・ジャクソンのステージに酔いしれました。すばらしい!最高だ!

 余談ですが、マイケルもちろん最高でしたが、俳優さんたちの中の、20歳前後ぐらいのアフリカ系アメリカ人の女優さんに目をひかれました。彼女は、セリフのいい回しに独特な抑揚をつけていて、ダンスも一つ一つの動きやポージングが個性的で味わいがあるんです。マイケルを6、この女優さんを2、他の俳優さんたちを2、ぐらいの比率で観て聴きました。いやー、よかったです、最高でした。

 幕が降りて、観客の皆さんが帰り始めた時、誰かとこの感激について話したいという気持ちがすごく起こってきて、隣の席に座っていた40歳前後の女性に声をかけたくて仕方がなかったのですが、英語の始めの一言が出せず、そのままポール・サイモン・シアターを後にしました。