みくはウーロンハイ、エリはカシスオレンジを注文した。
乾杯してみくは美味しそうに飲む。エリも一口、口にした。
「久々やなあ!」
みくは嬉しそうにエリを見つめた。
「ほんとだね」
エリも笑う。みくはメニューを見ながら
「適当に頼んでもええ?」
エリに聞き、エリはそれに従った。
「最近どうなん?」
みくが唐突に切り出す。
「みくちゃんこそ・・・いきなり飛んじゃって。びっくりだよ」
みくはバツの悪そうな表情を浮かべた。
「ごめん、ごめんって。ホラ、探してたんよ、店。決まるまではラブリッシュで頑張るつもりやったの。で、決まったからさ。」
みくはお通しで来た枝豆を口に含んだ。
「どうよ、ラブリッシュ」
「うん、最近ちょっと休んでてね、行ってないんだけどそろそろ行かなきゃ、だよね」
「行きたくないん?」
「うん、そうだね」
エリも枝豆を手にした。ガヤガヤうるさい店だ。男とだったらこんな店、絶対入りたくない。だけどケンジとは来れた・・・。
「まあ確かにエリちゃん借金あるわけやないし学生さんやし、辞めたかったら辞めちゃってええと思うよ」
もうみくのウーロンハイは殆どない。
「みくちゃんは?」
「あたし?」
エリが頷く。
「そうやねえ、あたしは昼間だけやと足りないしな。貯金したいしもうちょっと頑張るわ」
「新しい店ってどう?」
う~ん、とみくは考え込んだ。
「どうやろうね。でもラブリッシュほど、きちっとしてないで。まあ適当な店と思うわ。けどまあ楽やし指名も取れ易いよ」
みくが指名?エリは少し驚いた。
みくはまたウーロンハイを頼む。選ぶのが面倒なのだろう。
「エリちゃん痩せたんとちゃう?」
みくが心配そうに覗き込む。あいかわらずアイメイクがばっちりだなあ、エリは感心する。みくは1つ1つのパーツが大きい。目なんてすごく大きくて羨ましいと女の子によく言われていた。
「うん、ちょっとね・・・」
「何?ダイエット?必要ないやろ」
「違う、ちょっと心配事があって・・・」
言ってみようか。
みくに眞鍋とのことを。
「心配事?」
「うん、あたし・・・」
ウーロンハイがやってきた。みくはまた一口飲む。
「あたしの友達が、大学の1番仲良い子がさ、妊娠しちゃってさ」
みくは目を丸くして
「妊娠?」
と、わざとらしく驚いてみせた。
「そう、妊娠」
ほんま~、と呑気な声でみくは言った。
「え、産むん?」
産む?それはない。
「ううん、堕ろすみたい」
すぐ否定した。
「そうなん・・・、それが1番いいんやったらしゃあないね」
みくはあまり多くを語らなかった。
エリの友人だから、1番の友人だから遠慮しているのかもしれない。いや、他人事だからなのかもしれない。
「なんか、相手は別の人と結婚決まってる人でさ。中絶する代わりにけっこうな大金貰ったみたいでね」
「え、自分から欲しいって言ったん?」
「そう、慰謝料として」
「ふうん、すごいなあ」
「その子もともと産む気まったくなくてね、絶対お金ふんだくろうって思ってたのよ。欲しいものもいっぱいあるみたいだし」
みくは黙ってエリの話を聞いていた。エリは饒舌になる。
「だってこの年で子供なんて冗談じゃないって思わない?学生だし、まだまだ未来ある身なわけだし子育てなんてしてらんないっつー話でしょ?あたしもそう思うのね。だから中絶には賛成。お金だって貰って当然じゃない?男は何の苦痛も味わないんだから。だから妊娠を利用したのよ。これから手術とか面倒くさいけど、でも大金貰えるなら我慢できるしさ」
みくは出し巻き卵に丁寧に醤油をかけていた。
「エリちゃん」
エリは、はっとして黙った。
「その友達、かわいそうな子やね」
かわいそう。
かわいそう?
みくまでそんな事を言うのか?エリはみくをじっと見つめた。
だけどみくは卵を見つめている。
伏せたまつ毛が綺麗だとエリはまた思う。