朝目が覚めて私の胸に顔を付けて寝ている友梨奈にふふっと笑う。


ちょうどごろんと仰向けになった無防備な友梨奈の寝顔がとても可愛くて白いほっぺたをぷにぷにと突くとん〜と言う声が漏れた。


やばい、起きちゃったかな。


でも友梨奈は起きず、私はゆっくりと身体を離してベッドを下り、洗面台へと向かった。


髪を上げて顔と歯を磨き終わるとそのままキッチンに行き冷蔵庫から食材を出しておかずとお味噌汁を作る。


しばらくしてから作り終わりまだ寝ている友梨奈の元へと向かうとベッドの上にこんもりと山が出来ていた。


クスクスと小さく笑いながら布団を少し捲って見てみる。


友梨奈は買ってあげたカワウソの抱き枕を抱き締め、丸まってすやすやと眠り姫の如く気持ち良さそうに眠っていた。


可愛いなぁ本当に。


あれから3ヶ月が経ち、友梨奈ももう慣れてきたみたいで、携帯を持たせたらいつの間にか使いこなしていた。


私が仕事の時はいつもLINEでいつかえってくる?とか、いま理佐のごはんたべたとか送ってきて私はそれだけで幸せで。


漢字は私と自分の名前しか知らないけど。


「ばぶちゃん...起きて」


布団を顔まで捲って頬にキスをした。
それでもうちの子は起きない。


何度も口付けているとようやく友梨奈が目をうっすら開けてこっちを見る。


「ばぶ、ご飯だよ」

「...ばぶじゃないもん...友梨奈...」


再び目を閉じようとする友梨奈の髪を撫でて優しく名前を呼んだ。


「理佐...」

「ん...?」

「...眠たい...」

「まだ寝てる...?」

「理佐も...」


腕を引っ張られて布団の中に入ると抱き締められる。


「友梨奈あったかい」

「あったかい...?理佐は冷たいね...」


ぎゅっと友梨奈を抱き締め返して温もりを感じた。


「ん...理佐...お魚の匂いがする...」


微睡みながら私の首筋をくんくんと嗅ぐ。


「鮭焼いたからね。...そんなに匂いする?」


コツメカワウソって鼻がいいんだっけ?と思いながら友梨奈は更に擦り寄ってきた。


「...寝るの?」

「...」

「...友梨奈?」


再び眠りに入った友梨奈につられてかなんだかこっちまで眠たくなってきた。


目を閉じて友梨奈を抱き締めると私もまた寝てしまった。











目が覚めた頃にはもう10時を回っていた。


ん...?なんか身体がやけに重い...。


目をゆっくり開けると友梨奈が悪戯っぽく微笑んで私の腰に跨っていた。


「理佐、おはよう」

「おはよう...寝坊助さん」

「ねぼすけさん?」


ん〜と伸びをして友梨奈を見上げると嬉しそうに微笑んでいて指を絡めてきてシーツに押し付けられ唇にキスをされた。


「...友梨奈キス好きだね」

「理佐だもん」

「〜友梨奈ぁー」


首に腕を回して抱き締める。


なんでこんなに可愛いんだろう。


愛しすぎる。


「理佐、お腹空いた」

「じゃあ食べよっか」


友梨奈は私から下りて洗面台に向かった。


私も起き上がり、キッチンに行っておかずとお味噌汁を温め直す。


少しして友梨奈が洗面台から戻って来てレンジで温めた鮭を見て喜んでいる姿にふふっと笑ってテーブルに並べた。


ご飯とお味噌汁を用意して並べ、二人で座って「頂きます」と言って手を合わせ食べ始める。


「理佐っ、おいしい」

「そう?良かった」


頬をぱんぱんにして食べる友梨奈を見てクスクス笑うとキョトンとした表情を浮かべて口を動かしていた。


友梨奈と楽しく会話をして食べ終わり、食器類をシンクに持っていって洗っていると背後から友梨奈が抱きついてくるのに微笑む。


「どうしたの?甘えん坊さん」

「理佐、今度は私に洗わせて?」

「なんで?どうしたの」

「だっていつも理佐おいしいご飯作ってくれてるのに私がなんにもしないなんて嫌」


背中に頭をぐりぐりと擦らせて呟く友梨奈にふふっと微笑んで洗い物を終えるとくるりと振り返って抱き締めた。


「じゃあ今度やってもらおうかな」

「っ、ん!」


嬉しそうに頷いて微笑む友梨奈が愛しくて頬を撫でて唇にキスをすると友梨奈も唇を押し当ててきた。


ゆっくり離して額を合わせ微笑み合った。


「...あ、ねえ理佐」

「ん?」

「携帯の、なんて言うの?ほら、んーっと...」

「持っておいで?」

「んっ」


身体を離して寝室に向かった友梨奈をソファーに座って待っているとパタパタと戻って来て隣に座った。


「どれがわからないの?」

「これ、何て言うの?」


携帯の画面を指差して訴える友梨奈に気付く。


「画面っていうの。それがどうかした?」

「がめん...これ、変えれる?」

「うん、変えれるよ。どれに変えたいの?」

「んーとね...」


写真の所をタッチして画像を選んでる友梨奈の携帯を覗き込むと私の寝顔や料理してる後ろ姿とか撮ってあって目を見開いた。


「ちょっと友梨奈、いつ撮ったの!?」

「ふふっ」

「ふふじゃないでしょー」

「だって理佐綺麗だったから」

「っ、もう...」

「...あ、これにしたいの!」


見せてもらったのは私の寝顔姿だった。


「仕方ないか...あのね、ここの設定って書いてあるボタン押して壁紙って所、これね?ここを押して壁紙を選択って押すの。やってみて?」

「うん.........これどっち?」

「ロック画面ってとこ」

「ろっくがめん......出来た!」

「出来た?本当だ。もう覚えた?」

「ん!覚えたっ」

「友梨奈物覚え早いねー」


わしゃわしゃと髪を撫でると嬉しそうに私を見て笑う。


とても元コツメカワウソには思えないくらい可愛い。


「理佐の携帯のろっくがめんも私だもんね」

「いつ見たの?!」

「私の携帯と一緒だから間違えて触っちゃった時」

「もうー友梨奈...」

「だから私も理佐にしたくて」

「友梨奈...」


嬉しそうに自分の携帯を見つめる友梨奈に眉を下げて微笑んだ。


「これで寂しくない」

「友梨奈寂しかったの?」

「...ん。だから写真見て理佐の事考えてたの。でももうろっくがめん理佐にしたから大丈夫」


なんだか胸がキューっとなって思わず友梨奈を抱き締めた。


「友梨奈大好き」

「私も理佐のこと大好きだよ」


顔を見つめ合い角度を変えてキスをした。


何度も何度も。


ゆっくりと唇を離して友梨奈の頬を愛しくて撫でる。


「...あ、そういえば」


昨日仕事帰りにケーキを買ったんだった。


「友梨奈、ちょっと待っててね」

「?」


冷蔵庫から白い箱を出し、小皿とフォークを持ってテーブルに置いてソファーに座った。


「なにこれ」

「これはね、ケーキっていうの」

「ケーキ?」

「そう」


箱からショートケーキを小皿に乗せてフォークと一緒に友梨奈に渡すと色んな角度からショートケーキを見ている姿にクスクスと笑う。


「昨日クリスマスだったから友梨奈と一緒にケーキ食べたいなぁって思って」

「くりすます?」

「あー友梨奈知らないか。恋人と過ごす日って事」

「恋人と過ごす日?そんなのがあるの?」

「あるの。もちろん恋人だけじゃないよ?家族と過ごす日でもあるし」

「ふーん...恋人...家族...」

「友梨奈は私と恋人だから...1日遅れのクリスマス、一緒に過ごしてくれませんか?」

「...はい」


嬉しそうに笑う友梨奈に微笑み、ショートケーキの周りに貼ってあるフィルムを剥がすと友梨奈もマネしてフィルムを剥がした。


「これなに?」


苺を指差して尋ねる友梨奈に、


「苺って言うんだよ」

「いちご...」


フォークで刺してパクッと頬張る友梨奈をじっと見つめると、目を見開き私を見た。


「おいひいっ」

「良かった」


ふふっと微笑んで私もケーキを食べた。


「理佐」

「ん?」


友梨奈の方を見るとカシャッというシャッター音が聞こえた。


「ふふっ、また理佐の写真増えた」

「もう。いいからケーキ食べて」

「はーい」


美味しそうに食べる友梨奈を私も携帯で写真を撮った。


「あ、理佐ー」

「ふふっ、仕返し」

「理佐も食べて」

「はい」


にっこり笑って二人仲良くケーキを食べ、キスをすると生クリームの甘い味がした。
















来年もまた一緒に食べようね、友梨奈。


















END
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