日帰りでニューヨークに行ってきました。
朝6時47分発のアムトラックで、ニューキャロルトンからPenn Stationまで3時間。そこから地下鉄の#1で、116st-Columbia University駅まで20分。ワシントンとくらべ、だいぶ寒いように感じる。

コロンビア大学SIPA(School of International and Public Affairs)に、ジェラルド・カーティス教授を訪問しました。日本政治をよく知る知日派の学者として、日本のテレビにも出ているので、知っている人も多いでしょう。
カーティス教授、とても気さくで、かつ率直な方で、1時間以上も話がはずみました。

オバマが大統領になることは、数えきれないほどのポジティヴな影響をもたらすだろう。この辺りのことを考えるだけでも、ハーレムの若い黒人は、人生に新しい希望を持つようになるだろう。私は元音楽家なのでハーレムのジャズクラブによく行くけど、あそこに暮している連中が、音楽をやるか、バスケットボール選手になるか、それとも犯罪者になるか以外に自分たちの生きる道を見いだせるようになるだけでもすごいことだ。
中東を考えたって、「フセイン」というミドルネームを持つ大統領が訪問するインパクトを考えてみなさい。彼が大統領になるというそのことだけで、アメリカという国の見られ方が大きく変わるんだ。
私もオバマのアドバイザリーグループに名を連ねている。選挙中だから彼と直接会うことはないけど、大統領就任に備えてアジア政策を用意しているんだよ。

もしマケインが大統領になったら災厄(Disaster)だ。彼は世界を軍事の目でしか見られない。経済はまるで駄目。規制撤廃一辺倒で、政府に果たすべき役割があることをわかっていない。そして、どうしようもなく気が短い。彼が大統領になるのは危険だ。

-日本のオバマに対する見方はちょっと複雑なところがあります。共和党の方が親日的だ、だからマケインがなった方がいいと思っている人が多いようです。
日本の上の方の人たちはみんなそう思っているようだけど、それは間違いだと思うよ。共和党が日本に何をしてくれた?アメリカが日本を厳しい仕打ちをしたのは、みんな共和党政権の時だ。ニクソンショックはどうだ、日米自動車摩擦はレーガン時代に始まったんだし、拉致問題での冷遇はブッシュ政権だ。かたや、もっとも親日的だったアメリカ大使の顔ぶれを思い出してごらん、ライシャワー、マンスフィールド、フォーリー、みんな民主党じゃないか。共和党が親日的で民主党がそうじゃないなんてどうして思うのかな。

-オバマが日本のこと、アジアのことを知らないと懸念する人もいます。
オバマはPacificから世界を見る、初めてのアメリカ大統領になる。考えてみなさい、彼はハワイで育って、小学校をインドネシアで卒業しているんだよ。アジアを軽視することなんてありえないんだよ。マケインはAtlanticから世界を見ている。バイデンだってそうだ。彼はあれだけ長く外交畑をやっているが、欧州と中東のことしか考えたことがない。私はそれをちょっと心配しているほどだ。オバマはアジアの考えていることを肌でわかる初めての大統領になる。それは画期的な出来事だ。

-それは気づかなかった視点です。そのとおりですよね。日本の人はそのことに気づいていない。ぜひそれを日本の新聞に寄稿してください。
そうだね。考えてみる。


-民主党政権となると、クリントン時代の貿易摩擦の悪いイメージがあります。
たしかにクリントンの通商政策は最悪だった。でもオバマの経済政策をやっている人たちは、保護貿易主義者じゃない。そういうことは起こらないだろう。
少なくともオバマになれば、日本に無理な軍事的貢献を求めるようなことはなくなるだろう。彼は軍事の目だけで世界を見るようなことはない。これがマケインになったらどうだ。アーミテージは戻ってくる。マイケル・グリーンは戻ってくる。またBoots on the ground.みたいなことを求められることになるに違いない。
ただ、このところクリントン政権時のメンバーがこぞってオバマの外交アドバイザーに就任しているのは気になる。トニー・レイクとか。彼らは日米関係の悪化を主導した人たちだからね。


それにしても、ブッシュ政権が親日的だなんて、何で思うんだろう。不思議だ。ライスなんて日本にまったく関心を払っていないじゃないか。クリス・ヒル、彼は東アジア担当の国務次官補になりそこねて北朝鮮問題担当特使になったが、彼も日本に関心を持っていない。財務長官のポールソンだって日本を嫌っている(dislike)。



-ポールソンは日本が嫌い?
彼はゴールドマンサックス出身だからね。GSは前の金融危機の時に日本で儲けそこねた。だから日本にいい印象がないんだ。同じくGS出身だったルービンと同じだよ。

-オバマがアジアを軽視しないといっても、その中で重視するのは日本より中国になるのではないのではないでしょうか。
それはある程度正しい。彼が多くの案件を抱える中で、あえて時間を割いて日本のことを顧みない可能性はある。中国は非常に重要な国。話し合わなければいけないことがたくさんある。それに比べて日本とは深い関係があるし、あえて話し合うべきことは何もない。

-それは日本の側に原因があると感じます。世界のありかたについて定見を持っていないから。
オバマは日本と話すことがない。Because Japan has nothing on the table. 日本のリーダーを見てみなさい。ノービジョンじゃないか。ビジョンのあるリーダーがいるかい?
私のところにやって来る日本の政治家や要人は、みんな「オバマ政権になったら日本は何を求められるのか」という話ばかりだ。「日本はオバマと協力してこんなことができる」、という積極的な提案をする人は誰一人としていないよ。

これほどの知日派で、日本に限りないシンパシーを持っている方が、このような辛辣な批評をする。驚きましたが、それが日本の政治の現状なんだな、と感じます。


麻生総理にかんする評。
「選挙については、経済危機が麻生氏を助けるのではないか。麻生氏を知っているが、彼が経済が分かるなんて嘘っぱちだ。でも彼は経済が分かるような顔をして国民を信じさせている。それに国民は引っかかってしまうのではないか。アメリカなら経済危機は現政権が悪いとなるが、日本の人はこういう非常時に政権を変えていいのかと不安に思うんじゃないか。
麻生氏は選挙を先延ばしにするだろうと最初から思っていた。自信満々な人だから、時間を与えれば、国民が自分のことをもっと好きになると思ったに違いない。事実は違って、麻生氏の人気は上がらない、むしろ下がっている。さらに選挙を先送りしたいだろうが、それでは済まなくなっている。みんな選挙準備でカネを使ってしまっているし、公明党も選挙をやれやれと言ってる。彼は悩んでいるだろうね。いま選挙をするとしたら、キヨミズノブタイから飛び降りる心境じゃないかな。」
カーティス教授は今総選挙をやれば210議席対210議席ぐらいになるのではないかと見ているようでした。


カーティス教授

カーティス教授の物の見方は、極めて冷静かつ的確でした。とくに“Obama will be the first Pacific Leader in US.”というのは、恥ずかしながら私にはまったくなかった視点なので、はっとするものがありました。

カーティス教授と清里とをつなぐご縁は、彼が奥様のミドリさんと出会い、結婚することを決めた時に、ミドリさんの父親に許しを得るために清里を訪れたのがきっかけだったそうです。KEEP協会の理事をやっていたというお父上は、カーティス教授をポール・ラッシュ博士に会わせました。ミドリさんの夫となるためのテストみたいなものだった、とカーティス教授。テストはめでたく合格となり、カーティス教授は清里と深い縁で結ばれたというわけです。
来年3月に予定される新しい清泉寮のお披露目にはお見えになるそうです。