目が覚めると私はベッドに寝ていた。横を見ると友梨奈がベッドに凭れ、私の手を握って眠っている。
友梨奈が寝かせてくれたのか。その行動さえも愛しくて空いた手で友梨奈の髪を撫でると「ん...」と声を漏らして友梨奈が目を覚ます。
「...理佐...?」
「ん...?」
「大丈夫...?」
「うん、もう平気。ありがとね、ここまで運んでくれて。重たかったでしょ」
「ううん、大丈夫」
天使の様に微笑む友梨奈に、私は目を細めた。
「...あ、そういえば携帯やってなかったね」
「うん」
起き上がり友梨奈と一緒にリビングに向かうと二人でソファーに座る。袋から箱に入っている携帯を取り出して友梨奈に手渡すと嬉しそうに微笑んで私を見つめた。
「開けていいんだよ?」
「うん...」
携帯を持つのが初めてなのか箱を開けると新品の携帯に目を輝かせる。
「友梨奈、貸して?設定は私がしてあげる」
「うん、お願い」
隣で私が設定しているのを友梨奈はじっと見つめてるのが可愛くて頬にチュッとリップ音をたててキスをした。恥ずかしそうにしている友梨奈にふふっと微笑み、設定が終わって携帯を渡す。
「あ、あとカバーも買ってきたよ」
「カバー?」
「緑色しかなくてごめんね」
「ううん、私、緑大好き」
「そうなの?良かったぁ...」
携帯のカバーを出して携帯にはめてあげると携帯を両手で持って嬉しそうにしていた。
「あとはー、LINE交換と、電話の登録ね」
「らいんってなに?」
「無料の通話や、メッセージのやりとりが出来るアプリだよ」
番号を教えてあげて友梨奈が自分で登録するのを眺める。
「LINEは私のID教えるね」
「んっ」
教えてあげるとぽちぽちと携帯を打つ。すると渡邉理佐と出てきて友梨奈が友達登録を押す。
「理佐、出来たっ」
「私の方も出来たよ、ほら」
「本当だっ。...理佐が携帯で初めての友達...」
「そうなの?」
「...12歳の時にこんな身体になってから、私の周りから友達離れて行っちゃって...親も携帯持たせてくれなかったから...」
「友梨奈...その頃から首輪してたの...?」
「...うん。お母さんが着けた...でも結局私を捨てた。お父さんに影響するからって」
「学校とかご飯とかどうしてたの?」
「学校は共学だったけど...でもあんまり行ってなかった。一か月に一週間は性フェロモンが出るから...ご飯もいつも自分の部屋で食べてた...」
寂しそうに呟く友梨奈を私は抱きしめた。
「ごめん...やな事聞いて」
「ううん...今は理佐が居てくれるから嬉しいよ?」
「友梨奈...」
思わず泣きそうになってぎゅっと強く手に力が入る。まだ18歳なのに苦労して、辛い事、悲しい事もあったのに笑顔で私を見つめる友梨奈を更に愛しく思った。この子の為なら私は不幸になってもいいとさえ思った。抱きついてくる友梨奈の髪を撫でる。
「理佐...?」
「ん...?」
「ありがとう」
「?何のありがとう?」
「色々」
身体を離してにっこりと微笑み、唇にキスをされた。私は嬉しさのあまり、後頭部を引き寄せて友梨奈の唇を堪能する。友梨奈も私の首に腕を巻きつけて何度も何度も唇を触れ合わせた。角度を変えリップ音を響かせながらゆっくりと唇を離すとお互いにふふっと微笑む。
「友梨奈、ご飯食べよ?」
「うんっ」
冷めてしまったオムライスをレンジで温めて友梨奈と並んで「いただきます」と手を合わせて食べ始め、友梨奈の反応を伺う。
「んっ、おいひいっ」
「良かったー」
二人でたわいもない話をしてオムライスを食べ、皿が空くと「ごちそうさまでした」と食器類をシンクに持って行って洗おうとすると友梨奈が「私が洗う」と言ってキッチンに立つ。
「ありがとね」
「良いのこれくらい」
背後から友梨奈を抱きしめて手元を眺める。友梨奈は何も言わずに黙々と手際良く洗っていくと最後のお皿を水切りかごに入れた。手を拭くと私の顔を見てチュッとキスをする。
「理佐、ご飯ありがとう」
「いいえ、どういたしまして」
「お風呂まだでしょ?」
「うん、入ってきちゃうね」
私もキスをして友梨奈から離れると寝室へと向かい、パジャマと下着を持って脱衣所の扉を開けてお風呂に入りに行った。
ーーーーーー
お風呂から上がると衣服を身につけ、スキンケアをし、ドライヤーで髪を乾かして手櫛で髪を整える。それが終わるとコームで髪をもう一度整えて友梨奈を呼んだ。が、一向に来る気配が無い。どうしたのだろうと思って脱衣所の扉を開けるとリビングのソファーで友梨奈が携帯を大事そうに持って気持ち良さそうに眠っていた。可愛いなぁ、もう。赤ちゃんみたい。
「友梨奈、友梨奈ー」
「ん......理佐...?」
「歯磨きして寝るよー」
「...ん...」
目を擦って起き上がる友梨奈の手を握り洗面台に立って二人並んで歯を磨いた。丁寧に磨き終わると口をゆすいでタオルで口元を拭く。友梨奈も代わりばんこに口をゆすいで私の使ったタオルで口を拭いて、私はそのタオルを洗濯機の中に入れた。二人して携帯を持ち、寝室に向かって友梨奈を奥に寝かせ、自分も布団の中に入る。友梨奈が私に擦り寄ってきたので腕枕をしてあげた。
「友梨奈、おやすみ」
「おやすみ、理佐」
友梨奈を抱きしめて二人で眠りについた。
翌朝携帯のアラーム音に寝ぼけ眼で友梨奈を見つめる。安心しているのかすやすやと眠っているのを携帯に収める。そして起こさない様にゆっくりと友梨奈から離れ、洗面台に向かった。歯を磨いて顔を洗うとタオルで拭き、スキンケアをする。
「よし、終わり」
キッチンに向かうとおかずを作ってテーブルに並べる。あとはお味噌汁を作ってご飯をよそうとそれもテーブルに並べて置いてると友梨奈が寝室から出てきた。
「おはよ、友梨奈」
「おはよう、理佐」
「顔洗っておいで?」
「うん...」
寝癖のまま洗面台に向かった友梨奈を微笑んで見届け、お茶をマグカップに入れてソファーに座り待っていると友梨奈が戻ってきて私が絨毯の上に座ると
友梨奈も隣に座った。ぴょんぴょん跳ねてる髪が可愛くて自然と笑顔になる。
「友梨奈、髪跳ねてるよ」
「いいの。外に出る訳じゃないから」
「ふふっ。可愛い〜」
髪を撫でると友梨奈は頬にキスをしてきた。
「おはようのキス」
「私も」
チュッと白い頬に口付けると嬉しそうにはにかむ友梨奈に微笑む。
「ご飯食べよっか」
「うん」
手を合わせて一緒にご飯を食べ、小さな口でぱくぱくとおかずを頬張って食べる友梨奈はまるでリスの様に見えて、私がクスクス笑いながらご飯を食べていると「ん?」と友梨奈が私の方を見つめる。
「いや、可愛いなぁ〜と思って」
顔を歪める友梨奈に更に笑ってご飯を食べ終えた。
食器を片付けるとシンクに持って行き洗い終えるとソファーに座る。しばらくして友梨奈が空いたお皿類を持ってシンクに置いて洗い物を洗っていく。
「置いておけばいいのに」
「いいの。理佐のお世話になってるのに手伝う事しないなんて嫌だから」
「友梨奈...早くおいで」
洗っている友梨奈の背中を愛しげに眺める。
洗った最後の一枚を水切りかごに入れ、手を拭いてソファーに戻ってきた友梨奈を抱きしめた。
「理佐...大好き...」
私の首に腕をまわして抱き寄せられると必然的に押し倒す体勢になってふふっと笑う友梨奈の頬を撫でる。こんな可愛い子に私は夢中になって指先で顔の輪郭に触れた。この子は私が幸せにする。何があっても。
二人抱き合ってソファーに寝そべった。