「ただいまー」

「理佐、おかえり」

あれから友梨奈は私と一緒に暮らし始めた。

私が渡したお金は使わずにとっておいてたらしい。

そしてそのお金を私に返してくれた。

これで私を買ってください、と。

一週間が過ぎた今でも忘れる事は出来ない出来事だった。

悪い友達とも遊んでないみたいで、私が仕事で居ない間お昼は何してるんだろう。と気にはなっていた。

「ねえ友梨奈」

「んー?」

「私がいない間何してるの?」

スーツを脱ぎながら尋ねると寝室の壁に凭れてこっちを見ていた友梨奈は罰が悪そうな表情を一瞬浮かべ、

「家で寝てる」

と呟いた。

「嘘」

「嘘じゃないよ」

「顔に嘘って書いてあるよ」

「書いてないってば」

下着姿の私の手を掴むとベッドに押し倒されキスをされた。

何も言わせないつもりなんだな、なんて思いながら甘んじて受け入れる。

友梨奈の手が私の胸に触れるとその手を掴んだ。

「...だめ」

「もういいじゃん」

「クソガキ」

「あー、また言った」

「全く。すぐそっちにいこうとする」

「ケチ」

「ケチじゃない」

友梨奈を押して起き上がるとラフな格好に着替える。

そしてキッチンに行くと鍋が温められてあった。

フタを開けると湯気がもくもくと上がる。

「友梨奈作ってくれたの?」

「...ん...」

恥ずかしそうに頷く友梨奈を見つめ、私は嬉しくて友梨奈の髪を撫でた。

「ありがとうね。作って待っててくれたんだ」

「豚汁だけだけどね」

「それだけでも嬉しい」

「理佐、キスは?」

「え?」

「ありがとうのキス」

「もう。本当どこでそんな事覚えたの」

「いいから」

「分かった」

頬に手を当ててちゅっとキスをすると満足して微笑んで私を見つめる友梨奈につられて微笑む。








晩ご飯を一緒に食べ終えてソファーに座ると友梨奈は私の膝に頭を乗せて寝そべった。

しばらくして寝息が聞こえてきて金髪の髪を撫でる。

猫みたい。

本当、お昼何してるんだろう。

気になって仕方ない。

でも友梨奈の口から出るまで待っておこう。

私の膝の代わりにクッションを置いてそのまま寝かせると私はお風呂に入りに行った。
















湯船に浸かってお風呂タイムをしているといきなり浴室のドアが開いたのにビックリしてそっちの方向を見ると裸の友梨奈が立っていた。

「理佐、お風呂入るなら起こしてよ」

「なんで?いつも別々に入ってるじゃん」

「せっかく最初から理佐と入りたかったのに」

ぶつぶつと呟き不機嫌そうにして中に入って椅子に座るとシャワーで髪を濡らし始めた。

「ねえ理佐、洗って?」

「...面倒くさいから?」

「違う。ねえ洗って」

「はいはい、分かりました」

浴槽から出て髪を洗ってあげていると急に友梨奈は顔を上げて見上げてきた。

「理佐の裸初めて見た」

「そりゃそうでしょう。ほら、目に泡が入るよ」

「大丈っ、ったー」

「あーあ、だから言ったのに」

目を押さえる友梨奈は頭を元に戻し、その隙に泡を流す。

そしてコンディショナーを髪に塗る。

金髪だから髪が傷んでキシキシしてるなぁ。

なんて思いながらそれも洗い流す。

友梨奈は髪を掻き上げて身体を洗いだしたので私はまた湯船に入って温まった。

「理佐ってさ、初めて?」

「...何が?」

「エッチ」

「このエロガキ」

「口わるっ」

「逆に友梨奈は?」

「私も初めて」

「嘘だ」

「嘘じゃないもん。イかせてただけだし」

「...」

聞かなきゃ良かったと後悔した。

私は友梨奈の事が好きなんだって改めて自覚した。

ショックを受けてる私は、湯船に入ってきた友梨奈が声を掛けてきたのにも気付けなかった。

「理佐ってばっ」

「え...?」

「どうしたの?ぼんやりしてる」

「どうもしてない」

「嘘」

「...嘘じゃな、」

私の言葉を遮って友梨奈はキスをしてきた。

肩を押して拒むけど、後頭部を押さえられ口付けが深くなる。

角度を変えて何度も噛み付く様に口付けられた。

思わず私は友梨奈の頬を叩き、離れた隙に浴槽から出て浴室を飛び出した。

タオルで身体を拭き、服を着て逃げる様にリビングのソファーに座って自分を落ち着かせた。

「理佐」

「...」

服を着てタオルで髪を拭きながら友梨奈がやってきた。

「なんで怒ってるの」

「...怒ってな、」

「バレバレ」

見透かされているのが嫌で髪を乾かそうと立ち上がり、友梨奈の横を通り過ぎようとした時腕を掴まれた。

「なに」

「教えてよ。怒ってる理由」

「だから怒ってない、」

「私が色んな人と寝たからでしょ」

「っ」

「...だろうなと思った」

そう呟いて抱き締めてきた。

「...今そんな気分じゃないから離して」

「嫌」

「いいから離して」

身体を押す程、抱き締めてくる力が強くなる。

なんとか離そうともがいても離してくれない。

「友梨奈っ」

怒鳴るが離してくれなくて強く突き放した瞬間、また私は友梨奈の頬を叩くと洗面台に向かった。

ドライヤーで髪を乾かしてそれが終わると寝室に逃げ込む。

嫉妬してる自分が惨めに思えてきてベッドに潜り込んで携帯を弄った。

ドライヤーの音がしてきたから友梨奈も髪の毛を乾かしてるんだな。

ふつふつとした怒りが頭の中でこみ上げてくる。

友梨奈が誰かと肌を重ね、キスをして...なんて考えたくもないのに浮かび上がる光景に腹が立つ。

やがてドライヤーの音が止まり、寝室の扉が開くのに気付いてぎゅっと目を閉じた。

「...理佐」

「...」

「ごめん」

友梨奈がベッドに入ってきて背を向けている私の身体を抱き締めてきた。

「こっち向いて?」

「...」

「理佐...」

そんな甘い声で呼ばないで。

「私、理佐の事好きだから」

「誰にでも言うんでしょ。そんな事」

「ねえ理佐、お願いだからこっち向いて」

「今は嫌だ」

友梨奈が私の身体から離れるのを感じた瞬間、私の腰に跨って正面を向かされた。

「理佐」

優しく唇を重ねてきて離されると抱きつかれた。

「私今まで誰にも言ってないよ、好きなんて」

「...嘘」

「嘘じゃない。本当に。裸になった事もない」

「...でもしたんでしょ。エッチ」

「それはそうだけど...」

「キスだって...」

「...それもごめん」

「...」

「ねえ理佐...信じて。抱きたいって思ったのは理佐が初めて」

私の顔の真横に両手をつき、真剣な表情をして呟いた。

私は涙ぐんで友梨奈を見つめると友梨奈は困った様に眉を下げる。

「泣かせてごめん」

私の瞼にキスをして抱き締めてきた。

「...聞いた私が悪かっただけ」

「理佐は悪くない」

「友梨奈...」

おずおずと背中に腕を回して抱きつくとしばらく抱き合っていた。

「...頬何回も叩いてごめん...」

「ううん。気にしてないから大丈夫」

「本当に...?」

「うん」

「一人で嫉妬して...ごめん」

「理佐、嫉妬してくれたの?」

「うん...」

「ふふっ」

「なんで笑うの」

「だって嫉妬された事ないもん。だから嬉しいなぁって」

「...友梨奈...好き」

「私も。理佐が好きだよ」

髪を梳かれながら言われて、微笑む姿がかっこよくて更に好きになってしまった。

首に腕を回して引き寄せると私からキスをした。

友梨奈は目を丸くするがすぐに微笑んで優しく唇を重ねてくれた。






その夜、私達は初めて肌と肌を重ねた。

















次の日、裸で寝ていた私が目を覚ますと友梨奈の姿がなかった。

休日だからどこか出かけてるのかな。

なんて思いながら服を着て、昨日友梨奈が作ってくれた豚汁とちょっとしたおかずを食べた。

食器類を洗って片付けながらソファーに寝そべると日頃の疲れが溜まっていたのかいつの間にか眠ってしまった。




「さー。理佐」

「ん...?」

友梨奈に起こされてテーブルに何かが置かれた事に気付いて目を擦りながら起き上がった。

「何それ」

「お弁当の余り物」

「え?お弁当の余り物?どういう事?」

上手く頭が回らずにいると友梨奈は隣に座ってきた。

「...本当は給料出るまで内緒にしときたかったけど...お弁当屋でバイト始めた」

「...そうだったんだ」

「厨房だけどね。金髪だから」

照れくさそうに呟く友梨奈を愛しいと思って私は思わず抱き締めた。

「お金なら気にしなくていいのに」

「そんな訳にはいかないよ。理佐の世話になってるのに」

「...友梨奈、ありがとう」

「んっ」

友梨奈は私の方を見て唇を突き出した。

それを見た私はふふっと笑ってその唇にキスをする。

満足そうに笑った友梨奈に微笑んで抱き締め合った。

















ーーーーーー
Reoさんありがとうございます(*´▽`*)
お読み下さりありがとうございました。