グロいのが苦手な方は閲覧注意です。


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「またやっちゃった...」
左手首には無数の傷と滴る鮮血。
でも血を見るだけで落ち着く冷静な自分がいた。
いつからだろう。
無性に自分を傷つけたくなったのは。
苦しくて、辛くて、気がついたらカッターナイフを左手首に刃を当てて、傷を付けてた。

ぼーっと溢れ出る血を冷めた目で見つめていると、同棲している理佐が「ただいまー」と帰ってきた。

やばい...隠さなくちゃ...

捲っていた袖を下げてカッターナイフをベッドの下に咄嗟に隠した。

「おかえり、理佐」
「友梨奈ーただいま」

理佐は微笑んでカバンとコートを部屋に置きに行った。
バレてないとホッと安堵していると理佐が「疲れたー」と言いながら戻ってきて私の隣に座った。

「友梨奈、ご飯食べた?」
「うん、食べたよ。理佐が作っておいてくれたお握り」
「良かった。ただでさえ少食だから心配したよー」

ぎゅうっと抱きしめてくれて、安心した。
けど、体勢を崩してしまい、
リストカットした左手が理佐の身体に触れて思わず顔を歪めてしまった。
ーーー私の顔を見過ごしてーーー
と思ったら、理佐の足にカッターナイフが当たってしまい、理佐に勘づかれてしまった。

「...!...友梨奈、手首見せて」
「っ.....」

俯いたまま首を横に振った。
見せたくない。
こんなに汚い私の傷を。
それでも理佐は強引に左手首の袖を捲ってきた。

「いや...!」
「っ...血止まってないじゃん!」

理佐は慌ててティッシュペーパーで止血をしてくれた。
しばらく血が止まるまで傷口を押さえててくれたけど長く感じる無言だった。

「...どうしてしちゃったの、また」

理佐は悲しそうに呟いた。
私はどう言えばいいのか分からなかった。
この感情なんて誰にもわかる訳ない。
でも理佐を前にしたら、

「......気がついたら」
「友梨奈...」
「無性に自分を傷つけたくなって...」

ぽつぽつと話していた。
自分でも知らない内に涙が溢れて身体が震えた。
理佐はそっか...と呟いただけで、それ以上何も聞かずに抱きしめて私の背中を何度も何度優しく摩ってくれた。

「理佐...ごめんね...こんな私で」
「...友梨奈、そんな風に言わないの...苦しくなっちゃったんだね...」

私は謝る事しか出来なくて、でも理佐が分かってくれてる事に驚いたけど、労る様に髪を撫でてくれた。

「...落ち着いた...?」

しばらくして理佐が尋ねてきたからこくんと頷く。

「よし...じゃあ手当てしよっか」

理佐は一度立ち上がってタオルをお湯で濡らして持って来ると、傷口の血をタオルで優しく拭いてくれて、手当てされてるのをじっと見つめていた。「はい、出来たよ」と白い包帯を優しく撫でてくれたから「ありがとう...」とお礼を言った。

「友梨奈...カッターナイフはもう捨てるからね?」

そう呟かれた事にちょっとショックを受けたけど、俯いたまま頷く。その方がいい。でもまた発作の様に自分を傷つけたくなったらどうしよう...と思っていると理佐が顔を覗き込んできた。

「友梨奈」
「...?なに...?」
「苦しくなったら私に言うこと。出来る?」
「っ...」
「私は、友梨奈の力になれない...?」
「...理佐、」
「苦しいのは半分こ。...分かった?」

理佐は目を潤ませてそう言った。
どうして理佐には分かっちゃうんだろう。

「...うん...半分こ」

私はまた目を潤ませて何度も頷いた。
すると理佐はおでこにキスをくれた。
私もまるで誓いあうかのように理佐のおでこにキスをした。

そして2人おでこをつけ合って、お互いの頬を包み込んで口付けをした。


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