「グローバル人材」って定義が曖昧だよね、なんて思っている人へ。 | Work , Journey & Beautiful

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特にグローバル化が遅れている内需型産業と仕事をしているとここのところ耳にするのがこのキーワードなのだけれど、はっきり言ってこのキーワードは単なるブーム(つまり直に廃れる言葉)だと前々から言い続けている。

IT、食品、飲料、製薬企業など、やや国際展開が遅れ気味な企業(つまりこれまで国内産業で儲かっていた企業)がこぞってグローバル化に向けて育成の体系を見直そうとし、様々な研修を行ったり、専門チームを創り上げたりしている。しかしそもそも「グローバル人材」という概念そのものが日本特有のものである。なぜか特別視されがちなのである。そしてこういった企業人事の方と話をしていて頻繁に出てくるワードは「そもそもグローバル人材っていう言葉の定義が曖昧だよね」という言葉。これは思考停止でしかないと思っている。

はっきり言って、「そもそもグローバル人材とは・・・」なんていう無意味な定義と壮大な下準備をすることが必要なのではない。

例えば旧くからグローバルに展開している商社や物流会社がどうやってグローバルに活躍できる人材を育てているかをみれば明らかなように、一にも二にも優秀な人材に早くから海外で実際に勤務する経験を与えているだけ。せいぜい赴任前に若干教育を行うだけで、基本的なスタンスは「行って、体当たりして覚えてこい」である。そしてその結果として世界を股にかけ、成果をあげられる人材が確かに育っている。

つまりどれだけ成長に繋がる実経験を与えることができるか?がグローバル人材育成の要。そういった機会があるのであれば(海外に一定以上の拠点があるのであれば)迷うことなく送り込んだらいい。

機会がない(世界各国に一定以上の拠点がない)のであれば、満遍なく教育を行っている場合ではなく、実際に赴任する人に絞り集中的に投資を行い、拠点を確立することを支援すべきだ。そして拠点が増えたら計画的に人材をセレクションし、海外経験を積ませるフローを作り上げればいい。

資金調達、アカウンティング、ストラテジー、マーケティング、ダイバーシティ、ネゴシエーション、プレゼンテーション、ロジカルシンキング、そして赴任国の文化の理解などのトレーニング。こういった教育は限られた人材が受ければよいもので、「将来のグローバル化を目指して組織の中に○名リーダー候補をプールする」なんてプロジェクトは上手くいきようがない。実経験が前提にあってはじめて教育は機能するのであって、実情と乖離している教育を施されても活かし様がない。

勿論赴任前に受けさせる教育にかける予算にも限度がある。そしてそれはそれで問題ない。そもそもこれらの教育は必須ですらない。優先的に行うべきは、労務管理や契約関連、権利関連などのリスクマネジメントと資金調達面、つまり赴任者をバックアップする仕組みを整備することの方が余程重要だ。