友梨奈side
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夜は怖い。
私を暗闇のどん底につき落とすから。
でも今日は違った。
理佐が抱き締めて寝てくれたから。
安心して眠れた。

朝、アラームが鳴る前に目が覚める。
理佐の顔が目の前にあった。
綺麗な寝顔...。
どうして私を好きになってくれたんだろう。
醜い私なのに。
目を潤ませていると、理佐が目を覚ました。

「...友梨奈...?どうしたの?」

私の涙に気付いて理佐は涙に触れて拭った。

「っ...」

首を振って微笑むと「無理しないの」と言われて抱き締められた。
更に涙が溢れて止まらない。
肩を震わせて泣いているとぎゅっと強く抱いてくれた。

「友梨奈、辛い?」
「っ...」

首を左右に振って口パクで嬉しいのと伝えた。

「どうして?」

理佐の手の平に(理佐がこんな私を好きになってくれたから)と書く。

「友梨奈...」

(私、愛情に飢えてたの。誰も助けてくれなかったから)

「うん」

(でも理佐が愛情をくれて幸せ)

「うん。大好きだよ」

(ありがとう理佐)

ふふっと微笑んで見つめると、理佐はキスをしてきた。

「私ね、友梨奈を運命に感じたの。同じ思いをしてきたから。だから友梨奈の辛さも苦しみも分かる」

ぎゅっと抱き締めて呟いた理佐を慰める様に抱きついた。
やがて携帯のアラームが鳴り、「起きて準備しよっか」と言われて理佐と一緒に起き上がった。
洗面台に向かい、交互に顔を洗い歯磨きをする。
歯を磨き終わると二人で制服を着た。

「友梨奈、私の靴下たくさんあるからこれ履いていいよ」

どうしようか困ってたから助かった。
理佐に手を合わせて(ありがとう)と伝えると学校指定の靴下を履く。

理佐は自分のと私のお弁当箱を洗いにキッチンに行った。
私はどうしたらいいのか分からず、とりあえずソファーに座ってボードに字を書いて理佐に近付く。
(理佐、私なにしたらいい?)
ボードを見た理佐はふふっと微笑んで「友梨奈は休んでて。あ、昨日のジュース冷蔵庫にあるからそれ飲んで待っててくださいー」と言われて冷蔵庫を開け、私の飲みかけのサイダーを取ってソファーに座った。
プシュッとフタを開けてごくごくと飲む。

「友梨奈、今日ご飯購買でいい?」

不意に尋ねられてこくこく頷く。

「あーあ昨日作っておけば良かったなー」

字をまた書いた。
(ごめんね、私のせいで)

「もう、違うのー」

食パンをトースターで焼いてテーブルに並べる。

「友梨奈マーガリン付ける?」

頷くと冷蔵庫から出してくれた。

(ありがとう)と伝えると「なんで友梨奈そんなに可愛いの」マットに座った私を見て呟いた。
(可愛くないよ)隣に座る理佐を見つめてボードを見せる。

「自覚してないから余計に可愛い」

頬に口付けをされて恥ずかしくてマーガリンを塗ったトーストをかじる。
理佐もトーストを食べだした。
黙々と食べていると理佐がジーッと見つめる。
小首を傾げて理佐を見つめ返す。

「友梨奈、守ってあげるからね」

こくんと頷いてはにかむ。
トーストを食べ終えると手を合わせた。
よく食べました。と頭を撫でられて微笑んだ。
理佐も食べ終わると食器類を持って洗いにシンクに行く。
私もサイダーのフタを閉めてマーガリンと一緒に冷蔵庫に閉まった。

「学校行こうか」

洗い物を終えた理佐は手を拭き、寝室に向かうのでボードを持って付いていった。
バッグにボードを入れてブレザーを着るとバッグを肩に掛ける。
あ、携帯忘れるとこだった。
ポケットの中に入れて理佐を待つ。

「よし、行こう」

手を握ってきた理佐を嬉しく思い、靴を履いて二人で家を出て理佐が鍵を締めた。
学校へと歩きだすと理佐の手を強く握った。
でも昨日の事が脳裏に過ぎる。
待ち伏せされていないかとか思うと自然と俯く。

「友梨奈...?」
「っ...」

辺りを見渡すと理佐が気付いた。

「大丈夫。守るって言ったでしょ?」

こくんと頷き、小さく微笑む。
とことこと付いていって学校が見えてくると安心して息を吐いた。

「友梨奈」

背後から声がした。
聞き覚えのある声。身体が震え、振り向けずにいた。
理佐が振り返ると男が笑った。
理佐の握る手が強くなった。

「なんですか?警察呼びますよ」
「お前に用はないんだよ。なあ友梨奈戻って来いよ」

理佐は携帯をポケットから出して110番した。
すると理佐の手を離されて引っ張られ背後から男に抱き締められた。

「友梨奈がいないとつまらないんだよ」

(嫌っ、嫌っ!)

首を振って涙が溢れ理佐に手を伸ばす。
理佐は私の手を無理矢理引っ張り男から剥がす。

「なんだお前、やろうってのか」
「友梨奈をDVした男なんて警察に捕まればいい」
「呼べよ。相手してやるから」
「もう来てる。馬鹿じゃないの?」

理佐はふっと鼻で笑い、サイレンの音が聞こえる。
パトカーが到着すると警察官が降りて来て、理佐が説明した。

「DV受けてたのはこの子です」
「じゃああの男の人から事情聴取するね」
「あとこの子DVのせいで声が出せないんです」
「そんなに酷かったんだね。もう泣かなくていいよ?」

女性警官は私を慰めてくれた。

「連絡先私の携帯で良いですか?」
「はい、番号教えてくれるかな」

理佐は自分の携帯を教えてると男は他の警察官を殴った。
公務執行妨害で手錠をはめられた男はパトカーに乗せられた。

「じゃあ相手から詳しい事は署で聞くね」

女性警官はパトカーに乗り込むと走り去って行った。

「友梨奈大丈夫?」
「っ...」

こくこく頷いて涙を拭う。
ほっとした。理佐は守ってくれた。

「行こうか友梨奈」

頷いて理佐の手を握って学校へと向かった。











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お読み下さりありがとうございました。