二つ目の出会い・発見は病院やドクターのこと。


   私の肺癌をかなりはっきり告げたのは埼玉県越谷市立病院の呼吸器の先生だった。30代に見える若い先生で、CT画像でがん組織と思われる部位を見せながら、これが癌かどうかは開けてみないとわからない。開けたら癌でなく良性のこともあるので、その時は「手術損」ということになる。でも癌だった場合、悪性の程度が進行していくのでそこも考えて 「しばらく様子を見る」か「早めに外科的手術実行」かを選んでくださいと言った。がんの可能性は高いと付け加えた。


    説明がとても分かりやすかった。滑らかな口調で論理的に話す先生に信頼感がわき、私は次のステップに進むことを決断した。すると、この病院には呼吸器外科がないので手術するならその科がある病院に紹介状を書きましょうと言う。


    紹介状を持って次に行ったのが獨協医科大学埼玉センター(越谷病院)だった。呼吸器外科で診察をしてくれたのは、こちらも30代半ばの若い先生だった。この先生も映像を見て断言は避けながら癌の可能性は高いと言い、確認の精度を上げるためPET検査を紹介した。私はこの先生の説明や患者への接し方もすばらしいと思った。以後、別の病院でのPET検査を経てこのドクターに執刀してもらうことになる。


    二人の呼吸器の先生が、ともに若くかつ患者への説明や対応が実に見事だったことに少し感動していた。優しく論理的に接してくれる人が私は好きなので、二人がそうだったことで手術の決断が早くつけられたと思っている。若い人の優秀さを実感した数カ月である。退院後2回通院したが執刀した医者の誠実な対応ぶりは変わらない。数年間は通院することになるが、肺癌の若い主治医に会うのは楽しみにもなっている。


    病院との出会いも新鮮であった。初めて獨協病院にかかったが、建て増しされた入院棟の立派さに驚いた。初めて病室に案内されたとき、係りの人が「かなり歩きますよ」と言っていたとおり、外来棟からエレベーターで3階に登りいくつかの角を曲がって歩いて約10分かかった。そこで終わりかと思ったらまた別のエレベーターで4階に上がり、左に折れてやっと病室に着いた。


    「もう1回来ようと思っても絶対迷うね」が家族の感想だった。距離も半端でないが、廊下の広さや途中の部屋の新しさにも目を奪われた。廊下は車2台がすれ違えるほどの広さだったし、大学附属の病院のせいか立派な会議室がいくつもあった。壁にはでっかい絵が何点も飾られ、月並みな言い方だがまるでホテルのようだった。他にも、病室棟に入るためには出入り口で通行カードをタッチしないとドアが開かないなど最近の病院事情を知ったりして、なかなか刺激的だった。


  知らないことはほんとにたくさんある。


  


  (昨年だったか、実家に帰ったときに撮った鳥海山。出羽富士と言われる)





   1年半ぶりのブログ。


    どんなことにも新しい出会いや発見はあり、刺激を受ける。


    主治医は「胃は大丈夫、他も問題ないですね」と安心(?)させてから、おもむろに「肺に影があるのがちょっと気になります」と告げた。昨年12月のことだ。


     24年前に胃癌の手術をしたので、定期的に通院し主治医の指導を受けている。 その先生が、他の臓器も見てみましょうといって造影剤検査したのが昨年11月末で、結果は12月にお話ししますとのこと。そこで言われたのが影の話だった。「私は消化器外科なので、呼吸器科の診断も受けてください」と追加した。


   今年1月初旬、同じ病院の呼吸器を受診し肺癌の可能性大と診断された。呼吸器の医師は、この病院は呼吸器の外科はないのでといって、呼吸器外科のある別の病院を紹介してくれた。


  二つ目の病院を1月中旬に受診し、若い先生から同じく肺癌の可能性を指摘された。より確実な診断をするためにと、今度は「PET検査」なるものをを勧められた。病変部が悪性の場合、そこが光るのだそうだ。


    1月下旬、また別の病院に行きPET検査を受けた。2月初旬に結果が二つ目の病院に送られ、先生から説明があった。やはり少し光っており悪性の可能性がきわめて高い、ただ初期なので外科的手術で取り除けば放射線や抗がん剤の投与は必要ないと思うとの診断。様子を見るという選択肢もあるがその間に病気が進行することもあるともいわれ、私は肺癌と分かった以上手術を選ぶと答えた。医師は3月中旬の手術を提案したが、その時やっていたパートの仕事3つを3月中にケリをつけてからやりたいと言い、4月の入院・手術が決まった。


   いくつかの検査を外来でやってから、慌ただしく入院、手術、そして退院へと進んだ。入院から退院までは10日ちょっとで終わった。ここまであっという間の4か月だった。


    昨日が退院後最初の外来で、医者からは 「順調に快復しているが右肺の3分の1を取った手術です、個人差はあるがほぼ完治まで3か月くらいかかります、最低1か月は力仕事や走ったりなどをやめ、無理のない生活をするようにしましょうか」と言われた。現在、3か所の穴をあけたところと肺を取り出しすため切開した部位がときどきヒリヒリ痛む。


    しばらくは痛み止めを飲みながら無理せず過ごしたいと思う。もし数か月後、以前の生活に戻れたとするなら、まずは発見してくれた胃癌の主治医に感謝しなければならない。


    以下、この4か月の新しい出会いや発見がたくさんあったので三つくらい書いておきたい。


    一つ目はPET検査のこと。


    Positron Emission Tomography (陽電子放射断層撮影)と家庭医学大事典にあった。放出された陽電子は正常細胞と比べてがん細胞にたくさん蓄積される性質を持っていて、画像を解析するとそこが光を発するのだそうだ。私の場合は10段階で下から2番目くらいの青白い光だった。末期のがん細胞だと真っ赤になるそうだ。細かいところはほとんど理解できなかったが、今、がんの病気では最も一般的な検査で確実な診断につながるという。PET検査の受付の人は 「ハイハイ」とごく当然の顔をして紹介状の書類を受け取っていた。こっちの緊張は意に介するふうもなかった。私は「ああ、そんなもんなのね」と受け入れ、検査台に登った。


    世のなか知らないことは山ほどある。二つ目の出会いは次回に。




                (近所の江戸川土手:昨年6月撮影)

  3歳と0歳の孫(長女夫婦の子)が遊びに来た際、帰りに自宅に送るのは私の役割である。ここから草加まで約20キロ。途中にケーキ屋さんがある。今回は孫でなくこのケーキ屋のこと。


  妻・娘ともども、通るたびずーっと気になっている店である。ケーキ屋といえば今どき、しゃれた店構えときれいな照明、清潔感ただようショーケースと決まっているが、このケーキ屋さんは一味も二味も違う。


   通りすがりに見るだけだが、入り口の布製の小さな屋根は薄汚れていてしかも右側は破れたままになっている。店内は薄暗く清潔感はまずない。客がいるのは見たことがない。店名は洋菓子店によくあるフランス語風だが、全体に今のケーキ屋さんのイメージと真逆なので「入る気がしない。だれも入らないでしょう」というのが3人の感想である。


   でも気になってから2年以上、“潰れる”様子もなく営業している。なぜ成り立っているのか不思議で仕方がない。これはもしかしたらテレビなどで紹介される「客も来ず、見た目やっていけそうにないのに潰れない店」なのかも知れない。


   気になったら試したいのは私の性格。一週間前、他の用事で店の前を通った。車に乗っているのは私一人。またとない機会と思い、用事を済ませてから店に入ることにした。なぜか少しドキドキした。破れた屋根の下を通りガラスの引き戸を開けて中に入った。客も店の人もいない。15秒くらい待った。ショーケースを覗いたら10種類くらいのケーキがありケースの上には数種類の焼き菓子が乗っていた。店内は外から見たときと同じで薄暗く、ショーケースの横には出来上がったケーキを入れる四角い箱が数枚立てかけたあった。見かけにはこだわっていない様子が見てとれた。店員さんが出てこないので帰ろうかなと思ったとき、年配の女性が現れた。女将さんだった。


   ショートケーキともう一種類(名前は忘れた。Aとしておく)を注文した。彼女は、「Aはよく売れるのよ。今日はもう20個くらい売れたの。残っていてよかったわ」と言って包装を始めた。それから品物を渡すまでのあいだ、よく喋った。私は、なぜこの店が潰れず営業できるのか聞きたかったがさすがに聞けない。それを察したかのようなお話だった。私なりに聞き取ったのはこんなことだった。


・この通りの店はよく潰れるのよ。セブンイレブンも潰れたし、ガソリンスタンドも潰れた。(地主に払う)家賃が高くてやっていけないのよね。月35万だもの。人件費もかかる。うちは自分のものだから何とかやっている。主人と二人だから人件費はいらないしね。


・東京とか横浜から買いに来るの。インターネットを見て来たと言ってる。私たちはネットはやってないよ。誰かが紹介しているらしいの。地元よりもそういうお客さんが多い。(後で食べログを見たら確かに訪問している人がいて、二人がコメントを残していた)


・東京とかはケーキの値段がとにかく高いでしょ。一個600円とか700円もする。うちはずっとこの値段でやっている。


・私も70歳超えたからもうそろそろと思ってるの。去年やめようと思ったけどお客さんが来るからまだやっている。よく続いているねとお客さんには言われるけどね。


   女将さんの話からすると、この店が続いている理由は値段が安いので東京方面からお客さんが来ることらしい。テレビの店のような「裏技」はなかったようで地道に頑張っている店だった。私が買ったケーキは二つで680円だった。帰宅してから食べた。味は正直イマイチだった。再訪はしないと思うがお店の健闘を祈る。


   気になっていた店を訪問できたことで良しとしたい。


☆本文と関係ない今日の575


  忘れ物チェックの 中に チャック入れ

    (ときどき社会の窓を忘れて、恥をかく)


★今日の写真



(2016年10月撮影:秋田角館の武家屋敷)