最愛が一泊二日で雑誌の撮影の為にキャリーケースに荷物を詰めていた。
私はベッドに座って枕を抱きながら彼女の背中を眺めていた。


「友梨奈、どうしたの」


「...眠れなくなる...」


「ふふっ。大袈裟だね」


「私にとっては死活問題なの」


ベッドにどさっと寝そべって口を曲げる。
準備が出来た理佐はベッドに座ってオレンジ色に染まった髪の部分を掻き上げた。


「良い色」


「...そうじゃなくて」


「一泊二日だから大丈夫でしょう?ちゃんとメッセするし、なんだったら電話もするから」


「...うん。待ってる」


「良い子」


理佐はそう言って私の唇にキスをして微笑んだ。
そしてもう行かなきゃと立ち上がってキャリーケースを持って玄関に向かった。
枕を抱いて後を追いかけると靴を履く理佐を見つめる。


「じゃあ友梨奈、良い子にしてるんだよ?」


「子供扱いしないで」


「子供だもん」


「もうっ」


理佐は私の手を引っ張って、行ってきますのキスをするとマスクをして出かけて行ってしまった。
閉まった扉を施錠して寝室に戻るとベッドに寝そべって抱いた枕に顔を埋めた。
理佐の匂いがする。
匂いを嗅いでいる内に私は眠ってしまった。





ーーーーーー
うっすらと目を開けて携帯の画面を見る。
小一時間しか眠ってない。
まだ寝ようとするが、眠れない。
私は理佐にメッセを送る。


(眠れない)


携帯から手を離して、枕を抱き締める。
すると携帯が鳴る。
私は怠そうに携帯を取ってメッセを見た。


(ばぶちゃん)


むうっとして、


(理佐嫌い)


そう送り携帯を手放して何かTVでも観ようとリビングに向かった。
冷蔵庫からサイダーを取ってソファーに座るとTVをつけた。
でもどこもニュース番組ばかりでつまらなくてTVを消して溜め息を吐き、サイダーのフタを開けて飲んだ。

寂しくてソファーに脚を乗せ、膝を抱えた。


理佐、早く帰ってきて。


ーーーーーー
一人でご飯を食べ、お風呂を早々に済ませて寝室に行くと放って置いた携帯に触れ理佐からメッセが来ているのに気が付いた。


(ご飯食べた?)


(食べた)


(良い子。帰ったらちゅーしてあげる)


理佐が口を突き出している写真を送ってきて私は自然と笑顔になったが、また(ばぶちゃん)と余計な言葉を送ってきたので(理佐のばか)と返信してベッドに横になった。


ダブルのベッドは広すぎて寂しさを増長させる。


寂しさを紛らわそうとイヤホンをして好きなバンドの曲を聴きながら目を閉じた。


ーーーーーー
再び目が覚めてしまい、携帯を見ると二時間半くらいしか寝てない事に気付いて盛大に溜め息を吐いた。
ちゃんと眠れないのがイライラする。

すると携帯の着信音が鳴ってスライドして電話に出た。


「もしもし」


「あ、起こしちゃった?」


「ついさっき起きたとこ」


「やっぱり眠れないのか」


「理佐...早く帰ってきて」


「寂しがり屋」


「理佐が居ないと私眠れない」


「分かったよ。早く帰れるようにするから」


「うん」


「じゃあまた明日ね」


「うん、おやすみ」


そう言って電話を切ると携帯を握りしめて枕を抱いて目を閉じる。
だけど眠れなくてリビングのソファーに向かい寝そべった。
眠くなるまでずっと携帯を弄る。
好きな音楽を聴いて飽きたら動画を観ての繰り返し。
そしたらいつの間にか眠っていた。


ーーーーーー
次の日、朝の5時に目が覚めて不眠気味の私にはしんどかった。
なんでこんなにも早くに目が覚めるの。
疲労感でいっぱいなんだけど。
なんて思いながらやっぱり寝室に戻ってベッドに横になった。
枕を抱いて再び寝ようと試みるが眠れずに不眠気味の私はぼーっとしていた。
すると鍵が開く音がして起き上がると最愛の人がキャリーケースを持って寝室に入ってくるのに思わず腕を伸ばした。


「ただいま」


そう言って抱き締めてくれた。


「帰って来るの早いじゃん」


「無理言って早めに帰らせてもらったの」


「ごめん、理佐」


「家にはばぶちゃんがいるからね」


「嫌い理佐」


「あーそういう事言うの?」


「嘘、大好き」


唇を重ね、額をくっつけて二人で微笑み合った。
そして理佐は部屋着に着替えると、ベッドに寝そべって、おいでと腕を広げ私は微笑んでその腕の中に収まり腕枕をしてもらった。
理佐の匂いを嗅いで目を閉じると自然とうとうとしてきて安心して寝息を立てて眠った。


どうやら私は理佐の腕枕じゃないと安眠出来ないみたいだ。


「可愛い、友梨奈」




キスをされても微動だにしなかった事は目が覚めてから教えられたのだった。









END
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お読み下さりありがとうございました。