入院生活は退屈だ。

唯一、外界と繋がっている母は毎日やっては来てくれるものの夕方6時にならないと難しい。

それまでの時間はテレビを観たり眠ったりして潰れていく。

朝が早い分、昼ごはんを食べて少しするとどうにも眠くなる。

ワイドショーなんかを観ながらうとうとし始める。

夕食は母の横で食べる。

母も疲れているだろうに私のために毎日寄ってくれていた。


母は私の肝炎がA型なのかB型なのかをとても気にしていたけれど私は考えないようにしていた。

多分、私はB型肝炎なのだろう。

母から貰ったレターセットで友達に手紙を書く時も病名については触れなかった。

私は不特定多数の男とセックスし、挙句に病気になったのだ。

それをいかにうまく隠して母に知られないようにするか。

そこが問題だった。


入院生活が10日も経った夜、私は小石川に呼ばれた。小石川の部屋は私と同じ階にあって難しそうな本がたくさん並んでいた。

私が緊張していると小石川はそんな私を安心させるかのように

「数値が安定してきましたね」

と口を開いた。

「あと1週間もいてもらえば大丈夫でしょう。ただ、すぐに仕事に戻らないでね。とりあえずは自宅療養と言う事で」

「え、どのくらいですか」

「そうね、半月くらいかな」

結局、1ヶ月丸まる休む事になりそうだ。

会社の事も借金の事も考えたくないけれど考えなければならない。やばいな。

すぐにどこかでバイトしなくてはならないが入院なんてしてしまったのだ。それもできそうもない。

「それでね」

小石川はその童顔をきりりとさせて私に違うトーンの口調で切り出した。

私は何を言われるか分かっていた。

信じたくはなかったけれど、こんな時ひどく冷静な自分が顔を出す。

「検査の結果だけどB型肝炎でした」

やっぱり。

私は何か言おうとして、結局頷くだけにした。

「お母様がね」

瞬間、どきっとした。

「あなたのお見舞いが終わると私のところに来て、検査の結果はまだですかって聞くのよ」

そうだったのか。

それは知らなかったけれど母だったらありえるな、と思った。

「明日にでも退院の日程と一緒に結果をお伝えしようと思うのよ」

「ちょっと待ってください」

私は慌てて遮った。

「それ、言わなきゃならないんですか?」

小石川は私に頷いてみせた。

「そりゃあ・・・嘘つくわけにはいかないわ」

「本人がやめて欲しいって言ってもですか?」

小石川は頷いて

「あなたから伝えたいならそれは構わないわ。でもその後、私のところに説明を求められたら私はB型肝炎としてに説明をすることになります」

「そんな・・・」



結局、翌日、小石川から母に病名が伝わる事になった。

「ねえ、相手はわかる?もし分かるならその人も診た方がいいのよ」

小石川は去り際、私に遠慮深げに聞いた。

私はただ

「わかりません」

と答えるだけだった。