「そう言えば今日血飲んでないね」
「あ、そうだった。薬もいらなかったし」
お風呂に浸かりながらはたと思い出した。
「お昼に大体飲みたくなるけど、今日は寝てたからかな...」
理佐の太腿に跨がりながら呟いた。
理佐は腰に腕を回してる。
「飲む?今」
「いいの?」
「当たり前じゃん」
「じゃあお言葉に甘えて...」
目を閉じて血を想像すると吸血発作が出た。
紅蓮の瞳になり歯が伸びて牙になると理佐の左の首筋に咬みついた。
甘い血を吸い、止められなくなりそうな所で牙を抜くと目と牙が元に戻っていく。
口端から血が垂れ、それを理佐が舐めた。
「血の味...」
「私にとっては甘い血だよ。蜂蜜みたいに」
唇にキスをして微笑むとムギュッと抱きしめられた。
「友梨奈可愛すぎてどうにかなっちゃう」
「えーなにそれ」
クスクス笑って抱きしめ合う。
「もう上がろう?」
「うん」
浴室を出てタオルで身体を拭き、ショーツを穿いて新しい寝間着に着替える。
理佐も寝間着を着て、一緒にスキンケアをする。
それが終わると、髪の毛をそのままにして冷蔵庫からサイダーを出して蓋を開け飲んだ。
理佐はドライヤーで髪を乾かしている。
その間理佐が買ってる雑誌を手に取って座椅子に座る。
理佐って私と同じ黒が好きなんだよなー。
スカートなんて制服姿でしか見たこと無い。
興味無さげにページをパラパラめくる。
つまんない。
雑誌を片付けて再びサイダーをぐびぐびと飲んだ。
髪を乾かしてる音が止まり、理佐が私の髪を乾かそうとドライヤーを片手にやってきた。
「友梨奈、髪乾かすよー」
「はーい」
待ってましたと言わんばかりににっこり微笑む。
ドライヤーのコンセントをさして理佐はソファーに座って私の髪の毛を乾かしていく。
あー、理佐の手が気持ちいい。
目を閉じて感じる優しい手つき。
「寝ちゃだめだよー」
「うーん」
素足をぱたぱた動かして、髪の毛が乾くのを待つ。
しばらくするとドライヤーの音が止まった。
「はい、終わったよ」
「理佐ありがとう」
「はいね」
理佐がドライヤーを片付けに行くと私はキッチンに立って2食分ある梅粥を温めた。
水分量が足りないと思い水を入れて調整した。
「友梨奈どうしたの」
「ん?お粥食べようと思って今水足したとこ」
「友梨奈もキッチンに立つ事あるんだ」
「あーなにそれ。一応柊さんのお手伝いしてたんですー」
唇を尖らせると「可愛い〜」と言われた。
むうっと頬を膨らませる。
「あ、友梨奈がおこだ」
理佐はクスクス笑いながらその頬に口付けてきた。
ふしゅーと萎んだ頬を理佐が撫でる。
ふふっと顔が綻んで、固まっているお粥をほぐす。
「理佐は?なに食べる?」
「お粥二人分あるね。私もお粥食べようかな」
「ん、分かった」
理佐は冷蔵庫を開けて卵豆腐を出した。
「賞味期限...大丈夫だね」
器に卵豆腐を容器から出してタレをかける。
それをテーブルに置いてスプーンを用意する。
「理佐もうお粥いいよ」
「はーい」
お椀にお粥を入れて理佐に手渡す。
空いた土鍋を鍋掴みで掴んで水にさらす。
定位置に座ると理佐も隣に座った。
「いただきます」
と呟き、スプーンですくったお粥に息を吹きかけて口に入れる。
「あっふ」
「友梨奈猫舌なんだから」
クスクス笑われた。
吹きが足りないのか。
ふーふーとしっかり息を吹きかけて口に入れる。
「んー」
「どうしたの?」
「お粥が美味しくて」
「ありがとう」
にっこり微笑んで卵豆腐も食べた。
その喉越しの良さにあっという間に食べ終えた。
「理佐、これってなんて言うの?」
「これ?卵豆腐っていうの」
「卵豆腐...美味しいねこれ」
「気に入った?」
「うん」
お粥も平らげると理佐は「えらいね」と髪を撫でてくれた。
理佐の方も食べ終えると「ごちそうさまでした」と一緒に手を合わせた。
「明日のお弁当何にしようかなぁ」
私の方を見つめ髪を弄りながら理佐が呟く。
「豚の生姜焼き」
「あーそれもいいね」
「あと卵焼き」
「友梨奈好きだね、卵焼き」
「理佐のだから好きなんだよ」
柔らかく微笑むと理佐が頬を赤くした。
それからゆっくり顔を近付けて頬に口付けてきた。
「ん?どうしたの?」
「かっこいいから友梨奈が」
「ふはっ。どこが」
「全て」
「全て?えー」
クスクス笑って言うと空いた食器類を片付けようとしている理佐に手伝う。
「友梨奈は座ってていいよ」
「じゃあ理佐にくっつく」
腰に腕を回して背中に顔を寄せた。
理佐の温かい温もりにぽあんと幸せを感じる。
洗い物を終えてタオルで手を拭く理佐に意地でも離れない。
「このまま歯磨きしようか」
まるでムカデ競走してるみたいと理佐は思った。
洗面台に着くと私は理佐から身体を離して、一緒に歯を磨いた。
歯磨きが終わると理佐にまた抱きつく。
「友梨奈の甘えん坊」
「ふふっ」
「はいベッドに行くよー」と言われて理佐の腰を抱いたままペタペタとついていく。
手を離して先にベッドに横たわると理佐も後から続いて横たわった。
「理佐」
「ん?」
起き上がり、唇を奪った。
理佐は何事かと目を丸くした。
見つめ合ったまま角度を変えて何度も何度も噛み付く様な口付けを繰り返した。
「ふっ、ん...っ」
飲みきれない唾液を口端から垂らす理佐に目を細め、ゆっくり唇を離し垂れた唾液を舐め取った。
「ゆ、友梨奈...」
満足げに微笑んだ私を理佐は恥ずかしそうに見上げる。
耳が赤くなってる。
理佐の腕に頭を乗せてくっ付いた。
「もう...悪戯っ子」
ぎゅっと抱きしめて吐息を吐いた理佐。
「やだった?」
「やなわけないじゃん。ただ驚いただけ」
「良かった」
擦り寄ってクスクス笑った。
「これ以上カッコよくならないで...」
なんだか理佐を悩ませてる?
「大丈夫だよ。私達結婚してるんだから」
「そうだけど...不安」
そんな不安を取り除く様に強く抱きしめた。
「理佐、おやすみ」
「おやすみ、友梨奈」
理佐の良い匂いを嗅ぎながら目を閉じた。
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