「友梨奈ー」
理佐の声が聞こえる。
私はうっすら目を開けて布団の上から腰を跨いで座っている理佐を見上げた。
「遅刻するよ?」
「あと五分...」
「だーめ。起きて」
顔中にキスの嵐。
「うーん」
「早く起きて」
手を引っ張られ起き上がると目を擦って欠伸をする。
太腿に座っている理佐を押し倒すと唇を重ねた。
「...理佐パンツ丸見え」
「え?!」
もうバカ!って言われて楽しげに笑った。
ベッドから降りて私服に着替え顔を洗いに洗面台へと向かう。
理佐はもうすでにご飯の支度をし終わり座椅子に座っていた。
「薬塗った?」
「うん。いただきます」
今日のお弁当のおかずの残りを食べる。
うん美味しい。
やっぱり理佐の手料理は最高。
ふふっと微笑んでいると理佐は不思議そうに見つめながらご飯を食べてる。
ぱくぱくと食べてお味噌汁を飲む。
いつも優しい味。
あっという間に食べ終えて手を合わせ「ごちそうさまでした」と呟く。
理佐も食べ終わり、食器類を片付けようとしたので受け取り、「理佐は座ってて」と言って後片付けをした。
洗い物を洗ってカゴに置いていくと手を拭く。
「友梨奈ありがとう」
「どういたしまして」
眼帯を着けて、テーブルに置かれていたお弁当箱を鞄に入れた。
「友梨奈準備出来た?」
「うん、出来たよ」
フードを被り、マフラーをして理佐と共に玄関に向かう。
スニーカーを履いて外に出ると理佐は家の鍵を締めた。
手を絡めて握り、今日も寒いね。なんて言いながら学校へと歩く。
「今日も体育館?」
「うん」
「待ってるね」
ああ、理佐とキスをしたいなぁ。
そう思っていると元気な声が響いてきた。
「てちーー理佐ーー!!!」
ねるが駆け寄ってきて私の手を握る。
「おはようー」
私と理佐はおはようとハモった。
タイミングよく息が合った私達はクスクス笑った。
「てち、風邪は良くなったと?」
「うん。ありがとう心配してくれて」
微笑んで呟くとねるは嬉しそうにはにかんだ。
校門に着くと他の生徒達は私達三人が手を繋いでいるのを見慣れた様だった。
「じゃあね、友梨奈、ねる」
「ん。また後でね」
玄関口で手を離して振り、一年の下駄箱に向かう。
「そういえばプリント持ってきた?」
上履きに履き替えているとねるが尋ねてきた。
「うん。ありがとうね」
お礼を言って微笑んでねると一緒に教室へと向かった。
机に着くと鞄を端に掛けマフラーを取って置く。
先生が来るまでずっとねると談笑していた。
しばらくして、先生が「おはよう」と言いながら教壇に立った。
「平手、風邪は良くなったか?」
「はい。ご心配おかけしました」
「よーし、じゃあ点呼を取るぞー」
午前中の授業を受け終えてねると一緒にお弁当を抱えて体育館に走った。
相変わらずねるは足が速くて、追いつくのに必死だった。
「ねるっ...野生児」
「あー、野生児って言ったー」
「だって、足速いから」
苦笑して体育館の中に入ると理佐はまだ来ていなかった。
少し経ってから理佐がやってきた。
「ごめんねー。友達に捕まってた」
「大丈夫だよ。お弁当食べよう?」
理佐は隣に座ってお弁当を広げ、みんなで食べ始める。
「ねえ、だいぶ前にさてち、自分は化け物って言ったの覚えてる?」
「っ...」
思わずシーンと静まり返った。
「目の色が違うだけで化け物な訳ないよ」
「...ねる...」
「理佐はもう何回も見てるんでしょ?」
「うん...」
「でもみんな気味悪がるから、だから隠してるの」
「綺麗だったのになー」
「ありがとう、ねる」
一瞬自分の正体がバレたのかと思って理佐を見つめた。
理佐はゆっくり頷いて箸を動かした。
私もお弁当を食べて気を紛らす。
ねるは普通にお弁当を食べていた。
みんな食べ終わるとお弁当箱を片付けてたわいもない話をしていると、チャイムが鳴った。
「ねる、また先に行ってて」
「うん分かった」
私のお弁当箱まで持っていってくれた。
理佐と二人きりになると「ヒヤヒヤしたね」と微笑み合った。
垂れ幕の裏に理佐は私を連れて行くと、「飲んでいいよ」と言ってくれた。
私は白い首筋を見つめ、吸血発作が出ると理佐の首筋に咬みついて血を吸った。
発作が無くなると牙を抜いて理佐を抱きしめた。
「美味しかった...ありがとう理佐」
「良いよこれくらい...あ、友梨奈...」
口端から血が垂れているのに気付いた理佐はぺろっと舐め取った。
「これのどこが甘いのかな...」
「私しか分からないの」
ふふっと微笑んで身体を離すと理佐と共に体育館を後にした。
廊下で手を振って離れると私は教室に向かった。
先生はまだ来ておらず、席に座るとねるにお弁当箱のお礼を言った。
「良いよーそんなの」
「ねるは優しいね」
てへ、と恥ずかしそうに笑うねるにつられて私も笑った。
お弁当箱を鞄の中に入れて次の授業の準備をした。
プリントは帰りに先生に渡そう。
すると先生が入って来て授業が始まった。
午後の授業も終わり、放課後私は職員室に行った。
先生が居て、プリントを手渡すと先生達に渡しておくな、と言われ頭を下げて職員室を出て教室に戻った。
こんな寒い中陸上部が走っていた。
理佐も走っていて窓越しから応援した。
机に座ってマフラーをすると机に突っ伏す。
明後日、理佐と結婚式をあげるなんて想像もしていなかった。
早く結婚式あげたいな。なんて思いながらいつの間にか寝てしまった。
温かい手が頬に触れて私は目を覚ました。
「お待たせ」
「ん」
手に擦り寄って身体を起こした。
「帰ろう」
私は頷いて立ち上がり、鞄を持って理佐と一緒に教室を出た。
上履きを履き替えて玄関口で理佐を待つと理佐がやってきた。
「今日は何食べようか」
「なんでもいい。理佐の手料理だったら」
「じゃあオムライス」
「やった」
喜びながら手を握った。
そして私達は仲良く話合いながら家路を歩いた。
ーーーーーー