「で?結局、店はどうするん?」
みくはもう何度となく携帯で時間を確かめていた。
そろそろ始発が走り出す。
「う~ん。辞めると思う、このまま」
みくはもともと大きい目をさらに大きくさせて
「ほんまあ?部長、許さんと思うけどなあ」
そうだね、エリは答える。
大金が入ったし、ラブリッシュに戻る気はもうなかった。
だがこれ以上休めば飛んだと思われるのは間違いない。その状態を続ければまだまだ稼ぎ頭のエリを手放すまいと部長はあらゆる手を使ってくるだろう。
家族に知られるわけにはいかなかった。
しかし部長はきっと家まで来るだろう。
かといって正当な理由が見当たらない。大学との両立が難しくなったと言ったところで部長は認めないだろう。就職が決まるにはまだ少しある。
「飛ぶんは難しいなあ」
みくはそう言いながらまた携帯を見る。
それをやめてほしいとエリは思う。
「どうしよっかな。やっぱり言った方がいいってことだよね」
「そうやね、もう絶対辞めたいって意志を伝えればしつこく色々は言ってくるやろうけど最終的には諦めると思うで」
頷きながらエリは明日にでも部長に電話しようと決めた。
「エリちゃん、始発・・・」
みくは言ってエリを少し見た。
「そっか、そうだね」
エリは笑って財布を取り出す。
割り勘では合わない位みくは飲んだし食べていた。みくは少し多めに出した。
そういうことが自然とできるのは凄いと思う反面、男の前でもそうだったらきっと可愛げがないか、いいように扱われるだろうなと思った。
「またすぐ逢えるかな」
みくは笑って頷いた。
「あたしは当分店辞めんからさ。またこんなふうに飲もうや」
まだ外は薄暗かった。やがて日が昇る。
みくとの約束だけを握り締めてエリは前を見る。
「またね」
JRの改札でみくと別れた。みくが笑顔で手を振る。エリもつられて手を振った。
またね。
またね。
エリはホームに向かって歩き出した。
それから長い間2人が逢う事はなかった。