足元に落ちたラブレターをこばとともに拾い私の鞄に入れた。
「理佐これから大変かも」
「大丈夫。私にはてちがいるから」
鞄を持ち上履きに履き替える。
そしてこばと一緒に三階の教室に向かった。
こばとはクラスが同じで席が近いので先生が来るまでダラダラと話して時間を潰した。
やがて先生が来て教壇に立ち点呼をとりだした。
午前中の授業が終わるとお弁当箱を持って早々に体育館へと走った。
「先輩ー、こっちです」
てちが私を呼ぶ。
「てち待った?」
「全然です。私も今来た所なんで」
「良かったー」なんて言いながらてちの隣に陣取った。
お弁当を開けて食べるとてちが「あ...」と呟いたから「...?」とてちを見つめる。
私が食べようとしている卵焼きをじっと見つめてる。
「...食べたい?」
「...良いんですか?」
なんなんだこの小動物は!
可愛い過ぎてこっちが食べたいくらい!
手がプルプルと震える。
「いいよ、どうぞ」
「いただきます」
差し出した卵焼きをてちがパクッと食べる。
「ん!」
「...どう?」
様子を伺いながら尋ねるとてちはにっこり微笑んだ。
「おいひいでふ」
やばいやばい!
可愛いなにそのふにゃっとした笑みは。
心臓の音がうるさい。
「っ...てちー」
抱きつこうとしたら「あ」と言って屈み込むてち。
私の腕はまた宙を掴む。
「なんだ、ありかと思った」
「...」
私は内心心の中で泣いた。
お弁当を食べ始めると、「先輩今私の名前呼びました?」と聞かれ、「ううんなんでもないよ」と首を左右に振った。
「てちのお弁当誰が作るの?」
「寮母さんです」
「そうなんだ」
てちのお弁当を見るとグリンピースが弾かれていた。
「てち、グリンピース苦手?」
「あ...はい」
「私が食べてあげるよ」
「良いんですか?」
「うん。お弁当交換する?」
「はいっ」
嬉しそうなてちとお弁当を交換した。
ぱくぱくとてちが残したグリンピースを食べて、てちは私のお弁当を幸せそうに食べている。
良かった。てちが幸せそうで。
それだけで私は嬉しい。
「寮母さんの作るお弁当煮物系が多いね」
「はい。でもわがまま言えないし」
「そうだ。てち、お弁当これから交換しよっか」
「いいですいいですっ。それこそわがままになっちゃうんで。先輩にも迷惑かけちゃうし」
なんて素直な優しい子なの!
私はてちの頭を撫でた。
「良い子だね、てちは」
とうとう髪に触れる事が出来た。
するとてちは恥ずかしそうに目を伏せた。
耳たぶが赤い。
ねえなにその反応は。
私の心拍数がグングン上がっていく。
「ねえてち」
「なんですか?」
「今日も一緒に帰ろう?」
「はい」
はにかんで私を見るその瞳にもはや虜になってしまっている。
仲良く談笑しながらお弁当を食べ終えるとお弁当箱を交換した。
「先輩がグリンピース食べてくれたおかげで寮母さんから怒られずにすみました。ありがとうございます」
「いつでも言って?グリンピースくらい食べてあげるから」
「ありがとうございます。先輩のお弁当もとっても美味しかったです」
にっこり微笑んだその姿が眩しい。
やがてチャイムの音が鳴り響き、半ばガッカリしながらもお弁当を片付け立ち上がる。
てちも立ち上がり、一緒に体育館を出て手を振ってそれぞれの教室へと戻っていった。
はぁ...幸せな時間だった。
ふわふわしながら席に着いてお弁当箱を鞄にしまった。
「理佐、りーさっ」
「っ...こばか」
「大丈夫?ボーっとしてるけど」
「...やっと触れた」
ピースサインをして微笑んだ。
「おー進展あったじゃん。おめでと」
「うん。でもまだまだ先は長いかも...」
神様、私の恋はいつ始まるのですか?
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