今回の物資届け先は仙台港近くの避難所。
市職員からの情報では立ち入り禁止区域とのことだが、
表示はどこにもなく、警察車両も我々を一瞥するだけで咎めようとはしない。
道路一面に散乱したタブの空いてない缶ビールを
ダンプのタイヤで踏みつけながら走った。
遺体収容が終わったばかりの地域。
車や家屋の残骸には、自衛隊員がつけたと思われる
「確認済み」の×マークのペイントがまだ新しい。
高台にある公園に登り、辺りを見廻す。
崩れ折り重なったコンテナは積木細工のようで、
縮尺がねじれてしまったようだ。
波の音が聞こえる。
くっきりとした水平線に目をやり、
他に何も音がないことにあらためて気付く。
未来の破局を描いた映画そっくりの非現実的な光景。
自衛隊、警察、消防隊員以外に怪しげな人間たちも。(見た目は勿論我々も!)
燃料欠乏の今、車の残骸からガソリンを抜きとるビジネス。
大量の缶ビールも水洗いすれば値段がつくだろう。
日射し強く影が濃い。
海風は凍てつくようだ。
暖かさの全くない狂ってしまった風景の中で、
僕は魂の芯からの寒気を憶えた。
秩序の崩壊 風と波の浸食。
昔、廃墟となった遊園地を探検したことがあったが、
なんてここは無機質なんだ。