翌朝、目を覚ますとまだ身体の怠さが残っていた。

「あ、友梨奈起きた?」
「うん...」
「熱計ってみようか」

理佐は体温計を持ってきて私の脇に挟む。

「わ、冷えピタシート干からびてる」

額から取ってゴミ箱に捨てた。

「理佐ぁ...」
「甘えん坊友梨奈だ」
「うーん...」

ベッドに座った理佐の腰に体温計を挟んでない腕でぎゅっと抱きついた。

「バブちゃんどうしたの」
「ゔー...」

言い返す余裕すら今の私にはない。
すると体温計が鳴り、理佐が取り出してみた。
38度という数字に理佐は驚く。

「ちょっと下がったけど、今日は学校お休みだね...」
「やだ...」
「わがまま言わないの」
「やーだ」
「そんなわがまま言う子には、」

ちゅっと唇にキスをされた。

「...今日は我慢して?」
「...はい」
「ん。素直で良い子」

理佐はほっぺたにもキスをしてくれて微笑んだ。

「お粥作ってあるから食べれたら食べてね?」
「...ふぁーい」
「あ、あと薬ちゃんと飲むんだよ?」
「んー...行ってらっしゃい」
「行ってきますっ」

理佐は冷蔵庫から冷えピタシートを取り出して、フィルムを剥がすとまた私の額に貼る。
マフラーをして出ていく理佐に寂しさを思いながら鍵がカチャンッと締まる音に更に寂しくなった。
何にも音のしない部屋。
熱のせいで目がとろんとする。
枕から理佐の匂いがして、抱きしめて目を閉じた。

ーーーーーー
理佐は隣にいない友梨奈の事を考えながら学校への道のりを歩いていた。
一人は寂しいなぁ。なんて思ってるとねるが走ってやってきた。

「あれ?てちは?」
「昨日熱出しちゃってお休み」
「なんだー残念...」

と言いながら理佐の手を繋ぐねる。

「なんで手繋いでるの」
「いや、寂しいかなぁと思って」
「...」
「てち早く良くなるといいね」
「...うん」
「今日体育館でいいよね?」
「うん」

校門を通り学校に到着するとねると手を離し、理佐は3年の下駄箱に向かった。
上履きに履き替える階段を上り、教室に着いた。
仲の良い友達とおはようを言い合いながら席に着いた。
頭の中は友梨奈でいっぱいだった。
携帯を取り出して友梨奈にメッセージを送った。

(友梨奈お粥食べてね)

既読にならず溜め息を溢した。
きっと辛いんだろうなぁ。
頬杖をつきながらずっと友梨奈の事を考えていた。
すると担任の先生が入って教壇に立った。
そして点呼が始まった。


ーーーーーー
午前中の授業が終わり、やっとお昼休憩になって理佐は体育館に走った。
今日はねるが早く着いていた。

「理佐ー」
「お待たせ」

隣に座ってお弁当を広げる。

「てちがいないから寂しいね」
「...うん」
「理佐、今てちの事で頭いっぱいでしょ」
「うん。心配だから」

と携帯が震え理佐はすぐに確認した。

(お粥食べた。あと薬も飲んだよ)

嬉しくなって返信した。

(身体しんどくない?大丈夫?)

すぐ既読になって、

(大丈夫。理佐、帰ってきたらギュッてして)

甘えん坊友梨奈だ。とクスクス笑うとねるがキョトンとしてる。

(いいよ。早く治してね)

「どうしたとー?」
「甘えん坊になってる」
「へーあのてちが」

ねるはにこにこ笑いながらお弁当を食べている。
理佐もお弁当を食べながらポケットに携帯を入れた。

「あ、テストのプリント預かってるから放課後取りに来てね」
「分かった」

しばらくしてからお弁当を食べ終えるとねるもちょうど食べ終えた。

時間があったので理佐は友梨奈の事を聞いた。

「てち頭いいよー。先生が驚くくらい」
「そうなんだ」

知らなかった。
勉強してる姿見たことないもの。

ちょうどチャイムが鳴り、お弁当箱を片付けて立ち上がってねると一緒に体育館を出て別れた。
教室に向かうと先生はまだ来ていなくてほっとしてお弁当箱を鞄に入れた。
と、タイミングよく先生が来て教科書とノートを机から出した。


ーーーーーー
午後の授業も終えて放課後ねると友梨奈の教室に向かった。

「ねるー」
「あ、理佐っ」

数枚のプリントをねるが差し出す。
それを受け取るとお礼を言い、鞄に入れ手を振って下駄箱に向かった。
靴に履き替えて小走りになりながら家路を急いだ。

家に着くと鍵を開けて中に入って鍵を閉めた。
リビングに行くと友梨奈は寝ていた。

また冷えピタシートが干からびている。

額から剥がされると目をうっすら開ける。

「理佐...」
「ただいま、友梨奈」

ギュッと抱きしめ嬉しくなった理佐は抱きしめ返してきた。

「うーん理佐...」
「熱は?」

首筋に手を当てられだいぶ熱は下がったと思う。
身体を離すと、

「熱測ってみよう」

私の服に手を入れて体温計を脇に挟む。

「友梨奈えらいね。お粥も薬も飲んで」
「ん...ちょっとだるかったけど」

わしゃわしゃと髪を撫でられて目を細めた。
体温計が鳴ると、理佐は取り出して画面を見て37度に下がっていた。

「良かった。微熱になった」
「本当?」
「友梨奈ー」

頬にぐりぐりと顔を擦らせる理佐はいいが、バシバシと理佐のマフラーが顔に当たる。

「り、理佐落ち着いて」
「ん?なに?」
「さっきから毛が顔に当たる...」
「あ、ごめん」

身体を離すとマフラーを取って鞄を置き、理佐はまた抱きついてきた。

ひんやりした頬が心地よくて目を閉じて抱きしめ返す。

「友梨奈汗かいたでしょ。お風呂入れる?」
「うん。一緒に入ろう?」
「お湯張りしてくるから待ってて」

パタパタと浴室に向かった理佐。
私は起き上がり、座椅子に座った。
明日は学校行けるな。と思いながらゴンノスケをベッドから持ってきて抱きしめる。

浴室から戻ってきた理佐ははたと思い出し、鞄から数枚のプリントを出して手渡してきた。

「理佐、シャーペン貸して?」
「うんいいよ」

筆箱を借りると問題を解いていく。
理佐は隣に座ってスラスラと書いていく友梨奈に驚いた。

「すごい...全部合ってる」
「ふふん。惚れた?」
「惚れたー友梨奈大好きっ」

僅か数分で問題を解いてしまった。

「よし。勉強終わり」

理佐に筆箱を返して自分の鞄にプリントを入れた。


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