友梨奈がいない間、待っていた宅急便が来て受け取りにサインを書き、段ボールを受け取ってドアを閉めた。


早速、段ボールを部屋に置いてほくそ笑む。


早く友梨奈の姿が見たい!


一人ソファーに座ってふふっと笑いながら友梨奈が帰って来るのを待つ。


コーヒーでも飲もうと思って立ち上がると友梨奈とおそろいで買ったマグカップにコーヒーの素を入れてポットのお湯を注いでスプーンでかき混ぜる。


ソファーに座って雑誌を見ながらコーヒーを飲んでいるとドアを開ける音が聞こえて思わず廊下の扉の方を見る。


扉が開いて友梨奈が袋をぶら下げてリュックを背負って帰ってきた。


「理佐ー、ただいまっ」


残り物のお弁当が入っている袋をテーブルに置いて背負っているリュックを下ろすとソファーに座り、唇にキスをされ、抱きついてすりすりと甘えてくる。


「キス魔ー。お疲れ様」


髪の根本が黒くなってきた友梨奈を抱きしめて、ん〜といった感じで私もすりすりと髪に頬を擦り付けた。


「お腹減った〜」

「お弁当食べなよ」

「やだー。理佐の作ったご飯がいいー」

「せっかく貰ったお弁当食べなさい。夕ご飯はちゃんと作ってあげるから」

「じゃあせめて理佐の作ったお味噌汁が飲みたいー」

「仕方ないなぁ...」


喜んで私から離れる友梨奈はがさがさと袋に入ったお弁当を出してソファーに寝そべる。


友梨奈の大好きなわかめと玉ねぎのお味噌汁を作りにキッチンに立つと手際よく作っていく。


友梨奈の方を振り返ると疲れたのかクッションを抱いてうとうとしてる。


顆粒のだしの素を入れて湯気が立つ鍋にあらかじめ具材を入れ、味噌を溶いて出来上がったお味噌汁をお椀の入れてテーブルに置くと友梨奈は目を擦ってクッションを放ってお味噌汁を見ると嬉しそうに私を見上げた。


「理佐大好きっ」

「ふふ。さ、ご飯食べな」

「うんっ」


こう見るとまだ子供なんだよなぁ。


エロガキでクソガキだけど。


美味しそうにお味噌汁を飲む友梨奈を微笑んで見つめる。


隣に座って冷めてしまったコーヒーを飲んでいると

友梨奈がとんかつの一切れを私の口に近付けるからパクッと食べた。


「んー、おいひい」

「ふふっ」

「わはひはひひはらはへな」

「ははっ。宇宙語」


もぐもぐと頬をぱんぱんにさせて食べる友梨奈を優しく見て雑誌に目を向ける。


コーヒーを飲み終わった頃、友梨奈は「ごちそうさまでした」と言ってお弁当を片付けて私の太腿に頭を乗せてきて読んでいた雑誌を取り上げられた。


「友梨奈ー」

「理佐が悪い」

「なんでよ」

「私今理佐の太腿に頭乗せてる。分かる?」


つまりは甘やかして。っていうこと。


そんなの分かるに決まってるでしょ。


「分かるよ。この甘えん坊」

「ふふっ。理佐って鈍感」

「違うし。分かってましたー」

「でも雑誌読んでたじゃん」

「読んでたよ?けど雑誌まで取られるとは思ってなかっただけです」

「いいから早く」

「んもう...」


唇にキスをすると嬉しそうに笑う友梨奈に眉を下げて微笑む。


「理佐もっと」


せがむ友梨奈に「はいはい」と呟いて何度もキスをすると手で私の首を引きつけてきてリップ音を響かせながら満足したのか手を離した。


「...今日は理佐と過ごすの楽しみにしてたのに」

「仕方ないよ。そういう時もあるんだから」

「理佐、髪撫でて」

「はいはい」

「はいは一回ー」

「もうこの生意気なクソガキ」

「あっ、ひどっ」


とは言っても髪を撫でているとしばらくして寝息が聞こえてきて優しく微笑む。


一度、友梨奈が働いているお店に行ったことがある。


最初の頃は厨房でお弁当を作っていると言っていたけど、休まず真面目に働く姿を見て、店長さんがお店に出て良いとOKを出したらしく、厨房に入ってはレジを打ってそこには笑顔の友梨奈がいて、今では老若男女問わず金髪のお姉さん、と親しまれていてお店は繁盛して看板娘だと店長さんから聞かされて友梨奈は恥ずかしそうに顔を真っ赤にさせて「店長!」と言っていた。


だって、笑顔の友梨奈は可愛いんだもの。


私も嬉しかった。


最初の出会いは悪そうな感じだったけど。


頑張って働いて、お給料は物欲がないのか、2万円だけ持ってあとは私に渡してくれている。


そのお給料は今でも大事に私が貯金している。


友梨奈がいつか、一人でやっていけるように。


でも、そう思うと悲しくなって切なくなる。


思わずぎゅっと抱きしめると友梨奈は眠ったまま声を漏らし、抱きしめていた手を離して頭にクッションを置いて毛布を身体に掛けてあげた。


「友梨奈...頑張ってるね」


髪を撫でて切なく微笑むと友梨奈は気持ちよさそうに眠っている。


私は友梨奈の顔の傍に両肘を置いて目を閉じた。








ーーーーーー

夕方、目を覚ますと友梨奈に掛けていた毛布が自分の身体に掛けられているのに気付き、ソファーに目を向けると友梨奈は両足で私を挟んで携帯を弄っていた。


「友梨奈...起きてたの」

「おはよ。うん、さっき起きた」

「んー。毛布ありがとね」


大きく伸びをして毛布を畳んでソファーに置く。


「暖房つけてるけど理佐寒いかなって思って」

「ありがと」


髪を撫でてキッチンに立ち、冷蔵庫の中を見て料理に取り掛かると友梨奈は椅子を開いて私の腰に抱きついてきた。


「友梨奈、座ってて」

「やだ」

「やだじゃなくて」

「ここがいいの」

「甘えん坊」

「甘えん坊でも好きでしょ?」

「...うん」

「なにその間は」

「もう、集中出来ないから良い子でいて」

「理佐私のこと好き?」

「...うん、好き」

「じゃあキスして」

「んもう、あとで」

「やだ。今がいい」

「もう、本当に...」


友梨奈の唇にキスをすると服を掴まれて深く口付けをされて舌が絡み合う。


唇が離れ、お互いの唾液が混ざって友梨奈は自分の唇をぺろりと舐めて満足そうに微笑んだ。


「もう、エロガキ」

「ねぇ、ひどい」

「あとで覚えときなさいよ」

「はーい」


あとでお楽しみが待ってるんだから。


友梨奈はそれを知らずに私はふふんと笑った。












「ごちそうさまでしたっ」

「はい、私もごちそうさまでした」


空いたお皿類をシンクに持っていくと友梨奈は自然とお皿を洗う。


「良いのに、私がやるよ?」

「理佐は座ってて」

「...いつもありがとう」


優しく髪を撫でて微笑むと浴室のお湯張りのボタンを押して戻ってソファーに座った。


洗い物を終えた友梨奈は手を拭いて私の隣に座る。


「あ、友梨奈今日新しいパジャマ買っておいたから」

「良いのに。部屋着あるし」

「エアコンついてても寒いでしょ。友梨奈の格好じゃ。薄い長袖とズボンだもん」

「寒くないって。ちょうどいいもん」

「とにかく今日はそれ着て寝るの。分かった?」

「はぁーい」


間延びした返事をして私の腕に抱きつく。


「友梨奈、なんか飲む?」

「ううんいらない。理佐とこうしてたい」

「分かった。ほら、おいで」


自分の太腿をぽんぽんと叩くと友梨奈は頭を乗せて見上げてきた。


「あー、落ち着く」

「そうなの?」

「うん。理佐髪撫でて」

「出た。甘えん坊」

「髪も洗ってね?」

「いつもしてるじゃん」

「そうだけど。好きな人に洗われるのが好きなの」

「ふーん」


嬉しい気持ちを堪えていると私の表情を見て友梨奈が手を伸ばして私の頬を突く。


「理佐恥ずかしがってる」

「友梨奈が好きな人っていうから」

「本当のこと言っただけだもんー」


へへっと笑う友梨奈に目を細めて髪を撫でる。


すると浴室から機械音のアナウンスが聞こえた。


「友梨奈、入るよ」

「うん」

「友梨奈は下着とタンクトップで上がってね?」

「え、なんで?」

「私も新しいパジャマ見たいから」

「んー...分かった」


不思議だとは思ってないみたい。


脱衣所に友梨奈と向かい、洗濯機に着ていた服を二人で入れて裸になると浴室内に入ってシャワーを出す。


「あ、下着持ってくるの忘れた」


私がそう言うと友梨奈は微笑んで私を見つめて、


「良いんじゃない?裸の理佐も好きだし」

「...本当このエロガキ」

「今日酷くない?私何回エロガキって言われたんだろ」


友梨奈を椅子に座らせて温まったお湯を頭からかける。


「ちょっと、理佐っ、乱暴っ」

「友梨奈が恥ずかしいこと言うから」

「んもうっ、優しくして」

「我儘友梨奈」


とは言っても全体に髪を濡らすとシャワーを止めて髪を優しく洗う。


「友梨奈髪もう根本黒くなってるよ?」

「あーいいの。気にしてないし」


大人しく洗われている友梨奈は私にシャワーヘッドを渡し、それを受け取って泡を洗い流した。


「友梨奈って結構無頓着だよね」

「そう?」

「うん。普通なら髪とか気になるお年頃だと思うけど」

「んー...。なんかどうでもいいかなって。めんどくさい訳じゃないよ」


コンディショナーもつけて洗い流して、顔と身体を洗った友梨奈は湯船に浸かると今度は私が椅子に座って髪を洗い始める。


「あー気持ちいいー」

「ちゃんと温まってなさいよ」

「はぁーい」


友梨奈がお風呂の縁に両肘をついて見ているとは知らずに全身を丁寧に洗っていくと視線を感じて友梨奈を見る。


「どうしたの?」

「いや、理佐の身体のラインいつ見ても綺麗だなぁって」

「友梨奈もそうでしょ」

「私?綺麗なのかな...」

「綺麗だよ?自分で気付いてないだけだよ」

「ふーん...」


シャワーで泡を洗い流した私も湯船に入ると友梨奈は私の手を取って背中を向けさせて抱きしめてきた。


「理佐、髪の毛良い匂い...」

「友梨奈と同じシャンプーなのに?」

「うん」


お腹に手を当てて首筋にキスをする友梨奈に思わず肩を竦める。


「友梨奈、くすぐったい」

「我慢して」


髪を右にかけられてキスをされながら時折強く吸われて思わず声を押し殺す。


「ふふっ、キスマークつけちゃった」

「...つけちゃった、じゃない」

「見えないところにつけたから良いじゃん」

「そういう問題じゃない」


しばらく抱きしめられて静かな浴室内に身体が火照ってきて友梨奈の腕から離れ、湯船から上がると友梨奈も一緒に上がって浴室から出て、タオルで身体を拭く。


友梨奈も身体を拭いて十分温まったまま裸で私の下着とパジャマ、自分の下着とタンクトップを持ってきた。


「ありがと、友梨奈」

「ん」


衣服を着て、先に友梨奈の髪からドライヤーで乾かしてあげる。


「寒くない?」

「全然大丈夫。むしろ暑い」

「元気だなぁ。髪乾かしちゃうから待ってて」


髪を乾かしていると友梨奈が部屋から段ボールを持ってきた。


「理佐、これ?」

「うん、そうだよ。待って待ってっ」


開けようとする友梨奈を慌てて制して自分も髪を乾かし終えると箱を持ったままの友梨奈を寝室に押し込んだ。


「友梨奈、着替えてきて」

「はーい...」


その間スキンケアをしてソファーに座って待っていると寝室の扉が開いてわくわくする。


友梨奈はカワウソの着ぐるみを着てフードを目深に被って溜め息を吐いた。


すんごく可愛い...!!!


悶絶する私に尻尾をぶらぶらと揺らしながら近付いて私の前に立ちはだかった。


「理佐...これ...」

「〜っ、可愛い〜友梨奈〜」


腰に抱きついて、すりすりと顔を擦らせる。


「だから、下着とタンクトップだけだったんだ...」


不服そうな友梨奈をソファーに座らせて押し倒し、目深に被ったフードを上げて頬に何度も口付けた。


「友梨奈〜っ、可愛いーっ」

「可愛くない...」


まだ不服そうな友梨奈に目を輝かせて唇を重ねる。


「理佐...タグ切って...痛い」

「はーいっ」


一旦起こして首筋に着いてるタグをハサミで切って捨てると抱きしめて頬と頬を擦らせた。


「友梨奈、しばらくそれで寝てねっ」

「やだっ」

「じゃあ友梨奈の大好きなお味噌汁作んない」

「っ!ずるい!」


ふふっと笑う私に友梨奈は口を曲げて納得出来ない表情を浮かべる。


「友梨奈、大好きっ!」

「...」

「友梨奈は?」

「...大好きっ!!」


半ばヤケクソになった友梨奈にクスクスと笑って抱きしめ合った。


「理佐、このあと覚えててね?」


にやっと微笑むカワウソ友梨奈に襲われるとは微塵も思っていなかった。








 













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リクエストして下さった方、遅くなってすみません🙇‍♀️気に入って頂けると幸いです。

お読み下さりありがとうございました。