最近友梨奈の体調が良くなってきた事が嬉しかった。
ご飯も完食出来る様になって、安心した。
今日も花束を持って友梨奈のいる病室に向かった。
「友梨奈ー」
扉を開けると友梨奈はご飯を食べていた。
「理佐っ」
嬉しそうにはにかんだ彼女を見て私も微笑む。
花瓶に花を生けて椅子に座った。
「もうお粥じゃなくなったの?」
「うん、でも少しにしてもらったけど」
「それでもえらいよ」
左手を握って呟く。
「友梨奈さ、退院したらどこ行きたい?」
「うーん...海はこないだ行ったからー...」
「どこでもいいよ?」
「あ、理佐に髪切ってもらいたい」
「私の働いてる美容室で?」
「うん」
「欲ないなー友梨奈は」
「あ、もう一個あった」
「なに?」
「醤油ラーメン食べに行きたい」
「友梨奈醤油ラーメン好きだもんね」
「うん」
ゆっくりとだけどご飯を食べ進める友梨奈を微笑んで見守った。
しばらくしてから食べ終わった友梨奈は「ごちそうさまでした」と手を合わせた。
「頑張ったねー」
「うん」
椅子から立ち上がり、ベッドに腰掛けて友梨奈を抱きしめた。
友梨奈も私に抱きついてくる。
「理佐が褒めてくれるの嬉しい」
素直に言ってくる友梨奈が可愛いと思った。
身体を離し、唇にキスをした。
「ご褒美のキス」
「ふふっ。ありがと」
嬉しそうに笑った友梨奈の髪を撫でる。
「うーん髪どうしよっか」
「ショートが良い」
「ちょっと今長いもんね。本当にショートでいいの?」
「うん」
「ん、分かった」
と、友梨奈のお母さんが病室に入ってきて私達を見た。
「あら。理佐ちゃんおはよう」
「おばさん、おはようございます」
頭を下げて挨拶をした。
「おばさん、友梨奈の事なんですけど」
「どうしたの?」
「退院したら私の家に引越してもいいですか?」
「え?そんな事だめよ。また再発するかもしれないし」
「私が面倒をみます」
「面倒をみるって言っても理佐ちゃん仕事してるでしょ?」
「お母さんだって仕事してるじゃん。それに私はもうあの家には帰りたくない」
「友梨奈、わがまま言わないの」
「わがまま?じゃあ摂食障害になった原因って何か知ってるの?」
「それは...」
思い当たる事があるのか友梨奈のお母さんは黙ってしまった。
「私はとにかく理佐の家に引っ越すから」
「だからダメだって言ってるでしょ」
「ダメって言われても引っ越す」
「...友梨奈。理佐ちゃんに迷惑かけちゃうでしょ」
「私は大丈夫です」
「...でも、」
「私達が決めた事だから」
「...分かったわ。二人が決めた事ならお母さんはもう何も言わない」
「すみません、わがまま言ってしまって」
「理佐ちゃんいいのよ。友梨奈が元気になってくれれば私はそれでいいの」
友梨奈のお母さんはどこか寂しそうな表情を浮かべていた。
「私が責任持って守っていきますから」
「理佐ちゃん...よろしくお願いします」
「承諾して下さってありがとうございます」
「...じゃあお母さん仕事行ってくるわね」
病室を後にした友梨奈のお母さんに、友梨奈はため息をこぼした。
「友梨奈」
ぎゅっと抱きしめて背中を摩った。
「良かったね。許してもらえて」
「うん。理佐ありがとう」
擦り寄ってくる友梨奈を強く抱きしめ返した。
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