エリはその足でまっすぐ家に帰った。買い物する気にもなれなかったからだ。
エリはさっきからずっと気にしている。
自分が言われた「かわいそう」をずっとずっと気にしている。
金を受け取ったからにはさっさと何もかも済ませなければならないのにその一言でエリは身動きが取れない。
なんであたしがかわいそうなんだろう。
あたしはかわいそうなんかじゃない。
その時携帯がブルブルと震えた。
メールではなく電話だった。
大きく、みくと名前が映し出されている。
「みくちゃん・・・」
電話に出るとざわざわと賑やかだ。
「あ、エリちゃあん?」
呑気な声。みくに間違いなかった。
「みくちゃん?みくちゃんだよね?」
エリは声を荒げた。
「うん、ごめんな~なんか色々連絡できんかったり」
みくの声は時々途切れる。
「え?聞こえにくいよ!みくちゃん今どこ?」
「え?ああ、新宿~。今日ラストまでやねん、エリちゃん出勤ならその後飲まないかなって思ってな」
エリは店には行ってなかったし、ここは家だ。新宿まで出るなんて・・・。
それでもエリは答えた。
「いいよ、お店何時まで?」
「ええと、2時くらい。始発まで飲もうやあ」
エリはそれを了承し、電話を切った。
やっとみくに逢えるのだ。
それがやけに嬉しかった。
そこから知らないうちに眠ってしまい気付くと11時だった。電車がなくなる。
エリはみくと逢う為だけにこんな田舎からわざわざ新宿に出る。みくにドタキャンされたら笑えない。
エリは簡単に支度するとそっと家を出た。
別に遅くに出てもヒステリックに怒鳴られるわけではないが、できるだけ会話をしたくなかった。
何故と聞かれても分からない、気分としか答えようがなかった。
電車を乗り継いで新宿に出た。
ギラギラと夜の新宿はどうしてこうも怪しいのだろう。
飲み屋のネオンが光っているだけでも魅惑的に見えるから本当に不思議だ。
エリはみくが終わるまでの少しの間を喫茶店でつぶす事にした。
みくには
「もうスタンバってるから終わったら電話してね」
とメールをした。
みくを待つ。
この現状をみくに言ったところでどうにもならないのはエリが1番よくわかっていた。
だけど言わずにいられない。
みくに聞いて欲しい。
みくは自分にとっての救世主なのだ。
エリはそう信じてみくからのメールを待っている。