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テレビの裏側を対象にした作品。ニュース番組でよく「今日の特集」というコーナーが設けられているが、その制作を行っている孫請け会社に働く社員が主人公である。

上司や親会社からの罵倒、暴力は日常茶飯事で、不況下でテレビ番組制作の質が落ちており、テレビを見る国民の質も同時に落ちているという。ドラマよりも手っ取り早いバラエティーが主流の番組作りが進み、知的な人々はもうテレビを見る機会は減る傾向にあるそうだ。

いきおい孫請け会社への圧力はこれまでより強まり、条件の悪い製作が多くなる。主人公のAD(アシスタント・ディレクター)、明坂はそうした製作現場で、もがき苦しみ、とりわけ上司の横暴なディレクター穂積から、苛め抜かれる。

明坂の悲惨な毎日こそ、「今日の特集」で報道されるべきなのだろう。

格差社会について、テレビや新聞紙上で報道されることが多くなってきた。喜んで貧乏や困窮に身を置く人は少ない。効率を追い求めるあまり、派遣などの「負の問題」が起きている。同時に、富む者たちにとっても、目まぐるしく変わる社会情勢下ではいつ自分が落ちるかわかったものではない。

この作品を読み、そんなことをぼんやりと考えていた時、ふとテレビをつけると、あるスーパーマーケットに通う高齢者たちの姿を見た。そのスーパーのチラシには商品も値段がなく、店員のモットーや近況が書かれているだけだ。値段が少し高くても、品物を売るだけでなく、店員がお客さんに優しく接しており、雨が降ったら傘を貸し、レジ待ちの人には飴を配るといったスタイルなのである。

皮肉にも問われているのは世の中の「価値」ということだろう。これからの社会がどうなっていくのかわからないが、少しでも良い方向に向くように、自分の身の回りにある「価値」を見直すことにしようか。