放課後、部活の準備をして体育館にこばと一緒に向かうと、ちょうどバスケ部員がぞろぞろとやってきた。
ふいにてちが私を見つけると恥ずかしそうに頭を下げて微笑んだ。
私も手を振って微笑む。

「見た!?こばっ」
「はいはい見ましたよ」

呆れ顔のこばは放って置いてバスケ部員達が各々練習をし始めるのを見つめる。
次はてちの番だ。
てちは華麗にドリブルをしてゴールネットに近付くとボールを投げてゴールを決めた。

かっこいい。
思わず破顔してにこにこと微笑んでしまう。
黄色い声援の中てちはハイタッチして笑ってる。

「理佐、理佐っ」
「へ?」
「へ?じゃないよ。私達も練習するよ」
「はーい」

残念そうに呟いて立ち上がると練習を始めた。
下級生達がコートを設置して私はレシーブの練習した。


部活が終わるとてちが体育館の外で待っていて駆け寄った。

「てちお待たせ」
「お疲れ様です」
「てちもお疲れ様」

にっこり微笑み、「帰ろっか」と呟いて手を繋ごうとすると見事に空振りする。
てちの手はマフラーへと伸ばされていた。
うう、泣ける。

「...先輩?」
「...ん?」
「どうかしましたか...?」
「ううん、どうもしてないよ」
「良かった」

ふにゃっと微笑むその姿に鼻血出そうなんですけど。
思わずまた眉間を押さえた。

「先輩、あの」
「ん?」
「携帯、教えてくれませんか?」
「えっ!あ...いいよ」

まさかてちの口からそんな言葉が出るとは思わず飛び上がってしまった。
携帯を取り出してIDの交換をした。

「先輩のアイコン可愛い」
「てちこそ。カワウソ?」
「はい。カワウソに似てるって言われるんで」
「そうなんだ」

早速メッセージを送った。
(てち、これからもよろしくね)
それを見たてちは嬉しそうに、
(はい。こちらこそよろしくお願いします)
とメッセージを送ってくれた。

にやけてしまいそうになるのを堪える。

「先輩、帰りましょうか」
「そうだね」

仲良く話しながら帰り道を二人並んで歩いた。
手が触れ、私は勇気を出してその手を握る。
てちの手は冷たくて気持ちが良かった。

「...」
「...てち、明日も一緒にご飯食べよう?」
「...はい」

恥ずかしそうに頷くてちが可愛くて仕方なかった。

「...じゃあ先輩、また明日」
「うん、気をつけてね」

離す手が名残り惜しくて最後にきゅっと握って離した。
頭を下げて帰っていくてちの後ろ姿を見つめる。
と、てちは振り返ってはにかみ手を振ってくれた。
私も大きく手を振って微笑んだ。
まだ残るてちの手の温もりを握り締め、私も自宅へと帰った。


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