「価値あるものを作れば売れる」という考えがもたらしがちな、品質思考の罠。 | Work , Journey & Beautiful

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オルタナティブな学びを探求する

本日はとある世界的に知られたブランドを擁するとあるメーカーのとある事業部において、今後の事業戦略を実現していくための次世代リーダー育成プログラムの設計のため、事業部長の話を伺いに行ってきました。

実際に工場見学もさせていただいたのですが、現代的なメカニカルな工場ではなく、熟練された技術者が一人一人机を並べ製品ならぬ作品を作り上げていく様は見ているだけで魅了され、それだけでその製品をいつか「手にしたい」と思わずにはいられないものでした。(その金額は家が買えちゃうぐらいだけど)

印象的だったのは、熟練された技術者の半分近くが女性だということ。これは階級概念が根強いヨーロッパではありえないことらしく、オープンでフェアそして高い技術へのこだわりといった日本の素晴らしさを感じられるものでした。

これだけでも伺がった甲斐があったというものですが、それ以上に「価値あるものを作れば、いずれ利益に繋がる」という考えを組織的に実現していく難しさ、という極めて大切な気付きもいただいてきました。

実際に働く皆さんの表情、これまでの実績、徹底的に管理された環境、品質の高さに対する妥協なきテスト体制、その全てから自分達の製品に対する誇りが感じられます。その背景には価値あるものを作れば利益に繋がるという会社の理念が存在し、過去にはその成果として業績を伸ばしてきた成功体験も積み重なっています。

結果として、自然とプロダクト・アウト思考が社内で強く根付き、気付けば世界的な競争力を【損なってしまう】という事態を招くことになりました。価値あるものを作る、という考えがいつのまにか「品質の追求」という考えにのみ変換されてしまったために競争力を失ってしまったのです。

価値とは何か。その問いは常に顧客とは誰か?顧客は何を求めているのか?という問いとともに考えなくてはなりません。顧客という視点なしに機能性、利便性、安全性などの品質のみを追求してしまった時点で、価値を失ってしまうのです。

これは頭では分かっていても、技術を高め合う現場にいるとどうしても陥ってしまう品質思考の罠なのでしょう。

勿論過度にマーケットインの考え方を取り入れた途端技術力という最大の強みを失ってしまうでしょう。つまり大きなパラダイムシフトが必要ではないわけです。この素晴らしい技術を今後も高め続けるために、守り続けるために、どのように事業を担っていけばいいのか。皆さんの培ってきた礎の上に今後どのような素晴らしい未来に繋がるストーリーを描いていくのか。そんなことを考えていただくプログラムを設計していきたいと思います。