うるさい目覚まし時計が鳴り響く。

「うーーー...」

低く唸りながら寝不足な私は目覚まし時計を止めた。頭の中では天使と悪魔が戦っている。
と、てちの笑顔が脳裏をよぎり、ぱっちり目を開けた。
ガバッと起き上がり部屋着から制服に着替え、洗面台で支度をした。
し終わった後、キッチンに行き朝ご飯の準備をする。
トースターに食パンを入れて電源のつまみを回した。
冷蔵庫からバターナイフが入ったマーガリンを出し、焼けるのを待つ。
そしてチンッとなったトースターからキツネ色に焼けたトーストを取り出してお皿に乗せた。
座椅子に座ってトーストにマーガリンを塗って食べる。
口の水分を持っていかれ、マーガリンをしまうついでにお茶を出しキャップを開けて飲んだ。
再びトーストを黙々と食べる。
食べ終わると食器を後片付けしてお茶をしまい、お弁当箱を持って寝室に行って鞄にしまった。
時計を見るともう出なくちゃいけない時間でマフラーをし、慌ただしく家から出た。
早足になりながら学校へと向かう。
途中でまたこばに会った。

「おはよう理佐」
「おはよこば」

寒いねーなんて言いながら歩いていると、てちも友達と仲良く話しながら歩いてきた。
私に気付くと一瞬目を伏せて、また見つめて微笑みながら頭を下げた。
私も微笑んで手を振る。

一瞬間があったのはなんだろうか。

「理佐ってば!」
「へ...?」
「へ...?じゃないよ。最近人の話聞いてないでしょ」

こばは呆れた表情を浮かべて呟いた。

「ごめんごめん」

いいなー。てちと朝から学校に行けて。
羨ましいなー。
なんて思いながら学校に着くと上履きに履き替え、こばと一緒に教室に向かった。
席に着くや否やこばが振り向いてきた。

「で?あれから進展あった?」
「うんっ。手繋いだ」
「ほー。でも理佐にしては慎重だね」
「...こば、それは褒め言葉?」
「当たり前じゃん」
「ならいいけど」

鞄から教科書などを出して机の中にしまった。
すると先生が教室に入ってきて「おはようー」とみんなに挨拶をした。
そして点呼を始めた。

午前中眠くなりながらも何とか授業を受け終わると、お弁当箱を持って体育館に向かった。

「てちー」

先に待っていたてちに駆け寄る。

「今来たとこ?」
「はい」

にっこり微笑んで見上げるてちに私も微笑む。
隣に座ってお弁当箱を開ける。

「先輩のお弁当美味しそうですね」
「半分こで食べる?」
「えっ、悪いですよっ」
「大丈夫だよ」
「...じゃあお言葉に甘えて...」
「あ、てちグリンピース弾いてね」
「...あ、でも食べてみます」

私はてちのお弁当を受け取り、食べ始める。
てちは優しく微笑んで「いただきます」と呟いて食べ始めた。

「...どう?」
「...とっても美味しいですっ」
「グリンピース無理しなくていいからね?」
「大丈夫です。なんだろう、先輩のだと食べれます」
「本当?てちは優しいねー」

髪を撫でると恥ずかしいのか俯いてしまう。

「先輩...お弁当」
「いいよてち食べて?私煮物系好きだからこのまま食べちゃっていい?」
「先輩が良かったら」

恥ずかしそうに呟いたてちを微笑んで見つめ、しばらくしてお弁当を食べ終わる。
そしててちの太腿に頭を乗せて仰向けになった。

「...先輩?」
「てちの太腿借りるね」

目を閉じていると少しして唇に何か重なった。
柔らかくて甘い匂いがした。

「先輩」
「...」
「...先輩」
「...ん?」
「お弁当ごちそうさまでした」

見上げるとふにゃっと微笑んでいるてち。
起き上がるとお弁当箱を交換した。

「全部食べてくれたんだ。ありがとう」
「いえ、こちらこそありがとうございました」
「ねえてち...」
「はい?」
「...友梨奈って呼んでいい?」
「...はい」

てちは恥ずかしそうに頷いてくれた。
と、お昼休みのチャイムが鳴った。

「友梨奈、行こう?」

お弁当箱を抱えて空いた手を差し出した。
すると顔を赤くしたてち、いや、友梨奈はおずおずと手を握ってきた。

神様、これって脈ありでしょうか?


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