出会い
子供が生まれたばかりの頃は
ベビーカーを押しながら
tetoを連れて
お散歩に行くのが常だった
いつもの様に散歩をしていると
同じ様にベビーカーを押しながら
大型犬を
連れている人に出会った
話をしてみると
ベビーカーに乗った男の子は
息子と
1歳違いのユウ君
大型犬ゴールデンレトリバーの
レオ君も
tetoと
1歳違いだった
子供達が成長していくに連れ
公園で
片言の言葉を話し出したり![]()
歩き出したり![]()
追いかけっこをしたり![]()
互いに一人っ子で
散歩で会う度に
喜んで はしゃいで
それはもう
楽しそうだった
その一方で
tetoは…
生後7ヶ月まで
前の飼い主との生活で
先住犬たちとの相性が悪く
追い回され
オヤツを横取りされ
皆が戯れるソファーに
入れても貰えず
常に独りで育ったせいであろうか
レオ君に会う度に吠えまくり![]()
距離を保って歩いていた
レオ君だけで無く
どんな犬とも挨拶が出来ず
幼少期に社会性を養う事が
どれだけ大切なのか
感慨い深く
また
レオ君がtetoに吠え返すことは
その生涯
一度も無かった
そんな或日の夕刻
『ぶっ
ぶっ
ぶっ
ぶっ
』
ぶぅーーーー💢💢💢
』
ぶ〜ぶ〜ぶぅぅぅ
』
タクシーの長いクラクション
大人の私が震え上がる様な
けたたましい音に
つい悲鳴が出そうになる![]()
tetoが立ち止まったまま
ブルブル震えが止まらない
飛び出した訳でも
広がって歩いていた訳でも無い
何で鳴らされたのか分からない…
ひたすら怖かった![]()
えっ…?
レオ君がtetoの隣に
回り込んで
身体を寄せている…![]()
ユウ君のママが
『レオは偉いね〜tetoちゃんの事守ってるんだね〜』
サラリと言う
続いて
『レオのお祖父ちゃんは
チャンピオン犬で優勝までしてるのよ
レオは何も無いんだけどね
』
私︰『チャンピオン犬てあの
ドッグショーとかの?』
ユウ君ママ:『そう、そう
』
またまたサラリ言う
それまで私の持っていた
ゴールデンレトリバーの概念は
友好的で穏やかで
人懐っこい感じ
使役犬として適性も優れている
けど…
そもそもチャンピオン犬て
どういうものなの?
分かっておらず
レオ君が咄嗟にとった行動に
心を掴まれ
一先ず
家に帰り調べてみた

レオ君には
もともと備わっている
性格的特性
と言う物があるらしい
これは後天的に身につける
知識や技能とは無関係で
生まれながらに持つ
《可能性の下地》
と言われるもの
空間認識能力や
問題解決能力など
お祖父ちゃんから受け継がれた
《天賦の能力》
と解釈する
あの時
けたたましいクラクションの中
レオ君はtetoの
戦慄を察知し
助けようとしたのだと
合点がいく…
別れ
tetoも少しづつ年を重ね
気が付けば
レオ君に吠える事は皆無になる
穏やかに2匹が並び歩く姿に
長い年月をかけて
育んで来た関係性が垣間見られる
そんな穏やかな時間は
長くは続かなかった
澄み渡る寒空の下
普段より幾分か早めにtetoを連れて
散歩に出る
ユウ君が家の窓を
開けたり閉めたり
何か慌てている様子![]()
![]()
私と目が合うなり
『お母さんがお出かけして
帰って来ない
お父さんが、お父さんが
泣いている…
レオ、死んじゃったぁ
❕️』
私:『ちょ、ちょ、ちょっと
落ち着こう
お母さんに電話してみる?
何処か買い物行ったのかな?
探して来ようか?
何かお手伝い出来る事はある?』
多分その様な事を言ったと思う
私が一番慌てている
もう何を言ったか
覚えていない
すると玄関の扉が
ちょっとずつ静かに開き
そこには
レオ君を抱えている
お父さんの姿があった
『レオ…進行癌だったんですよ…
いや…覚悟はしてました
tetoちゃんもこれまで
長いことありがとうね
本当にお世話になりました…
家内とも連絡ついたので
今から病院行って来ます
綺麗にしてもらって来ますね…』
レオ君の身体はまだ温かく
眠ってるかのような
あどけなく優しい表情だった
車のドアを開けてレオ君を
シートに寝かせようとした
その時…
tetoが自らの足で
レオ君に近づき
顔を寄せて
しばらく見つめ出したのです
何を思ったのか分かりません
ユウ君のお父さんはtetoの
生い立ちを
よくご存知なので
それがどれだけの
《珍事》かを
察して下さったのでしょう
私達には
分からぬ何か
《神々しいもの》を
見た気がして
二人して人目も憚らず
泣き尽くしました
レオ君が逝ってしまってから
9年
tetoが自ら
他の犬に顔を寄せたのは
後にも先にも
その一度きりでした
思えばあの日
いつもより早い時間に
散歩に出かけ
最期レオ君を見送れたことも
偶然とは思えず
特別な結びつきが
あったのだと
確信しています
優しかったレオ君
勇敢だったレオ君
私に
チャンピオン犬の
意義を教えてくれたレオ君
tetoに
全ての犬が敵では無いよと
教えてくれたレオ君
tetoもそちらに逝きました
そしていずれ私達も
そちらに逝く事となるでしょう
その時はまた
2匹と4人
クラクションの無い世界を
思いのままに 存分に
お散歩しようね
![]()
若かりし日のteto 5才

