大谷哲範@緑水の森再生委員会-画像31


これは海ではない。
東松島の元住宅地だ。
塩釜でのカウンセリングの後、我々は作業長靴を車に積んで、冠水が予想される地域へ向かった。
我々を待っていたのは、無人の住宅地と、写真のように完全に水没し海と化した広大な廃墟だった。
長靴を履いてくれるべき住人は一人もいなかった。
すれ違った車はたったの一台。
他地域からの応援の警察車両だけだった。
震災直後に訪れた時よりも、あきらかに沈下が進んでいる。
海と同じ高さになってしまったこの地域に、人が住むことは二度とないのかもしれない。
ガラスのない窓に海風に揺れるカーテン。
満ち潮とともに、音もなく道を浸す黒い水。
台風が過ぎていった後の光は透明で、風は爽やかなのに。
厳かな自然の力の前に跪きたいくらいなのに。