次の休みに姉はT社に残額を全て支払った。

姉は私からT社のカードを取り上げ、目の前で鋏で2つに切り裂いた。

「あんたはこれから毎月、月末に必ずあたしに返済する事。」

私は何度も頭を下げた。この時ばかりは姉に心底、申し訳なさを感じた。


平穏な日々が始まるわけはなかった。

私はT社の他にクレジットカードを含めて7社との契約が残っていた。

考えたくもないがおそらくは300万は借金があったはずだ。

クレジットカードに関しては住所が変わったと嘘をついて1人暮らしの友達の家に明細が届くようになっていた。

友達はもちろん封をしたままで渡してくれる。


買い物は殆ど無く、毎月キャッシングを繰り返していた。

最近では返済して、それが反映されるとまた少し空いた枠をキャッシングしている。大体が2~3万。この金はそのまま別の会社の返済に充てる。

給料日は月末で、返済日はそれに合わせて月末や月初が多かったがI社は返済してから何日後、とかそんなサイクルだったので中旬の1番金に困る時期での返済が多かった。

それでも今まではなんとかなった。

夜のアルバイトで日払いを1万は貰えていたからだ。

遅れる時は何日遅れますと伝えれば大体1週間後までなら快く了承してくれる。

結局、友達と遊んだり、少しばかりの物を買ったりしても給料と、アルバイト代でなんとか返済はクリアしていた。

もちろん元金は返せない。利子がやっとという返済方法が殆どだ。だから借金はちっとも減らない。

それでも、ここまでは何とかやってこれたのだ。

だけど今日からは違う。

姉には毎月1万5千円を確実に払わなければならなくなった。

T社の支払いは1万5千円だが実際毎月返済していたのは9千円から1万円の利子の部分だった。元金に反映されるのは多くて1000円。少ないと何十円の世界だった。

姉に返す事で一気に5千円負担が多くなる。

私にとって5千円は大金だった。

4900円の洋服を買う事もためらうのに飲みに行けば簡単に1夜で1万くらい遣ってしまう。それでも5千円は大きな痛手だ。

私はここで初めて携帯の電卓機能片手に今までの明細を取り出し自分の借金を見つめ直す事にした。

「えっと・・・」

返済金額を利子ぎりぎりの最低金額で考えてみた。

T社・・・ではなく姉に1万5千円。

クレジット会社に大体毎月4万円。

丸井に1万5千円。

F社が5千円。

I社に1万円。

A社に9千円。

C社に1万2千円。

B社に7千円。

これだけでざっと11万。

生活費として母親に2万。トータルで13万。私の昼間の収入が15万弱。2万残る。それからクレジット会社に4万払って空いた枠が大体2万。C社に1万2千円の返済は絶対だが枠が空いて5千円くらい毎月遣える。

4万5千円が何も考えず見積もって手元に残る金だ。

だけど入院をきっかけに入る事になってしまった保険。掛け捨ての1番安いプランで確か1600円くらい。それから携帯代。

これらを考えてもこの金額ではマイナスだ。

だからアルバイトを続けていたのだ。


「どうしよう・・・」

もう、夜あんなに毎日アルバイトをするわけにはいかない。ただでさえ母は不信に思っているのだ。

携帯がブルっと震えた。

反射的に見るとメールだ。

島田だった。

「おい、身体の方は大丈夫か」

よっぽど金を返して欲しいのか、それと不安なのか。

私は思わず舌打ちをしてしまった。

だけどその短い文章を目にしているうちに思いついた。閃いた時思わず自分は天才だと思った。

「そうよ・・・1人で・・・1人でやろう」

これが私が春を売る事を決めた瞬間だった。