「友梨奈ーお風呂入るよー」
「んー」
と、私の携帯が鳴った。
誰かなと画面を見るとねるからだった。
通話ボタンを押して電話に出る。
「もしもし。ねる?どうしたの」
「教会見つかったよ!小さな教会だけど夜なら貸してくれるって!」
「嘘...でもドレス用意してないし」
「私のお母さんがレンタル屋さんで働いてるから心配ないよ」
「いいの?でもお金かからない?」
「うん。そこら辺は気にしないでいいから」
「てちは私服の方がいい?」
「うん、出来れば」
「分かった。この事は理佐に内緒の方がいい?」
「ん」
「了解っ。そのまま話進めちゃうね!」
「ありがとう、ねる」
じゃあね、と通話を切りふふっと微笑んで先にお風呂に入っている理佐を追いかける様にパーカーを脱いで裸になると浴室に入った。
「友梨奈ちょっと待ってて」
「うん」
コンディショナーを髪全体に塗って丁寧に洗い流す理佐。
「よし、次は友梨奈ね」
「ん」
椅子に座ってシャワーで髪を濡らされシャンプーを付けて泡立てられる。
「気持ちいい...」
「そう?」
「一週間自分で洗ってたもん。理佐の手の方がいい」
「甘えん坊友梨奈」
「理佐の前では甘えん坊だよ?」
片目を瞑って理佐を見上げる。
「泡が目に入っちゃうよ」
「はーい。...いたっ」
「ふふっ。ほら入っちゃた」
滲みる目をぎゅっと閉じて「流すよー」と言われたのでこくこく頷いた。
泡を流してもらうと髪をオールバックにして目を洗う。
「大丈夫?」
「ん。目がしぱしぱする」
そのまま理佐は私の髪にコンディショナーをまんべんなくつけた。
「友梨奈の髪って金髪だけど傷んでないね」
「生まれつきだからかな」
コンディショナーも洗い流されて顔の水滴を取る。
二人で立ち上がって身体を洗い、湯船に浸かった。
「友梨奈ー」
お風呂の中で理佐が抱きついて擦り寄ってきた。
もう慣れたけどね。
私の太腿に座って肩に顎を乗せる。
すると首筋を噛んできた。
「っ...くすぐったいよ理佐」
二の腕も噛まれてクスクスと笑った。
「だって、髪切った友梨奈カッコいいんだもん」
「...それが理由?」
「うん。だから私のものって証」
「指輪してるのに?」
「それでも不安になるの」
俯く彼女の後頭部を引き寄せて口付けた。
リップ音を立てて角度を変えて何度も口付ける。
薄く開いた唇に舌を差し込んで絡めると甘噛みして唇を離した。
「...これじゃだめ?」
「...だめじゃない」
お風呂に入って頬が赤いのか、キスしたから赤いのか分からなかった。
でも耳が赤くなってる。
「...友梨奈、カッコいい...」
「理佐は可愛いし、綺麗」
「どこが」
「んー...仕草とか。あー...あとは笑った顔」
恥ずかしいのか私の首筋に顔を埋めた。
「好き、理佐」
「私も好き」
抱きついてきたので抱きしめ返した。
理佐とのお風呂タイムはいいなぁ。なんて思いながら私も理佐の肩に顎を乗せる。
しばらく抱きしめ合ってから身体を離して「もう上がるー」と理佐が呟いたので私も湯船から上がって浴室を出た。
身体を拭き、ショーツに脚を通して寝間着に着替え、スキンケアをお互いにした。
理佐はドライヤーを持って私を呼んだ。
大人しく従って理佐の脚の間に座った。
髪を乾かしてもらうのがもう日課になっている。
温風と理佐の手つきが気持ち良くてうとうとしてしまう。
「友梨奈ー寝ちゃだめ。ご飯食べるでしょー」
「今日のご飯は?」
「うどんだよ」
「食べる」
でも人に髪を乾かしてもらうって本当気持ちいい。
だんだんと睡魔が襲ってくる。
目を閉じた瞬間ドライヤーの音が止まった。
「髪切ったから乾くの早いね」
「んー」
「じゃあ髪乾かして来るから起きて待っててね」
「はーい」
と言いながら絨毯の上に寝転んだ。
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「な...友梨奈」
「ん...?」
「起きて待っててねって言ったのに」
クスクス笑う理佐をうっすら目を開けて見上げる。
「だって、気持ちいいんだもん」
身体を起こすともううどんが出来ていた。
ほうれん草、玉ねぎ、鶏肉が入ったうどん。
「いただきます」
「どうぞー」
食べ始めるととっても美味しくて理佐を見つめる。
「理佐、美味しい」
「そう?ありがとう」
嬉しそうに微笑む理佐に私は黙々と食べた。
つゆまで飲んで完食をすると手を合わせて「ごちそうさまでした」と呟く。
「美味しかったー」
「また作ってあげるね」
「うん。いつもありがとう」
「はい」
理佐も完食して私は立ち上がって器を二人分持ってキッチンに立つ。
「友梨奈いいのに」
「これくらいさせてよ」
理佐の方を向きにっこり微笑んで言う。
器などを洗って水切り場に置いて行く。
「ありがとう友梨奈」
「はいね」
「歯磨きして寝よっか」
「そうだね」
手を繋いで洗面台に行くと二人並んで歯を磨く。
丁寧に磨いた後、口をゆすいでタオルで口を拭く。理佐も同様に口をゆすぐと私の使ったタオルで口を拭いた。
「じゃあ寝よう」
「うん」
リビングに行くと私が先に寝そべって理佐が隣に寝転んだ。
腕枕をしてもらってぴったりと寄り添う。
電気をリモコンで消して脚を絡ませる。
「おやすみ」
二人して呟くと目を閉じて眠りに入った。
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