「友梨奈ご飯食べよっか」
「うん」
私達は先に洗面台に立ち、顔や歯を磨いた。
スキンケアもしっかりとして、キッチンに向かい理佐は食パンをオーブンで焼く。
「友梨奈、食パン見ててね」
「ん」
頷いてじーっとキツネ色になるまで見つめた。
ああ、もう良いかも。
と、二人分のお皿にあちち、と言いながら乗せた。
そんな私の姿を見て理佐がクスクスと笑いながら何か作っていた。
理佐を背後から抱きしめて覗き込む。
「なに作ってるの?」
「わかめのコンソメスープ」
「美味しそう」
「すぐに出来るから友梨奈座ってて」
「はーい」
理佐から離れると定位置につく。
少ししてから耐熱容器のマグカップ二つがテーブルに置かれた。
「いただきます」
二人手を合わせ呟いてトーストをかじる。
もぐもぐと食べていると理佐がまた「りすになってるよ」と呟いた。
「友梨奈口小さいからね」
「...そんなに小さいかな」
パンをよく噛んで飲み込んだ。
それからコンソメスープに手を伸ばす。
温かいスープにほっとする。
「友梨奈髪切ってもらう?」
「うーん、昨日の今日だしちょっとお店に行くの怖い」
ふと、昨日の事を思い出した。
一体誰何だろう。
と、思っていると急に吸血発作が出た。
「は...っ」
「友梨奈っ」
呼吸を乱して心臓を押さえ蹲る。
理佐は私の肩を持って起き上がらせ、白い首筋を差し出した。
だけど昨日の事が頭から離れずに、首を横に振った。
「友梨奈っ、飲んで」
「でも...っ」
「守るって言ったじゃない」
「理佐...」
理佐は再度また首筋を見せてきた。
私はもう我慢出来ずに白いその肌に咬みついた。
甘い血を飲んで少ししてから牙を抜く。
元に戻った私を見て、理佐は安堵の表情を浮かべ私を抱きしめてきた。
息も整って苦しみから解放されて理佐の肩に頬を寄せた。
「理佐...ありがとう」
「ありがとうはいいの」
良かった。歯止めがきいて。
ご飯食べよう、と理佐が言い、再び二人で食べ始めた。
食べ進めていると突然理佐が口を開く。
「友梨奈、服見に行こう?」
「服...?いいよいいよ。今のままで十分だし」
「...だめ?」
「...っ」
眉尻を下げた理佐に思わずときめいてしまった。
「理佐が...そう言うなら」
「やったー!」
ギュッと抱きしめてきたので私も同じ様に背中に腕を回した。
理佐が喜ぶならいっか。
私達は早々に食べ終えて私服に着替える。
露出している肌に薬を塗って、マフラーと眼帯をした。それから小さな鞄に携帯と財布を入れて斜めにかけた。
出掛ける準備が出来たので後は理佐が化粧をしているのを待つのみ。
ベッドに座って大人しく待っていた。
「ごめん、遅くなって」
「大丈夫。行こう理佐」
大人っぽい理佐にドキッとしながらも手を絡めて繋ぎ、一緒に家を出て私はフードを目深に被った。
「そうだ、友梨奈カラコン着けたら?いつも眼帯着けるのめんどくさいでしょ」
「一回着けたんだよ?だけど変わらなかった」
「そうなの?残念...あーでも友梨奈の瞳見ていいのは私だけだもんね」
「...一回ねるに見せたけど」
「え!?大丈夫だった...?」
「ん。大丈夫だった」
「...私だけって言ったのに」
そう言って拗ねる理佐の手をギュッと握る。
「もう見せないよ。ごめんね理佐」
「友梨奈...約束だよ?」
「うん約束」
にっこり微笑んで頷くと、理佐も嬉しそうに笑ってくれた。
二人で談笑しながら歩いているとあそこだよと見えてきたお店を指差した。
店内に入り、可愛い小物や洋服が飾ってあった。
「ここの服好きなんだ」
「...ふーん」
大人っぽい服がずらりと並んでいて、しかも黒系の服が多くて私も興味をそそられた。
色んな服を理佐と見てまわった。
「友梨奈、これいいんじゃない?」
「んー、でもフード付きじゃないと私...」
「部屋着にどう?」
「部屋着ならいいかな」
「じゃあこれは決定」
黒のタートルネックを手に持って理佐は自分のも選んでいる。
ある程度決まり、会計をしに行って私もお金を払おうとしたら理佐は私からのプレゼント、と呟いた。
私は気が引けたが、理佐のご好意に甘える事にした。
会計が終わり、紙袋を持って理佐と共にお店を後にする。
「たくさん買っちゃった」
「持つよ、荷物」
「大丈夫」
理佐は微笑んで手を絡めて繋いできた。
ありがとう、とお礼を言って理佐を見た。
「いいの。お礼なんて」
ふんわり微笑んで私を見つめた。
それから二人帰路に着いた。
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