相変わらず教育体系の再構築の話を聞くが、どこから着手してるんですか?と聞くと「各階層の役割定義」「コンピテンシーモデルの構築」「求められるスキルの整理」といった回答が多い。こういう話をもらう度に思うのは、それ、過去のアプローチと何が違うんだっけ?研修会社が考えた体系を自分達が考えることで何が解決されるんだっけ?ということだ。
ここでいう体系というのは、
(1)組織の人員をセグメントする(一般的には階層、職種で分ける)
(2)それぞれのセグメント毎にあるべき姿を設計する
(3)それぞれのあるべき姿を達成するための教育プラン
(4)教育プランの実行案(プログラム案)
の4点で成り立っている。上述の「各階層の役割定義」「コンピテンシーモデルの構築」「求められるスキルの整理」といったキーワードも全てこの体系という概念の中に収まる話であり、その一つ一つは体系を構築(あるいは再構築)するプロセスにおいて必要な手段もしくは選択肢の一つではある。
しかし実際に様々な組織の話を聞かせてもらっている限りは、大切な要素が抜け落ちている。その欠けている要素とは何のために教育体系を見直すのか?という根本的な問いに対する答えだ。
そもそも教育体系を見直そうとか改めて構築しようという動きが組織の中に生まれるパタンはいくつかあるが、大きくは「これまで単発で研修をやってきたが、もう少し組織全体の状態を踏まえ、誰にどのような教育を行うべきか?を整理したい(全体最適な投資が行えるようにしたい)」か「経営層からの指示(教育に対する投資のあり方を見直せと言われた)のどちらかだ。
細かいところはどうあれ、注意しなくてはならないのはこれら二つの背景は何のために教育の体系を再構築するのか?という問いに対する答えにはならない。
何のために教育の体系を見直すのかといえば、民間企業(営利企業)である以上、答えは一つしかない。教育体系の再構築は業績向上のために為されるものだ。収益及び利益の拡大のために為されるものだ。つまるところ経営戦略実現のために為されるものだ。(補足しておくと理念やミッション、バリューと呼ばれる概念もつまるところ経営的に勝つために作る、というのが僕の立場だ。)
・本当にコンピテンシーモデルを構築すれば収益・利益は向上するのか?
・本当に各階層の役割を再定義すれば収益・利益は向上するのか?
・本当に今の切り口で求められるスキルの整理を行えば収益・利益は向上するのか?
もし今から教育体系を見直そうとしている段階で何かしらの施策を検討しているとして、上記のような質問に自信をもって答えられないのであれば残念ながらスタート時点がズレてしまってる。
・そもそも収益・利益目標は何か?
・収益・利益目標が実現されている状態とは一体どんな状態なのか?(勿論いくつかの選択肢があるだろう)
・現状を踏まえ、何も変化せずにいるとどの程度の収益・利益が上げられるだろうか?
・あるべき姿を実現するための施策としてどのようなものが考えられるか?
・施策を実行に移していくとして、具体的に何を残し、何を変化させる必要があるか?
ここに上げた問いは一例ではあるが、いずれにしてもこれら組織の現状を的確に把握し、あるべき姿を実現するシナリオ(戦略と施策)があってはじめて、人材開発上の各施策が検討されるべきだ。そのプロセスでは勿論教育体系を見直すという施策の妥当性も問われるべきだ。