脱衣所に入ると理佐は遠慮なく服を脱いで裸になったから目のやり場に困った。
「友梨奈、脱いだ服洗濯機に入れていい?」
「う、うん...いいよ」
「ほら、友梨奈も早く脱いで」
「う、うん...」
おずおずと服を脱いで眼鏡を外して裸になるとあまりの恥ずかしさに顔が赤くなるのを感じた。
私がバスルームを先に入ってシャワーをお湯になるまで出してそれを理佐に渡す。
「先に洗っていいの?」
「うん...」
「ありがとう」
椅子に座って理佐は髪を洗う。その間、私は浴槽の縁に座って俯く。
視力が悪いから理佐をはっきりと見えない事は良かった。
ぼんやりとしたままずっと座っていると、全身を洗い終わったのか、理佐が私を呼ぶのに気がついて顔を上げる。
「友梨奈の番だよ?」
「あ、うん...」
そう言って理佐は浴槽に浸かり、私は髪を洗った。
しばらくしてから全身を洗い終わると浴槽に向かい合わせに入って膝を抱え、バスルーム内はシーンと静まりかえっていた。
「ねぇ、友梨奈」
理佐の声が響く。
「うん...?」
「柿崎さんって知ってる?」
「...うん...芽実は私の同級生...どうして...?」
「...いつも友梨奈が借りた本の次に名前書いてあるから、知ってる人かなって思って聞いてみただけ」
「...そうなんだ...だから小説の話知ってたんだ...」
「柿崎さんとは仲良いの?」
「...うん...でも、同級生ってだけだけど...」
「でも、芽実って呼んでるじゃない」
「芽実はただの同級生だよっ?」
なんで私、こんなに動揺してるんだろう。
「そっか。なら安心」
「うん...」
「友梨奈、おいで」
「え...っ?」
「いいから、はい」
「ちょ、ちょっと、理佐っ」
腕を引っ張られて理佐の膝の上に跨がる格好になる。
肌と肌が密着してるから私は恥ずかしくてぎゅっと目を瞑った。
「友梨奈、気持ちいいね」
そう言って私の髪を優しく撫でる。
私は心臓がドキドキするほど緊張してるのに。
「も、もうあがるっ」
「だめ。まだ入ったばっかりでしょ?」
「〜っ」
更に身体は密着するのに目を瞑ったままじっと大人しくしていた。
でもやっぱり恥ずかしくて目を開け、意を決して抱きしめられた腕の中から身体を起こして理佐を見つめる。
「...理佐、あのっ、」
言葉を遮られて唇にキスをされる。
両手で頬を包み込まれ、何度も口付けを受けた。
目を閉じて理佐の手を掴むが非力な私の力じゃ敵わなくて頬を紅潮させてやっと重なっていた唇を離される。
「...友梨奈、好き...」
「っ、理佐...っ、私、も、もう上がるっ」
理佐から離れてバスルームから飛び出す様に出ると慌てて身体を拭き、服を着て眼鏡をかけ、タオルで髪をガシガシと拭いてソファーに座った。
遅れてきた理佐は俯いて髪を拭きながら私の隣に座る。
「ごめん、友梨奈。やり過ぎた」
「う、ううん...大丈夫...」
「...私、こんな感情初めてで...」
「...な、なんの...?」
「誰かを好きって気持ち」
「...理佐も...?」
「...も、って、友梨奈、私の事...」
「...さっきは恥ずかしくて...」
「友梨奈...ごめん...」
理佐の手が伸びてきて抱きしめられた。
同じシャンプーを使ったはずなのに良い匂いがする。
「友梨奈...大好き」
「っ、...」
(ドキドキする感情は相手を好きだって思う気持ちだ。)
読んできた小説のワンフレーズだ。
だけどまだ私は理佐の事、よく知らない。
でももっと知りたいと思った。
だからそっと、理佐の背中に手を回した。
もう時計は0:00を過ぎていて、私は口に手を当てて欠伸をした。
理佐は平気なようで私を見て「もう寝る?」と尋ねる。
「ううん、大丈夫」
「でも友梨奈眠たいでしょ?」
「大丈夫...」
「...ベッド行こ」
腕を掴まれて強制的に立たされて寝室へと連れていかれる。
「友梨奈は奥ね」
「うん...」
眼鏡を頭上の置き場に眼鏡ケースを取って入れ、元の位置に戻すとベッドに入ってきた理佐に枕を渡すと「じゃあ友梨奈は私の腕枕ね」と言われ胸が高鳴った。
「お、お邪魔します...」
「ふふ。可愛い」
寝やすいポジションを探して落ち着くと布団を掛けてもらい目を閉じた。
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リクエストして下さった方、大変遅くなってしまい申し訳ありません!
お読み下さりありがとうございました。