友梨奈side
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手を絡めて握る理佐の手を見つめながらとことこと歩く。
学校への道のりを歩いていくと行き交う人を避けて理佐の側に寄った。
「大丈夫?」
「...怖い」
「私がいるから大丈夫」
眉尻を下げて理佐を見つめると優しく微笑んでくれた。
「そんな顔しないの」
「っ...」
緊張して声が出なくなってきた。
喉がキューッとなって、また喋れなくなるのかと思った。
学校が見えて来ると、こばが校門で立っていた。
こばは私達を発見すると駆け寄ってきた。
「おはよう理佐、てち」
「おはようこば。...友梨奈」
「...お、はよう」
「!てち、声出せるようになったの?」
髪をわしゃわしゃと撫でられて恥ずかしくて目を伏せた。
「二人とも手握って。いつからそんなに仲良くなったの?」
「私達付き合う事になったの」
「え?!ほんと?」
「理佐...」
熱が顔に集中する。
「応援する。てかそうなるかなぁって思ってた」
「こばならそう言ってくれると思った」
「こば、ありがとう」
「てち可愛い〜」
抱き締められて私は目を丸くした。
「ちょっとこば、友梨奈は私の」
「いいじゃんちょっとくらい」
「ほら、学校行くよ」
こばは私から離れると焼きもちを妬いている理佐にクスクス笑う。
理佐に手を引かれて玄関口に着くと下駄箱で上履きに履き替える。
階段を上り、三人で教室に入ると好奇の視線が私に注がれる。
「見てんじゃねーよ」
理佐が言うとクラスメイト達は視線を外した。
「理佐、あ、りがとう」
か細い声で呟くと理佐は柔らかく微笑んで頷いた。
席に着くとバッグを端に掛ける。
「てち、こばって呼んで?」
「っ、こば...」
「てちの声って低いんだね」
「でも可愛いでしょ」
「っ...理佐」
「あ、てち顔赤い」
私は自分の両頬を包んだ。
「可愛い〜」
「こば、友梨奈は私のだから」
「理佐...っ」
更に赤くなった顔を隠して机に突っ伏した。
理佐、大胆過ぎるよ。
起き上がり、机の下で手を弄っていると理佐は私を見つめてふふっと笑う。
恨めしそうに理佐を見つめ返した。
「友梨奈、なあに?」
「理佐のばか」
「あ、ばかって言ったね」
私は身体を擽られると思ってサッと理佐と距離を置いた。
その反応にクスクスと理佐が笑った。
「擽らないから元に座って?」
「...うん」
元に座った私を満足そうに見つめてくる。
周りの視線が気になってボードをバッグから出すと(理佐好き)と書いてそれを伏せて理佐に渡す。
理佐はボードをひっくり返し、書かれた文字を見ると嬉しそうに微笑んでペン貸して、と言われて手渡した。
文字を消して何か書いてる。
ボードとペンを返され、文字を見る。
(私も好き)
にやけてしまいそうになるのを堪えて理佐を見た。
ウィンクをされて私はポカーンと口を開け、頭を振って我に返った。
理佐はそんな私を見て笑う。
理佐の文字は消さずにバッグにしまった。
すると担任の菅井先生が扉を開けて教壇に立った。
「みんなおはよー」
クラスメイト達はみんな各々挨拶をする。
「点呼とりますっ」
点呼が終わるとHRの時間になった。
午前中の授業が終わって、お弁当を抱えて理佐とこばと一緒に屋上に行った。
天気が良くてとっても過ごしやすい日和だった。
日除けになってる所に三人で座ってお弁当を広げ、食べ始める。
「理佐、美味しい」
「ありがとう」
「え?なんでおかず一緒なの?」
「今友梨奈私の家に泊まってるから。ね?」
「うん」
「じゃあお風呂とか寝る時一緒?」
「当たり前じゃん。彼女だもん」
「そっか。でも良かったね。てちの声戻って」
「ありがとう、こば」
「可愛い〜」
恥ずかしそうにはにかんでご飯を食べる。
「あ、次の時間体育あるね」
「友梨奈、体操着バッグに入ったままだっけ」
「うん」
「トイレで着替える?」
「...うん」
「分かった。待ってるからね」
「てち、私も待ってるよ」
理解してくれる二人が居て良かった。
ご飯を食べ終わるとお弁当を片付け、みんなでたわいもない話をして盛り上がった。
チャイムが鳴ってみんなで屋上から室内に入る。
教室に戻ると早速体操着を持ってトイレに向かった。
トイレで着替えていると友梨奈ーと理佐が私の名前を呼ぶ。
「はーい」
「大丈夫?」
「うん」
着替えが終わると制服を持って鍵を開け理佐とこばに近付く。
「制服置いて一緒に行こ」
「うん」
教室に戻り、制服を机の上に置いて三人で外に出た。
体育も無事に終わり、トイレで着替えて制服を着ると理佐が待っていてくれた。
「またネクタイ曲がってる」
理佐に直してもらい、ありがとうと言うとうんと頷く理佐。
教室に行って午後の授業をそつなくこなし、放課後こばと別れて理佐と一緒に帰った。
「友梨奈どうする?もう帰る?」
「うん。理佐、また泊まりに行ってもいい?」
「当たり前でしょ。いつでも待ってるよ」
「ありがとう」
「じゃあ下着とか置いとくね。友梨奈がいつでも泊まっていけるように」
「うん」
理佐の家に着くとキャリーケースを閉じて自宅に帰る準備をした。
「送ってくよ」
「ありがとう、理佐」
微笑んで言うと理佐も微笑み返してくれた。
家を出て理佐は鍵を締めるとキャリーケースを引いてくれた。
優しくて大好きだなぁ。
しばらくして自宅に着くと理佐はキャリーケースを渡して頬にキスをした。
人がまばらにいたけど、恥ずかしくて俯いた。
「じゃあね友梨奈」
手を振る彼女に振り返して家の鍵を開けて中に入って戸締まりをした。
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