冥王星大戦⑩ | YSNOVEL

YSNOVEL

YSNOVELのページ

 要塞サブブリッジでは、バリ・ストームが要塞運用の定期業務を行っていた。バリ・ストームの補佐にキー・ガッツという男がいた。彼は、出世欲が強くこれまでに幾度となく柴田幸に自信を売り込んでいた。他分野にわたる数々のアイデアを柴田幸に持ち込んでいた。柴田幸はこのキー・ガッツという男をかっていた。最近では柴田幸とキー・ガッツが意気投合し、ツー・中村を含め3人で政策立案を行うようになっていた。ただ、その政策はいずれもくだらないことで、それを適用させられる要塞内の人々にとっては施行される度、悩みの種が増えるだけでしかなかった。軍務においては、キー・ガッツが監査長官に就任し執拗な監視を行い、上層部の気に入らない人物の排除を行っていた。そのキー・ガッツが今目をつけているのは、バリ・ストームであった。現状もっとも要塞運用に長けているのはバリ・ストームであったが、彼がミスをおかしたり自分が彼の任をすべてまっとうできるようになったと判断できればいつもの手段で彼を排除しようと企んでいた。
 バリ・ストームとキー・ガッツを除いて、サブブリッジにはあと4人がいた。ワッツ・ツイン中将、ニダ・ダック少将、硯一理少将、流不落少将の4人だった。
 『ニダ。例のプログラムはすでに終わってるかい。』
 ワッツ・ツインが、ニダ・ダックの席にきて言った。
 『ああ、問題ない。硯一理の部分も終わってると思うよ。』
 ニダ・ダックが答え、続き、硯一理も答えた。
 『ああ、こっちも終わってる。時間があまってからさらにあっちのやつもやっといたよ。』
『ちなみにこちらも終えたよ。なかなかいいのができたと思う。』
 硯一理の返事の後で、流不落が言った。
 この4人は、要塞内の技術部門を担当する。ワッツ・ツインが技術部門長で、バリ・ストームからの運用要望に応え、残り3人と分業で、実際に要塞を動かしていく役割を担っていた。彼らは、未だに地球連合軍への忠誠を失ってはいなかった。ただ、それが表に出さないように結託していた。今回の戦いにおいて彼ら4人はある準備を行っていた。それは現時点では4人以外誰も知る由もないことだった。その4人に対し、キー・ガッツはほぼ無視を通していた。所詮は技術要員、彼らと関わり合う時間は自分にとって無駄であると考えていたからであろう。また、バリ・ストームと4人はというと、そこそこお互いをよく思っていたので上手く連携がとれていた。
 『アース・アーチー艦隊司令。そちらの準備はどうかな。』
要塞内の準備を終えたバリ・ストームが、冥王星要塞常駐艦隊の司令、アース・アーチーへ状況確認を行った。
 『こちらは問題ありません。先ほど、通信でこちらにも作戦が指示されました。誘導および包囲がメインですので、機動性の高い艦を先行させ、残りは要塞守備に回すつもりです。』
 アース・アーチーは、地球連合在籍時には少将で、第8艦隊の司令長官であった。本来彼の任は、アンドロメダもしくは海賊団から冥王星要塞を保守することであった。ただ、柴田幸の反逆行為で事態は一変し地球連合に反旗を翻すことになってしまった。地球連合には絶対の忠誠を行っていた彼は、この事態が発生した時、第8艦隊旗艦にいてそれを知った。そして、それを知るとすぐにある場所へ通信を行い、彼の尊敬する人物へ相談をした。アース・アーチーは、その人物からの指示をうけ、冥王星国家で働くことにした。第8艦隊は冥王星国家創設の際に、その艦隊カラーをグリーンにするように柴田幸に支持され塗装作業に追われた。ところが、今出港するすべての戦艦は塗装がすべておとされ、もとの連合軍の艦隊カラーになっていた。
 『そろそろかな。はやくことを済ませてゆっくりしたいものだ。』
 誰に言うでもなく、アース・アーチーは出撃命令を待っていた。
 要塞メインブリッジに、柴田幸とツー・中村が戻ってきていた。柴田幸は、ツー・中村に戦いの準備がすべて整ったかどうか確認させ、その後準備万端を知った。
 『では、行こうか。すべての誤りを正す第一歩を踏み出すとしよう。・・・ツー大将、ゴー!だ。』
柴田幸の言葉を聞いたツー・中村は、バリ・ストームへ作戦開始を指示した。
メインブリッジのメインスクリーンには、海賊団が包囲準備宙域へ解散し、その解散した宙域へ常駐艦隊が進んでいく絵が映っていた。
連合軍はシュー・ツカサの第9艦隊が魚の背骨のように先頭から後方に伸び、その魚の身になるように、左翼にヒーロ・ハルの第10艦隊、右翼にユーリ・ザックの第4艦隊が布陣した。第9艦隊旗艦は、連合軍のちょうど中心に陣取っていた。
『ヒーロ。段取りはこちらでやるので、後はそちらでうまいことやってくれ。』
 シュー・ツカサは、伸びきった第9艦隊の運用に苦労しながらも、余裕を見せて旗艦間通信で艦隊長達をしきっていた。
 『問題なし。こっちの準備はばっちり。いつでもいい。』
 と言ったヒーロ・ハルは、第10艦隊各艦に作戦行動の徹底を念押した。
 第4艦隊の運航は、ユーリ・ザックではなく、ジョン・キーエ少将が行う。彼は、艦隊運航に関しては、シュー・ツカサに肩を並べる。ただ、戦術的な運航は得意としない。戦術・戦略に特化したユーリ・ザックと、艦隊運航に特化したジョン・キーエが組むことによって連合軍最高の艦隊をなしている。
 『ジョン少将。そちらはどうか。』
 シュー・ツカサは、第4艦隊の行動についてはユーリ・ザックに問うことはない。決まってジョン・キーエに聞くことにしていた。なぜなら、ユーリ・ザックに聞いても「それならジョンに聞いてくれ。」と言われるのが関の山だから。
 『シュー中将。こちら第4艦隊も問題ありません。』
 連合軍すべての艦隊の確認を終えたシュー・ツカサから「やるぞ。」とユーリ・ザックに言った。ユーリ・ザックは一言「いつでもいい。」とだけ言った。シュー・ツカサはそれを聞いて、連合艦隊を会戦宙域への移動を開始した。