生々しい廃墟の中 ポリタンクと細いホースを
ワゴンの後部ハッチから出している中年男性。

壊滅した埠頭には ゴミと化した車両が
あちこちに踊っている。

ガソリンは食糧より貴重だ。
20~30Kmも走れば 食糧を入手できる地域に行けるのだ。

国や自治体から給料をもらい 支援に来ている人達にとっては
この中年男性の行為は「悪」でしかないだろう。
秩序のための法? 法あっての秩序?

僕は心の中で その中年男性に問いかけた。
『妻は?子どもは無事だったのか?
避難所には年老いた両親もいるのか?』



この震災がなかったら あなたは家族と一緒に
今頃お墓参りをしていただろうに。

ありふれた だが かけがえのない平安の中で
今日を過ごすことができただろうに。



大谷哲範@緑水の森再生委員会-画像7