Yさんは以前から対応の難しい人でした。
内面はデリケートでプライドもあり、職員の言葉ひとつを敏感に感じとるのでした。
言葉で表現できないので、「んー!」と訴えてくるのですが、慣れた職員でないと
なかなか理解してあげられなくて、いい線までいっているのに「働くこと」には
つながりませんでした。農業のグループにいてもレモンのグループにいても
いつも皆と離れて、手持無沙汰な時間をくるくる回ってすごすか、座り込むか、
一人はずれてスローペースの過ごし方をしていました。それでも数年前に比べると
ずいぶん意思疎通ができるようになったので、よしと思っていました。
ところが、Kさん(養護学校卒、雇用)が彼を抜擢してくれて洗濯物を取りにいくことに
なりました。すると上手にリヤカーを引いて運んでいるではありませんか?
びっくりしました。Kさんが言うには「Yさんは集団だとはずれてしまうけれど、1対1で
個別に関わると俄然動き出すんです。」と。
なんてすばらしい発想というか観察力というか、職員にも勝る感覚の持ち主。
特にYさんは車が大好きなので、リヤカーも車と言えば車だから。
彼の仕事にぴったりだったというわけです。重い洗剤や洗濯物も運びます。
背筋の伸びた彼の働く後ろ姿を見て感動しました。
先日は実習生が自閉症のHさんのものの見方を新たに発見してくれました。
その時もすごく驚きました。皆、えらいなあと感心する日々です。
こうやって利用者の一人一人が認められて幸せになっていきます。
いつかYさんが高齢者の車椅子をゆっくり押して散歩に行ってくれたらいいなあ。
車椅子も車といえば車だから。Kさんに相談してみようっと。
(kame )