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警察小説が読めない時期があった。本当は読みたくてしょうがないのに、警察官というものが好きになれないのだった。とてつもなく手ごわい存在のように思えた。

最近はそうでもないのだが、警察官も同じ人間なのだと思えば良いのだが、読み始めるまでが億劫なのだった。

今回は「退職刑事」という名に見せられて、手にとってみた。退職した刑事の話ならば、少し角度が違うから私でも読めるのじゃないかと……。短編集であり、標題の退職刑事、レディ・Pの憂鬱、帰郷、神隠しの夜に、父子鷹の5つから成っている。

定年まで勤め上げたものの、四課でヤクザとつるんでいたという老刑事が、エリートコースを歩かせた息子が道を踏み外したのを助けることもできない「退職刑事」。

名門私立中学の女教師の息子で、エリート音楽家がヤクにはまったのを逮捕しに向かうのに、女教師を利用しようという「レディ・Pの憂鬱」。

事件の絡みでヤクザに追われ、早期退職した刑事が、故郷に舞い戻り、昔ほれた女を助け出そうとして、友人たちとの因縁にまとわりつかれ、その挙句にヤクザに袋にされて殺されてしまう「帰郷」。

30年以上前に人里はなれた山村で、少女が行方不明になった事件を思い出して、末期がんを患った退職した元刑事が、ぶらりと訪ねた事件現場で真相を知る「神隠しの夜に」。

親子3代に渡って県警勤めという一家の3代目がどうしようもない暴れん坊で手が付けられなかったので、一人の警部が自分の女を使ってその若い警察官をシャブづけにして退職に追い込んだのだが、2代目の元老刑事がそれを暴き、逆切れする「父子鷹」。

いずれも警察官の屈折した心情を、作者の筆は実に細かく丁寧に描いている。読みやすい短めの文章で畳み掛けるようで、ぐいぐいと引きずり込まれる。この作者は失礼だが、めっけもんかもしれない。