数十分後、見慣れない景色が広がっていた。
理佐が一人暮らしをした時には私は病院に入院していたから。
駐車場に車を止めて理佐が到着ーと呟いた。

「綺麗なマンションだー」
「でしょう?友梨奈行くよ」

後部座席の荷物を理佐が持って車の鍵を締める。
エントランスを通って右側に行く理佐を追いかけて、家の鍵を開けた。

「友梨奈、入って」
「お邪魔します」

中に入ると質素な部屋だった。
まあ理佐の実家の部屋もそうだったけど。
無駄な物は置かない主義なのは私と似ている。

「そう、もう友梨奈のお茶碗とか箸とか買い揃えてあるからね」
「さすが理佐」
「ふふん。座椅子に座っててね」

そう言って理佐は荷物を開けてあっち行ったりこっち行ったりと忙しなく動いていた。

「友梨奈、醤油ラーメン食べる?」
「食べるっ」
「分かった」

理佐はキッチンに立って鍋に水を入れてお湯を沸かす。
その間、ネギを切って薬味を準備する。
私は携帯を弄りながら待っていた。
お湯が沸騰すると理佐はインスタントラーメンを鍋に入れてラーメンの器にタレを入れて茹で上がるのを待った。
菜箸で麺がほぐれると器に麺を入れてお湯を注ぐ。
ねぎを散らし、箸を持ってテーブルに置いてくれた。

「わぁ、美味しそう」
「ごめんね、インスタントで」
「全然いいよ。いただきます」

久しぶりのラーメンに嬉しくて食べ始めた。

「んー美味しい〜」
「良かった」
「理佐は食べないの?」
「朝ご飯もう食べたから」

理佐はお茶とサイダーを持って隣に座ってサイダーを私にくれた。

「理佐、私の好きなの覚えてるね」
「当たり前でしょう?何年付き合ってると思ってるの」

理佐はふふっと微笑んでお茶を飲んだ。

「今日から友梨奈と一緒かー」
「ふふっ。ね。未だに信じられない」

私はラーメンを食べながらもぐもぐと口を動かした。
途中、サイダーを手に取って蓋を開けて飲む。

「友梨奈の荷物いつ取りに行こうか」
「いつでもいいよ」
「でも早めの方がいいよね」
「お父さんと鉢合わせたくないから9時ぐらい?」
「分かった」

絶対反対するであろう父親の事を考える。
考えただけで胃がチクチクする。
嗚咽感で箸を止めた。

「友梨奈...?」
「...ごめん、もう食べられない」
「大丈夫。退院したばっかりなんだから」

そう言って理佐は抱きしめてくれた。

「よく食べた方だよ。えらいね」

頭をポンポンと優しく叩いて呟く。

「理佐..,」

ぎゅっと抱きしめて擦り寄った。
理佐は身体を離して私に優しく口付けをした。


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短くてすみません!