てちが亡くなったその後のお話です。
苦手な方はバックしてください。
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夜中にインターホンが鳴り、寝ていた私はなんだと思って警戒しながら受話器を取った。
「はい」
「理佐、開けて」
「えっ...!?」
思わず玄関に走り鍵を開けた。
扉が開くと友梨奈が立っていた。
「お邪魔します」
と言って中に入る彼女。
彼女は先月亡くなったのになんで?
「理佐、なに固まってるの?」
「ごめん...」
リビングに行くと友梨奈はいつも座ってたマットの上に座る。
私は友梨奈の好きなサイダーを出し、自分の分の紅茶を出してテーブルに置いた。
「理佐、私の好み覚えててくれたんだ」
「当たり前でしょ」
友梨奈の隣に座って本物なのか確かめた。
手を握るとひんやりしていた。
「なんで生きてるの?」
「んふふっ。生きてないよ?毎日理佐が泣くから来たの」
確かに毎日泣いてる。
一人歩く影に貴女を求めてるいつも。
忘れられるものなんてない。
覚めないで欲しい夢も見た。
「理佐、いい加減私の事忘れなよ」
「簡単に言わないで」
「次の人見つけて幸せになって」
友梨奈の紡ぐ言葉に目の前が涙で滲む。
思わず友梨奈を抱き締めた。
「なんでそんな事言うのっ。怒るよそれ以上言ったらっ」
「だって見てて辛いから」
「っ...友梨奈の口から、そんな...っ、そんな言葉聞きたくないっ」
友梨奈を掻き抱いて涙が溢れた。
友梨奈は私を抱き締め、髪を撫でる。
「...もっと理佐といたかったよ。遊園地とか美味しいパンケーキ屋さんに行きたかった」
「だったらなんでっ」
「...好きな人の泣いてる姿、見たくないの」
身体を離して俯く友梨奈の両頬を包んで上げる。
友梨奈も泣いていた。
私は止めどなく涙を流して、友梨奈にキスをした。
何度も何度も唇を触れ合わせて額をつけ合った。
吐息を吐いてぽたぽたと涙でパジャマのズボンを濡らす。
「お願いだから...忘れなよなんて...言わないで」
「...理佐」
「友梨奈とっ、恋をしたから、私っ、幸せだった」
「...私もそうだよ。理佐と恋をしたから、幸せに逝けた」
「友梨奈のばかっ、ばかっ」
友梨奈を責めて弱々しく肩を叩く。
責めた所で何も変わらないのに。
「私も連れていってっ」
「...理佐」
「友梨奈のいない毎日なんて要らないっ。いっそ私の事連れていって」
自分だって分かってる。
そんな事出来る訳がないって。
でもね、これが本音なの。
恋しさも愛しさも全て友梨奈の為にあるの。
貴女が思う以上に大好きで大好きで。
「...理佐は、私が生きれなかった分まで生きて」
「やだっ、友梨奈と離れるの、やだっ」
「...理佐」
まるで駄々をこねる子供みたいに首を振った。
私を呼ぶ声が震えている。
私達二人とも泣きながらもう一度唇を重ねて息が続くまでキスをした。
「...もう泣かないで理佐」
「友梨奈だって泣かないで」
「...ずっと好きだよ、理佐」
「...ずるいよ...っ私、だって好きで好きで、未だに好き、」
後頭部を引き寄せられて唇を奪われた。
それが更に涙を誘い頬を濡らす。
ぎゅっと友梨奈の服を握って唇を押し当てる。
ゆっくり顔が離れると友梨奈もまだ泣いていた。
「私も本当は理佐を連れて行きたいよ」
「だったら、」
「でも、それは私のエゴだから」
「エゴだっていいっ、もう離れたくないっ」
「理佐、ごめん。出来ないよ」
「友梨奈っ、」
「...泣きすぎ、理佐」
友梨奈は私をそっと抱き締めた。
髪に指を差し込んでまるで包み込む様に。
「友梨奈だって」
首筋に顔を埋めて抱きついた。
「...私はずっと理佐の側にいるから。私の骨あるでしょ?」
「...ん」
「理佐、ありがとうね。恋人になってくれて」
「...私だって、ありがとう」
身体を離すと友梨奈は涙を拭ってサイダーのフタを開けて飲んだ。
私も紅茶を飲んだ。
「あーあ、もっと生きたかった」
「友梨奈...」
「もっと理佐といたかった」
「...」
「もっともっと一緒に思い出作りたかった!」
「...友梨奈、また泣かせる気?」
「理佐は泣き虫だから」
ふふっと笑った彼女をこの目で焼き付けた。
サイダーを半分飲んだ彼女はフタを閉め、
「...もう行かなきゃ」
「友梨奈っ」
立ち上がった友梨奈の背中に抱きついた。
「理佐...」
私の手を優しく解くと向き合って抱き締めてきた。
「離したくないなぁ」
「...でも行っちゃうんでしょ...」
「...うん、もう夜明けが近いから...」
「...最後にキス...して」
友梨奈は切なく微笑んで私の両頬を包み込むと大切そうにゆっくりとキスをしてくれた。
「...じゃあね理佐」
名残り惜しそうに私の頬を撫でて玄関に向かった。
私は後を追って友梨奈が靴を履く姿を見つめるしか出来なかった。
「天国で見守ってるからね」
「うん...っ」
扉が開いてパタンッと閉まるとその場にしゃがみ込んだ。
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目が覚めると私は泣いていた。
ベッドから起き上がり、リビングに行くとテーブルの上には飲みかけのサイダーと私の紅茶が置いてあった。
「...友梨奈...いつも残すんだから...っ」
友梨奈の座ってた場所に座って飲みかけのサイダーを開けて泣きながら飲んだ。
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お読み下さりありがとうございました。