5月17日、チター演奏者の内藤敏子先生をお招きして職員研修会が開かれた。
内藤先生はもう20年にわたって、チターの指導のために香川に来られているそうで
「第2の故郷のような気分です。」とおっしゃっておられた。
そして東山魁夷先生ご夫妻の芸術への一途さ、細やかな夫婦愛など静かな声で
語って下さるのだった。合間にチターを奏で、優しい曲を聞かせて下さる。すると、
裏山の鳥たちがさえずり始める。会場には豊島に咲いた可憐な花々が活けてあり、
内藤先生の薄紅色のスーツによく映える。
「雲よどこへ」の曲を弾いて下さり、静かに弦の音が響き終わった時、鶯が「ホー
ホケキョ」と鳴いた。ああ、鶯もずっとこの調べを聞いていたのだと思った。
実はこの日はみくに園のパンやの香川県庁方面の配達日だった。パン担当職員
2名は夜中の1時からパンを焼いていた。午後1時30分からの研修を気にしていた。
「きっと寝てしまうと思うのですが、研修に出てもいいでしょうか」と。
研修が始まる前に、内藤先生にお断りをしておいた。「パン担当職員が夜中から
パンを焼いていたので、もしかしたら気持ちよくて・・・・・」と口ごもった。「寝てしまう
かも?」とはとても失礼で言えなかったのだった。
すると、内藤先生は「光栄です!」とおっしゃったのだった。なんて素敵な言葉だ
ろうと感心して、胸のなかで温めておき、終了後、パン担当職員にその言葉を伝え
た。するとその職員も「あの話を聞かせていただけたことが光栄です!」と答えた
のだった。私はまたまた感心して、「光栄です!」という言葉の魅力に取りつかれて
しまったのだった。相手を重んじ、自らを謙虚に表す素直さ。実はこの研修は「品格
研修」だったのだが、この言葉のなかに学ぶべきものを見た。
今月の休みの日には東山魁夷せとうち美術館へ足を運ぶ人が多いことだろう。
内藤先生、豊島まで来ていただき、心に染みいるお話を聞かせていただいて、
「光栄です!」
(kame )