放課後、体育館にこばと一緒に行った。
隣のコートではバスケ部員達がぞろぞろ集まり始め、友梨奈も入ってきた。
友梨奈は私達のコートを見て、私を見つけると恥ずかしそうに微笑んで手を振った。
私もにっこりはにかんで振り返した。 

「理佐、練習始めるよ」
「はーい」

6対6で組んで練習を始めた。
サーブして入ってきたボールをメンバーがトスして私が鋭いスパイクをする。

「ナイスキー!!」

後輩達が叫ぶ。

「上手じゃんトスの仕方」

後輩の髪を撫でてにっこり微笑む。
それを友梨奈が見ていたとは知らずに。




部活が終わり、友梨奈の元に駆け寄った。

「友梨奈」
「...先輩」

浮かない顔をしている友梨奈を放っておけなくて
家に来る?と尋ねるとこくんと頷いた。

「明日休みだから泊まる?」
「...良いんですか?」
「もちろん」
「じゃあ寮母さんに連絡します」

携帯を出して寮母さんに電話をする友梨奈をじっと見つめてブレザーのポケットに手を入れる。

「はい、今日泊まるんで。はい」

通話を切って私を見つめる。

「OKもらえました」
「よし。じゃあスーパー寄ってから帰ろうか」
「...はい」

私が手を差し出すとおずおずと手を握ってきた。
無言のままの友梨奈に私も何も言わずに歩き出す。
少ししてからスーパーに着き、色々な物を買ってお会計を済ませ袋に入れる。

「...私持ちます」
「いいの?ありがとう」

袋二つ分になった食材を友梨奈と私で一袋ずつ持って、空いた手で友梨奈の手を握った。

「友梨奈重くない?」
「大丈夫です」
「ならいいけど」

たわいない会話が続かない。
どうしたんだろう友梨奈。

家が見えてくると「あれだよ」と教えてあげる。
自宅に着くと手を離して家の鍵を開けて先に友梨奈を中に入れる。
後から中に入って鍵を締めた。

「座ってて」
「はい」

殺風景な部屋を友梨奈は見渡す。
私は友梨奈から受け取った袋から食材を出して冷蔵庫にしまう。
お茶とサイダーを取り出してテーブルに置く。
隣に座って友梨奈にサイダーでいい?と聞いたらこくんと頷く。
友梨奈の鞄とマフラーをソファーに置く。

「で、友梨奈。どうしたの?」
「...先輩、今日...」

俯く友梨奈の髪を撫でて言葉を待つ。

「...誰にでもこんな事...するんですか...?」
「え?友梨奈、こんな事って...?」
「髪、撫でる事」

目を潤ませて友梨奈は私を見つめる。

「してた...?私」
「...」

またこくんと頷く友梨奈。

「友梨奈...」

堪らなくなって思わず抱き寄せた。
拒まれるかもしれないけどもう我慢出来なかった。

「友梨奈はやだった?」
「...嫌...でした」
「分かった。もう他の子にはしない」
「...本当...ですか...?」
「うん、しない」

身体を離して友梨奈は私の唇にキスをしてきた。
友梨奈からのキスに目を見開く。
ゆっくり離されると顔を真っ赤にさせて目を伏せる。

「実は...先輩とのキス...初めてじゃないんですよ...?」

私は目をパチパチさせて友梨奈を見つめる事しか出来なかった。



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