朝、TVを付けると平手友梨奈脱退というニュースがやっていた。
恋人でもある友梨奈から何も聞かされていなくて、動揺して携帯を取って電話をした。

出ない。

何回掛けても出てくれない。

私は部屋着のまま、友梨奈の部屋へと走った。

インターホンを鳴らすが一向に出てくれない。

私は扉を叩いて名前を呼んだ。
するとようやく鍵が開いた。
ドアを開けると憔悴しきった友梨奈が立っていた。
思わず抱き締めてその場に座った。

「なんで言ってくれなかったの」
「言ったら引き止めるでしょう?」
「当たり前じゃん!」

涙が溢れて止まらない。

「もう終わりにしたかったの」
「だからって脱退ってっ、友梨奈の馬鹿っ」
「ごめんね、理佐」
「馬鹿っ!馬鹿っ!!」

両頬を包まれて友梨奈を涙目で見つめる。

「これからは理佐が欅坂を守っていって」
「無理だよっ、友梨奈がいなくちゃっ」
「大丈夫。理佐なら出来る」
「友梨奈っ...」

ぽろぽろと涙が溢れる。
友梨奈はその涙に口付ける。

「別れないよね...?」
「理佐が別れないなら私は別れない」
「別れないよっ...別れたくないっ...」
「...ん。私も別れたくない」

友梨奈が精神的にぼろぼろだって事分かってた。
だけど私は何も出来ず見守る事しか出来なかった。
友梨奈を責めた事ところで何も変わらないのも分かってた。

「部屋、今週中に引っ越すから」
「教えてよ。どこに引っ越したか」
「うん。当たり前じゃん」

やっと私の大好きな笑顔で笑ってくれた。

「理佐...」

両頬を包まれたまま友梨奈は私にキスをした。
友梨奈の閉じた目から涙が溢れたのを私はただ見つめる。

ゆっくりと離され私達はきつく抱き締め合った。

貴女らしい幕の引き方。

卒業ではなく脱退を選んだ貴女。

貴女には幸せな道であって欲しい。

迷った時は私を呼んで。

真っ先に駆け付けるから。





END
ーーーーーー
お読み下さりありがとうございました!