矢島 正雄, 中山 昌亮
PS-羅生門 9 (9)

この作品は静かにアツイです。

ストーリーを書いてる矢島 正雄さんは、「人間交差点」のストーリー作家でもあります。


・・・・・。

「人間交差点」を知らないですか・・・・・。


そうですねえ、「人間交差点」に関しては、読んで字のごとくの作品で、人と人との交わりを

題材にした作品です。 作品自体もかなり古く、最近の若い人は知らない人も多いかもしれません。

この矢島 正雄さんの生み出す登場人物はとにかく人間味に溢れている。

ご自身でマンガを描かれる事はないようで、絵描きさんがどこまでやっているかは不明ですが、

構成まで立てているとすると、本当にすごい。

台詞、展開、文章、情緒

どれを取ってもテレビドラマなんかには引けを取りません。


あ、あんまり書くと「人間交差点」のレビューになってしまうので、

「人間交差点」終了



と、言う事で「PS 羅生門」がスゴイんです。

ちなみに、「PS」とは手紙に添えられる「追伸」ではなく

「ポリスステーション」の略です。

そうです。

警察署を舞台として、犯罪を通しての人情ドラマの作品です。

基本的に1話完結型のショートストーリーなんですけど、

主人公の同僚にも、容疑者にも、被害者にも様々な人生があり、

バックストーリーが用意されています。

つまり、みんな「色物」といった状態ですね。


他の現代マンガに、この「羅生門」の刑事達が出てきたら確実に浮くと思いますが、

そこのバランス感覚は絶妙です。

浮きも沈みもせず、クローズアップされた時に最大限活躍する。

役割分担がしっかりと出来ていて、なおかつ、生かしきっている。

この辺りになると、まさにベテラン漫画家の技を感じます。


犯罪を犯してしまった者の呵責、被害者の苦悩、刑事の葛藤がとてもいいです。


どの回を抜き取っても「はぐれ刑事」よりも「大岡越前」よりも

人情にあふれた「羅生門裁き」があります。

1話1話がぐっと来ます。


てつ としては、この作品を読んで「ぐっと来たら”まだ”正常」

といったイメージです。


少女マンガや、少年誌にあるような、上っ面な暖かさとはかなり違う

ちょっと生々しい温かさのある、大人の読むマンガ。


ニュースで日常的に流れる犯罪の報道に対しても、

「へー」

という一言ではなく、それに関わった人全てに、人生がある。


そう思えるようになる作品です。